国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約〔平成15年条約第6号〕


 この条約の締約国は、
 1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(以下「ワルソー条約という。」及び他の関係する文書が国際航空私法の調和のために果たした重要な貢献を認識し、
 ワルソ一条約及び関係する文書の近代化及び統合を図 る必要性を認識し、
国際航空運送における消費者の利益の保護を確保することの重要性及び喪失利益の回復の原則に基づく衡平な賠償の必要性を認識し、
 1944年12月7日にシ力ゴで作成された国際民間航空条約の原則及び目的に従う国際航空運送事業の整然とした発達並びに旅客、手荷物及び貨物の円滑な移動が望ましいことを再確認し、
 国際航空運送を規律するある規則を、新たな条約により、一層調和させ及びその法典化を図るために各国が共同して行動することが、利益の衡平な均衡を達成する最も適切な手段であることを確信して、
 次のとおり協定した。

第1章 総則

第1条(適用範囲)
1 この条約は、航空機により有償で行う旅客、手荷物又は貨物のすべての国際運送について適用し、航空運送企業が航空機により無償で行う国際運送についても同様に適用する。
2 この条約の適用上、「国際運送」とは、当事者間の約定により、運送の中断又は積替えがあるかないかを問わず、出発地及び到達地が、二の締約国の領域内にある運送又は一の締約国の領域内にあり、かつ、予定寄航地が他の国(この条約の締約国であるかないかを問わない。)の領域内にある運送をいう。一の締約国の領域内の二地点間の運送であって他の国の領域内に予定寄航地がないものは、この条約の適用上、国際運送とは認めない。
3 二以上の運送人が相次いで行う運送は、当事者が単一の取扱いとした場合には、単一の契約の形式によるか一連の契約の形式によるかを問わず、この条約の適用上、不可分の運送とみなす。その運送は、一又は一連の契約が同一の国の領域内ですベて履行されるものであるという理由のみによってその国際的な性質を失うものではない。
4 この条約は、第5章に定める条件に従い、同章に規定する運送についても適用する。

第2条(国が行う運送及び郵便物の運送)
1 この条約は、前条に定める条件に合致する限り、国又は公法人が行う運送について適用する。
2 郵便物の運送については、運送人の責任は、運送人と郵政当局との間の関係について適用する規則に従って関係する郵政当局に対して負うものに限られる。
3 この条約は、2の規定を除くほか、郵便物の運送については適用しない。

第2章 旅客、手荷物及び貨物の運送に関する書類及び当事者の義務

第3条(旅客及び手荷物)
1 旅客の運送については、次の事項を記載した個人用又は団体用の運送証券が交付されるものとする。
(a) 出発地及び到達地
(b) 出発地及び到達地が一の締約国の領域内にあり、かつ、一又は二以上の予定寄航地が他の国の領域内にある場合には、当該予定寄航地のうち少なくとも 一の予定寄航地
2 1に定める事項に係る情報を保存する他のいかなる手段も、1の運送証券の交付に替えることができる。当該他の手段を用いる場合には、運送人は、そのように保存される情報を旅客に書面で交付する用意がある旨を申し出るものとする。
3 運送人は、各託送手荷物ごとに、手荷物識別票を旅客に交付する。
4 旅客は、この条約が適用可能である場合には同条約が旅客の死亡又は身体の傷害、手荷物の破壊、滅失又はき損及び旅客又は手荷物の運送の遅延について運送人の責任を規律する旨及びその責任を制限することがある旨を書面により通知されるものとする。
5 1から4までの規定が遵守されなかった場合においても、運送契約の存在又は効力に影響を及ぼすものではなく、当該運送契約は、責任の制限に関する規定を含むこの条約の適用を受ける。

第4条(貨物)
1 貨物の運送については、航空運送状が交付されるものとする。
2 運送についての記録を保存する他のいかなる手段も、航空運送状の交付に替えることができる。当該他の手段を用いる場合において、荷送人が要請するときは、運送人は、送り荷の識別及び当該他の手段によって保存される記録に含まれる情報の入手を可能にする貨物受取証を荷送人に交付する。

