国際物品売買契約に関する国際連合条約(抄
〔平成二十年七月七日号外条約第八号〕

〔法務・外務大臣署名〕

国際物品売買契約に関する国際連合条約をここに公布する。

国際物品売買契約に関する国際連合条約


この条約の締約国は、

国際連合総会第六回特別会期において採択された新たな国際経済秩序の確立に関する決議の広範な目的に留意し、

平等及び相互の利益を基礎とした国際取引の発展が諸国間の友好関係を促進する上での重要な要素であることを考慮し、

異なる社会的、経済的及び法的な制度を考慮した国際物品売買契約を規律する統一的準則を採択することが、国際取引における法的障害の除去に貢献し、及び国際取引の発展を促進することを認めて、

次のとおり協定した。


第一部 適用範囲及び総則

第一章 適用範囲

第一条

(1) この条約は、営業所が異なる国に所在する当事者間の物品売買契約について、次のいずれかの場合に適用する。

(a) これらの国がいずれも締約国である場合

(b) 国際私法の準則によれば締約国の法の適用が導かれる場合

(2) 当事者の営業所が異なる国に所在するという事実は、その事実が、契約から認められない場合又は契約の締結時以前における当事者間のあらゆる取引関係から若しくは契約の締結時以前に当事者によって明らかにされた情報から認められない場合には、考慮しない。

(3) 当事者の国籍及び当事者又は契約の民事的又は商事的な性質は、この条約の適用を決定するに当たって考慮しない。

第二条

この条約は、次の売買については、適用しない。

(a) 個人用、家族用又は家庭用に購入された物品の売買。ただし、売主が契約の締結時以前に当該物品がそのような使用のために購入されたことを知らず、かつ、知っているべきでもなかった場合は、この限りでない。

(b) 競り売買

(c) 強制執行その他法令に基づく売買

(d) 有価証券、商業証券又は通貨の売買

(e) 船、船舶、エアクッション船又は航空機の売買

(f) 電気の売買

第三条

(1) 物品を製造し、又は生産して供給する契約は、売買とする。ただし、物品を注文した当事者がそのような製造又は生産に必要な材料の実質的な部分を供給することを引き受ける場合は、この限りでない。

(2) この条約は、物品を供給する当事者の義務の主要な部分が労働その他の役務の提供から成る契約については、適用しない。

第四条

この条約は、売買契約の成立並びに売買契約から生ずる売主及び買主の権利及び義務についてのみ規律する。この条約は、この条約に別段の明文の規定がある場合を除くほか、特に次の事項については、規律しない。

(a) 契約若しくはその条項又は慣習の有効性

(b) 売却された物品の所有権について契約が有し得る効果

第五条

この条約は、物品によって生じたあらゆる人の死亡又は身体の傷害に関する売主の責任については、適用しない。

第六条

当事者は、この条約の適用を排除することができるものとし、第十二条の規定に従うことを条件として、この条約のいかなる規定も、その適用を制限し、又はその効力を変更することができる。


第二章 総則

第七条


(1) この条約の解釈に当たっては、その国際的な性質並びにその適用における統一及び国際取引における信義の遵守を促進する必要性を考慮する。

(2) この条約が規律する事項に関する問題であって、この条約において明示的に解決されていないものについては、この条約の基礎を成す一般原則に従い、又はこのような原則がない場合には国際私法の準則により適用される法に従って解決する。

第八条

(1) この条約の適用上、当事者の一方が行った言明その他の行為は、相手方が当該当事者の一方の意図を知り、又は知らないことはあり得なかった場合には、その意図に従って解釈する。

(2) (1)の規定を適用することができない場合には、当事者の一方が行った言明その他の行為は、相手方と同種の合理的な者が同様の状況の下で有したであろう理解に従って解釈する。

(3) 当事者の意図又は合理的な者が有したであろう理解を決定するに当たっては、関連するすべての状況(交渉、当事者間で確立した慣行、慣習及び当事者の事後の行為を含む。)に妥当な考慮を払う。

第九条


(1) 当事者は、合意した慣習及び当事者間で確立した慣行に拘束される。

(2) 当事者は、別段の合意がない限り、当事者双方が知り、又は知っているべきであった慣習であって、国際取引において、関係する特定の取引分野において同種の契約をする者に広く知られ、かつ、それらの者により通常遵守されているものが、黙示的に当事者間の契約又はその成立に適用されることとしたものとする。

第十条

この条約の適用上、

(a) 営業所とは、当事者が二以上の営業所を有する場合には、契約の締結時以前に当事者双方が知り、又は想定していた事情を考慮して、契約及びその履行に最も密接な関係を有する営業所をいう。

(b) 当事者が営業所を有しない場合には、その常居所を基準とする。

第十一条

売買契約は、書面によって締結し、又は証明することを要しないものとし、方式について他のいかなる要件にも服さない。売買契約は、あらゆる方法(証人を含む。)によって証明することができる。

第十二条

売買契約、合意によるその変更若しくは終了又は申込み、承諾その他の意思表示を書面による方法以外の方法で行うことを認める前条、第二十九条又は第二部のいかなる規定も、当事者のいずれかが第九十六条の規定に基づく宣言を行った締約国に営業所を有する場合には、適用しない。当事者は、この条の規定の適用を制限し、又はその効力を変更することができない。

第十三条


この条約の適用上、「書面」には、電報及びテレックスを含む。