他人のホームページにリンクを張る場合の法令(準則)
電子商取引及び情報財取引等に関する準則(平成24年11月経済産業省)より抜粋

標題に関しては、サブタイトルの準則のU「インターネット上の情報の掲示・利用等に関する論点」の中で、
U-2 他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点として記載されています。以下はその抜粋です。

1.考え方
インターネット上において、会員等に限定することなく、無償で公開した情報を第三者が利用することは、著作権等の権利の侵害にならない限り、
原則、自由
であるが、
リンク先の情報を
@)不正に自らの利益を図る目的により利用した場合、又は
A)リンク先に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のある場合に、
不法行為責任が問われる可能性がある。


「リンクを張る」ことの意味
他者のウェブページにリンクを張る者は、リンク先のウェブページの所在を示すURLを、 リンク元のウェブページを構成するhtmlファイルに書き込むだけであって、
リンク先のウェブページや画像等のコンテンツを、自ら送信したり、複製しているわけではない。
リンク先のURLが記述されたhtmlファイルが、リンク元のウェブページから送信されるように設定し、 ユーザーの端末へリンク先の所定のファイルが送信され、 ユーザーの端末上で当該ファイルが読み出されウェブページが再現されるようにしているだけなのである。
もっとも、リンク先のウェブページを表示するために、ユーザーが、 リンクボタンをクリックする等の行為を行うことが必要となる場合と、 ユーザーの特段の行為を要せずに、自動的にリンク先のコンテンツがリンク元のコンテンツとともに、 表示される場合とでは、その意味合いが異なってくる可能性もある。
そこで、本論点を検討する際には、リンクを通じた、リンク先のコンテンツの送信及び複製の意味合いを、整理、分析する必要がある。

「サーフェスリンク」
他のウェブサイトのトップページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。なお、本論点において、「通常の方式で設定されたリンク」とは、ユーザーがリンク元に表示されたURL をクリックする等の行為を行うことによってリンク先と接続し、リンク先と接続することによってリンク元との接続が切断される場合のリンクをいうものとする。
「ディープリンク」
他のウェブサイトのウェブページのトップページではなく、下の階層のウェブページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。
「イメージリンク」
他のウェブサイト中の特定の画像についてのみ設定されたリンクをいうものとする。
「インラインリンク」
ユーザーの操作を介することなく、リンク元のウェブページが立ち上がった時に、 自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて、 リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいうものとする。
「フレームリンク」
ウェブブラウザの表示部をいくつかのフレームに区切り、フレームごとに当該フレームと対応づけられたリンク先のウェブページを表示させる態様のリンクをいうものとする。


不正競争防止法に基づく責任
リンクを張ることに関連して、不正競争防止法に定める不正競争行為に該当する場合があるかを検討する。
サーフェスリンクやディープリンクのような通常の方式のリンクを張る場合
ユーザーの行為を介さないとリンク先の情報が表示されないから、他人の商品等表示の使用といえるかどうか、
また、それを自己の商品等表示として使用しているといえるかどうかを考えると、
こうした行為が
不正競争行為に該当する可能性は極めて低いと考えられる。

インラインリンクの方式やフレームリンクの方式でリンクを張る行為については、
リンク先の商品等表示を、リンク元の営業とリンク先の営業とを誤認混同させるように使用した場合や、
著名な商品等表示を自己の商品等表示として使用した場合には、不正競争行為に該当する可能性がある。
また、リンクを張る際に、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を表示した場合には、
不正競争行為に該当する可能性がある。


商標法に基づく責任(省略)

著作権法に基づく責任
著作物性が認められる他人のウェブページにリンクを張る場合について、著作権法上問題が生じるか否かについて検討する。
ユーザーは、リンク元のウェブページ中に記述されたリンク先のウェブページのURLをクリックする等の操作を行うことにより、
リンク先のウェブページを閲覧することになるが、
この際、
リンク先のウェブページのデータは、リンク先のウェブサイトからユーザーのコンピュータへ送信されるのであり、
リンク元のウェブサイトに送信されるわけではなく蓄積もされない
。即ち、
リンクを張ること自体により、公衆送信、複製のいずれも行われるわけではないから、
複製権侵害、公衆送信権侵害のいずれも問題にならない
ものと考えられる。

サーフェスリンク、ディープリンク、イメージリンク、フレームリンク、インラインリンク
の個別の態様でのリンクを張る行為自体においては、
原則として著作権侵害の問題は生じないと考えるのが合理的である。
ただし、リンク態様が複雑化している今日、ウェブサイトの運営者にとっては、
ウェブサイトを閲覧するユーザーから見てどのように映るかという観点からすれば望ましくない態様でリンクを張られる場合があり、
例えば、ユーザーのコンピュータでの表示態様が、リンク先のウェブページ又はその他著作物であるにもかかわらず
リンク元のウェブページ又はその他著作物であるかのような態様であるような場合には、 著作者人格権侵害等の著作権法上の問題が生じる可能性があるとも考えられる。
さらに、そのようなリンク態様において著作者の名誉声望が害されるような場合には、 著作者人格権の侵害(著作権法第113条第6項)となる可能性もあるであろう。


小括
リンクの法的な意義については、必ずしも明確な理論が確立しているわけではなく、 無断リンクを巡って、様々な紛争が生じている現状を考慮すると、
「無断リンク厳禁」と明示されているウェブページにリンクを張る場合には、十分な注意が必要である。

インターネットと著作権
利用態様と黙示の許諾
複製・公衆送信・上映といった著作物の利用行為であっても、権利者の許諾があれば著作権侵害にはならない。
そして、著作物の内容や利用行為の態様等によっては、権利者の黙示の許諾が認められる場合もあると考えられる。
具体的にどのような場合に黙示の許諾があると認められるかは、個々の事案ごとに、著作物の種類や性質、
権利者の情報提供の目的や態様、複製・公衆送信・上映などの行為の目的や態様、権利者側がそのような利用を予測できたか、
などを総合的に考慮して判断されることになろう。

インターネットサイト上の情報利用に関しては、著作物の権利者が、だれでもが無償で自由にアクセスできるサイト上へ情報を掲示し、
当該サイトにアクセスする者すべてが自由に閲覧することを許容している場合、

サイト上の情報をディスプレー上ではなく紙面上で閲覧するためにプリントアウトするという複製行為について禁止する旨の特段の意思表示がない場合には、
多くの場合、権利者から黙示の許諾があると認められるものと考えられる。

以下は経済産業省のホームページで掲載されている準則へのリンクです。

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂(平成29年6月5日(月))公表
電子商取引及び情報財取引等に関する準則