第5条(航空運送状又は貨物受取証の記載事項)
 航空運送状又は貨物受取証には、次の事項の記載を含める。
(a) 出発地及び到達地
(b) 出発地及び到達地が一の締約国の領域内にあり、かつ、一又は二以上の予定寄航地が他の国の領域内にある場合には、当該予定寄航地のうち少なくとも一の予定寄航地
(c) 送り荷の重量

第6条(貨物の性質に関する害類)
 荷送人は、税関、警察その他これらと同様の公的機関の手続上必要な場合には、貨物の性質を表示する書類の提出を求められることがある。この条の規定から何らかの義務又は責任が運送人に生ずることはない。

第7条(航空運送状についての説明)
1 航空運送状は、荷送人が原本3通を作成する。
2 第1の原本には、「運送人用」と記載して、荷送人が署名する。第2の原本には、「荷受人用」と記載して、荷送人及び運送人が署名する。第3の原本には、運送人が署名し、当該第3の原本は、運送人が貨物を引き受けた後に荷送人に手交する。
3 運送人及び荷送人の署名は、印刷又はスタンプをもって替えることができる。
4 荷送人の要請により運送人が航空運送状を作成した場合には、反証がない限り、荷送人のために作成したものと認める。

第8条(複数の荷に関する書類)
 二以上の荷がある場合において、
(a) 貨物の運送人は、荷送人に対し個別の航空運送状を作成することを要求する権利を有する。
(b) 第4条2に規定する他の手段を用いるときは、荷送人は、運送人に対し個別の貨物受取証を交付することを要求する権利を有する。

第9条(書類の要件を満たしていない場合)
 第4条から前条までの規定が遵守されなかった場合においても、運送契約の存在又は効力に影響を及ぼすものではなく、当該運送契約は、責任の制限に関する規定を含むこの条約の適用を受ける。

第10条(書類の明細についての責任)
1 荷送人は、航空運送状に自らにより又は自らのために記載された貨物に関する明細及び申告が正確であること並びに貨物受取証又は第4条2に規定する他の手段によって保存される記録への記載のため自らにより又は自らのために運送人に対して提示された貨物に関する明細及び申告が正確であることにつき、責任を負う。荷送人のためにこれらの明細及び申告の記載又は提示を行う者が運送人の代理人である場合にも、この1の規定を適用する。
2 荷送人は、自らにより又は自らのために提出された明細及び申告に不備があること又はこれらが不正確若しくは不完全であることによって生じた運送人の損害又は運送人が責任を負う他の者の損害につき、運送人に対して責任を負う。
3 運送人は、1及び2の規定に従うことを条件として、自らにより又は自らのために貨物受取証又は第4条2に規定する他の手段によって保存される記録に記載された明細及び申告に不備があること又はこれらが不正確若しくは不完全であることによって生じた荷送人の損害又は荷送人が責任を負う他の者の損害につき、荷送人に対して責任を負う。

第11条(書類の証明力)
1 航空運送状又は貨物受取証は、反証がない限り、これらに記載された契約の締結、貨物の引受け及び運送の条件に関して証明力を有する。
2 貨物の重量、寸法及び荷造り並びに荷の数に関する航空運送状又は貨物受取証に記載された申告は、反証がない限り、証明力を有する。貨物の数量、容積及び状態に関する申告は、運送人が荷送人の立会いの下にその申告を点検し及びその旨が航空運送状若しくは貨物受取証に記載された場合又はその申告が貨物の外見上明らかな点に関するものである場合を除くほか、運送人に対する不利な証拠とはならない。

第12条(貨物を処分する権利)
1 荷送人は、運送契約に基づくすべての債務の履行につき責任を負うことを条件として、出発飛行場若しくは到達飛行場で貨物を回収し、運送の途中における着陸の際に貨物を留め置き、当初指定した荷受人以外の者に対する到達地若 しくは運送の途中における貨物の引渡しを要求し又は出発飛行場へ貨物を返送させることにより、貨物を処分する権利を有する。当該荷送人は、運送人又は他の荷送人の利益を侵害するような方法でその権利を行使してはならず、また、当該権利の行使によって生じた費用を償還しなければならない。
2 運送人は、荷送人の求めに応ずることができない場合には、直ちにその旨を荷送人に通知しなければならない。
3 運送人は、荷送人用の航空運送状又は荷送人に交付した貨物受取証の提示を要求することなく貨物の処分に関する荷送人の求めに応じた場合には、これにより当該航空運送状又は貨物受取証を合法的に所持する者に与えることがある損害について責任を負う。このことは、荷送人に対する運送人の求償を妨げるものではない。
4 この条に基づき荷送人が有する権利は、荷受人の権利が次条の規定に従って生ずる時に消滅する。ただし、荷受人が貨物の受取を拒否する場合又は荷受人と連絡をとることができない場合には、荷送人は、その権利を回復する。

第13条(貨物の引渡し)
1 荷送人が前条に基づく権利を行使した場合を除くほか、荷受人は、貨物が到達地に到達したときは、運送人に対し、料金を精算し及び運送の条件に従うことを条件として、貨物の引渡しを要求する権利を有する。
2 別段の合意がない限り、運送人は、貨物の到達を速やかに荷受人に通知する。
3 運送人が貨物の滅失を認める場合又は貨物が到達すべきであった日の後7日が経過しても到達しなかった場合には、荷受人は、運送人に対し、運送契約から生ずる権利を行使することができる。

第14条(荷送人及び荷受人の権利の行使)
 荷送人及び荷受人は、運送契約により負うこととなる債務を履行することを条件として、自己の利益のためであるか自己以外の者の利益のためであるかを問わず、自己の名において、前二条の規定により荷送人及び荷受人に与えられるすべての権利をそれぞれ行使することができる。

第15条(荷送人と荷受人との関係又は第三者の相互の関係)
1 前三条の規定は、荷送人と荷受人との関係又は荷送人若しくは荷受人から権利を取得した第三者の相互の関係に影響を及ぼすものではない。
2 航空運送状又は貨物受取証における明示の規定によってのみ、前三条の規定と異なる内容を定めることができる。

第16条(税関、警察その他公的機関の手続)
1 荷送人は、税関、警察その他すベての公的機関がその手続上、貨物の荷受人への引渡しに先立ち必要とする情報及び書類を提出しなければならない。荷送人は、運送人に対し、そのような情報若しくは書類がないこと若しくは不足していること又はこれらに不備があることによって生じた損害について責任を負う。ただし、その損害が運送人又はその使用人若しくは代理人の過失による場合は、この限りでない。
2 運送人は、1の情報又は書類が正確であるか又は十分であるかを調査する義務を負わない。

第3章 運送人の責任及び損害賠償の範囲

第17条(旅客の死亡及び身体の傷害並びに手荷物の損害)
1 運送人は、旅客の死亡又は身体の傷害の場合における損害については、その死亡又は傷害の原因となった事故が航空機上で生じ又は乗降のための作業中に生じたものであることのみを条件として、責任を負う。
2 運送人は、託送手荷物の破壊、滅失又はき損の場合における損害については、その破壊、滅失又はき損の原因となった事故が航空機上で生じ又は託送手荷物が運送人の管理の下にある期間中に生じたものであることのみを条件として、責任を負う。ただし、その損害が託送手荷物の固有の欠陥又は性質から生じたものである場合には、運送人はその範囲内で責任を免れる。運送人は、手回品を含む機内持込みの手荷物については、損害が運送人又はその使用人若しくは代理人の過失によって生じた場合には、責任を負う。
3 運送人が託送手荷物の滅失を認める場合又は託送手荷物が到達すべきであった日の後21日が経過しても到達しなかった場合には、旅客は、運送人に対し、運送契約から生ずる権利を行使することができる。
4 別段の定めがない限り、この条約において「手荷物」とは、託送手荷物及び機内持込みの手荷物の双方をいう。

第18条(貨物の損害)
1 運送人は、貨物の破壊、滅失又はき損の場合における損害については、その損害の原因となった事故が航空運送中に生じたものであることのみを条件として、責任を負う。
2 運送人は、貨物の破壊、滅失又はき損が次の一又は二以上の原因から生じたものであることを証明する場合には、その範囲内で責任を免れる。
(a) 貨物の固有の欠陥又は性質
(b) 運送人又はその使用人若しくは代理人以外の者によって行われた貨物の荷造りの欠陥
(c) 戦争行為又は武力紛争
(d) 貨物の輸入、輸出又は通過に関してとられた公的機関の措置
3 1の規定の適用上、航空運送中とは、貨物が運送人の管理の下にある期間をいう。
4 航空運送中とする期間には、飛行場外で行う陸上運送、海上運送又は内水運送の期間を含まない。ただし、これらの運送が航空運送契約の履行に当たり積込み、引渡し又は積替えのために行われる場合には、損害は、反証がない限り、航空運送中における事故から生じたものと推定する。運送人が、荷送人の同意を得ることなく、当事者間の約定の上では航空運送によることを意図していた運送の全部又は一部を他の形態の輸送手段による運送に替えた場合には、当該他の形態の輸送手段による運送の期間も、航空運送中とみなす。

第19条(延着)
 運送人は、旅客、手荷物又は貨物の航空運送における延着から生じた損害について責任を負う。ただし、運送人は、運送人並びにその使用人及び代理人が損害を防止するために合理的に要求されるすべての措置をとったこと又はそのような措置をとることが不可能であったことを証明する場合には、延着から生じた損害について責任を負わない。

第20条(責任の免除)
 賠償の請求者又は賠償の請求者の権利を生じさせた者の過失又は不当な作為若しくは不作為が損害を生じさせ又は損害に寄与したことを運送人が証明する場合には、運送人は、当該過失又は不当な作為若しくは不作為が損害を生じさせ又は損害に寄与した範囲内で、請求者に対する責任の全部又は一部を免れる。旅客の死亡又は傷害を理由として当該旅客以外の者が賠償を請求する場合においても、運送人は、同様に、当該旅客の過失又は不当な作為若しくは不作為が損害を生じさせ又は損害に寄与したことを自ら証明するときは、その範囲内で責任の全部又は一部を免れる。この条の規定は、次条1の規定その他この条約中責任について定めるすべての規定について適用する。

第21条(旅客の死亡又は傷害の場合の賠償)
1 運送人は、第17条1に規定する損害に関し、各旅客につき11万3100引出権までの額の賠償については、その責任を排除し又は制限することができない。
2 運送人は、第17条1に規定する損害であって各旅客につき11万3100引出権の額を超えるものに関し、次の(a)又は(b)を自ら証明する場合には、当該11万3100引出権の額を超える部分の賠償については、責任を負わない。
(a) 当該損害が運送人又はその使用人若しくは代理人の過失又は不当な作為若しくは不作為によって生じたものではないこと。
(b) 当該損害が第三者の過失又は不当な作為若しくは不作為によってのみ生じたこと。

第22条(延着、手荷物及び貨物に関する責任の限度)
1 旅客の運送における第19条に規定する延着から生ずる損害の場合には、各旅客についての運送人の責任は、4694特別引出権の額を限度とする。
2 手荷物の運送については、破壊、滅失、き損又は延着の場合における運送人の責任は、各旅客につき1031特別引出権の額を限度とする。ただし、旅客が託送手荷物を運送人に引き渡すに当たって到達地における引渡しの時の価額として特定の価額を申告し、かつ、必要とされる追加の料金を支払った場合は、この 限りでない。この場合には、運送人は、申告された価額が到達地における引渡しの時における旅客にとっての実際の価額を超えることを証明しない限り、申告された価額を限度とする額を支払う責任を負う。
3 貨物の運送については、破壊、滅失、き損又は延着の場合における運送人の責任は、重量1キログラム当たり19特別引出権の額を限度とする。ただし、荷送人が荷を運送人に引き渡すに当たって到達地における引渡しの時の価額として特定の価額を申告し、かつ、 必要とされる追加の料金を支払った場合は、この限りでない。この場合には、運送人は、申告された価額が到達地における引渡しの時における荷送人にとっての実際の価額を超えることを証明しない限り、申告された価額を限度とする額を支払う責任を負う。
4 貨物の一部又はその貨物に含まれる物品の破壊、滅失、き損又は延着の場合には、運送人の責任の限度となる額を決定するに当たり考慮する重量は、関係する荷の総重量のみとする。もっとも、貨物の一部又はその貨物に含まれる物品の破壊、滅失、き損又は延着が、同一の航空運送状若しくは貨物受取証に記載されている他の荷又はこれらが発行されていないときに第4条2に規定する他の手段によって保存される記録であって同一のものに記載されている他の荷の価値に影響を及ぼす場合には、責任の限度とする額を決定するに当たり、これらの他の荷の総重量も考慮する。
5 1及び2の規定は、運送人又はその使用人若しくは代理人が損害をもたらす意図をもって又は無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを知りながら行った行為(不作為を含む。)により損害が生じたことが証明される場合には、適用しない。ただし、当該使用人又は代理人の行為(不作為を含む。)の場合には、当該使用人又は代理人がそれぞれの職務を遂行中であったことも証明されなければならない。
6 前条及びこの条に定める責任の限度は、裁判所が、自国の法令に従って、訴訟費用その他原告が訴訟に要した経費(その利子を含む。)の全部又は一部を更に裁定することを妨げるものではない。この規定は、裁定された損害賠償の額(訴訟費用その他訴訟に要した経費として裁定された額は含まない。)が、損害を生じさせた事故の発生の日から6箇月の期間内に又は訴えの提起が当該期間の経過後に行われる場合においてはその訴えの提起の前に運送人が原告に対して書面により申し出た額を超えない場合には、適用しない。

第23条(通貨の換算)
1 この条約において特別引出権で表示する額は、国際通貨基金が定める特別引出権の額をいう。これらの額の各締約国の通貨への換算は、訴訟手続の場合には、判決の日における当該通货の特別引出権に対する価値に従って行う。国際通货基金の加盟国である締約国の通貨の特別引出権に対する価値は、同基金の操作及び取引のために同基金が適用する評価方法であって判決の日に有効であるものによって計算する。国際通貨基金の加盟国でない締約国の通貨の特別引出権に対する価値は、その締約国の定める方法によって計算する。
2 国際通貨基金の加盟国でなく、かつ、自国の法令上1の規定を適用することのできない締約国は、この条約の批准若しくは加入の時に又はその後いつでも、第21条に規定する運送人の責任の限度を自国の領域内の訴訟手続においては各旅客につき150万貨幣単位の額とし、前条1に規定する責任の限度に関しては各旅客につき6万2500貨幣単位の額とし、前条2に規定する責任の限度に関しては各旅客につき1万5000貨幣単位の額とし及び前条3に規定する責任の限度に関しては重量1キログラム当たり250貨幣単位の額とすることを宣言することができる。この貨幣単位とは、純分1000分の900の金の65.5ミリグラムをいう。これらの額は、関係する各締約国の通貨に概数により換算することができる。これらの額の締約国の通貨への換算は、当該締約国の法令により行う。
3 1の第4文に規定する計算及び2に規定する換算は、1の第1文から第3文までの規定を適用したならば得られたであろう前二条に規定する金額と可能な限り同一の実質価値が各締約国の通貨で表示されるように行う。締約国は、1に規定する計算の方法又は2に規定する換算の結果を、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の時に及び当該計算の方法又は換算の結果が変更されたときに寄託者に通報する。

第24条(責任の限度の見直し)
1 次条の規定の適用を妨げることなく、かつ、2の規定に従うことを条件として、前三条に規定する責任の限度は、寄託者が5年ごとに前回の改正からのインフレーション率の積(それまでに改正が行われていない場合には、条約の効力発生の日からのインフレーション率の積)に相当するインフレーション指数に応じて見直しを行う。最初の見直しは、この条約の効力発生の日の後5年の期間の末日に行われ、又はこの条約が署名のために最初に開放された日から5年以内に効力を生じていない場合には、効力発生の日の後1年以内に行われる。インフレーション指数の決定に当たり使用するインフレ一ション率の算出の方法は、自国の通貨が前条1に規定する特別引出権を構成する国の消費者物価指数の年間の変動率の加重平均とする。
2 1に規定する見直しによってインフレーション指数の増減分が百分率で10パーセントを超えたと判断される場合には、寄託者は、締約国に対し、責任の限度の改正を通報する。当該改正は、締約国に対して通報が行われた後6箇月で効力を生ずる。締約国に対して通報が行われた後3箇月以内に締約国の過半数がその改正に同意しない旨を伝達する場合には、当該改正は、効力を生ずることはなく、寄託者は、この問題を締約国の会合に付託する。寄託者は、いかなる改正の効力発生についても、直ちにすベての締約国に通報する。
3 1の規定に基づく場合に限ることなく、2に定める手続は、締約国の三分の一が当該手続の適用を希望する旨表明し、かつ、1に規定するインフレーション指数であって前回の改正から又は改正が行われていない場合においてはこの条約の効力発生の日からその時点までの期間に係るものが百分率で30パーセントを超えていることを条件として、いつでも適用する。1に定める手続を用いて行うその後の見直しは、この3の規定に基づく見直しの日の後5年の期間の末日から起算して5年ごとに実施する。

第25条(責任の限度に関する約定)
 運送人は、運送契約については、この条約に規定する責任の限度より高い額の責任の限度を適用すること又はいかなる責任の限度も適用しないことを定めることができる。

第26条(契約上の規定の無効)
 契約上の規定であって、運送人の責任を免除し又はこの条約に規定する責任の限度より低い額の責任の限度を定めるものは、無効とする。ただし、当該契約は、このような規定の無効によって無効となるものではなく、引き続き、この条約の適用を受ける。

第27条(契約の自由)
 この条約のいかなる規定も、運送人が運送契約の締結を拒否し、この条約の下で援用し得るいかなる抗弁も放棄し又はこの条約に抵触しない条件を付することを妨げるものではない。

第28条(前払金)
 旅客の死亡又は傷害をもたらした航空機の事故の場合において、運送人は、自国の法令が要求するときは、賠償を請求する権利を有する自然人に対し、当該自然人の当面の経済的な必要を満たすために遅滞なく前金を支払う。当該前金の支払は、運送人の責任を認めることを意味するものではなく、また、前払金の額は、損害賠償としてその後に運送人が支払うべき額から、これを差し引くことができる。

第29条(請求の根拠)
 旅客、手荷物及び貨物の運送については、損害賠償についての訴えは、その訴えがこの条約に基づくものであるか、また、契約、不法行為その他の事由を理由とするものであるかを問わず、この条約に定める条件及び責任の限度に従うことによってのみ、かつ、訴えを提起する権利を有する者がいずれであるか及びこれらの者それぞれがいかなる権利を有するかという問題に影響を及ぼすことなく、提起することができる。このような訴えにおいては、懲罰的損害賠償その他の非補償的損害賠償を求めることはできない。

第30条(使用人及び代理人に対する請求)
1 この条約に定める損害につき運送人の使用人又は代理人に対して訴えが提起される場合において、当該使用人又は代理人は、それぞれの職務を遂行中であったことを証明するときは、この条約の下で当該運送人が援用することのできる条件及び責任の限度を援用することがで きる。
2 1の場合において、運送人並びにその使用人及び代理人から受けることのできる損害賠償の総額は、1の責任の限度を超えてはならない。
3 貨物の運送に関する場合を除くほか、1及び2の規定は、損害をもたらす意図をもって又は無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを知りながら行った使用人又は代理人の行為(不作為を含む。)により損害が生じたことが証明される場合には、適用しない。

第31条(苦情の適時の通知)
1 託送手荷物又は貨物の引渡しを受ける権利を有する者が苦情を申し立てることなく当該託送手荷物又は貨物を受け取ったときは、反証がない限り、当該託送手荷物又は貨物が、良好な状態で、かっ、運送証券又は第3条2及び第4条2に規定する他の手段によって保存される記録に従い、引き渡されたものと推定する。
2 き損があった場合には、引渡しを受ける権利を有する者は、き損の発見の後直ちに、遅くとも、託送手荷物についてはその受取の日から7日以内に、貨物についてはその受取の日から14日以内に、運送人に対して苦情を申し立てなければならない。延着から生じた損害の場合には、苦情は、遅くとも、引渡しを受ける権利を有する者により託送手荷物又は貨物の処分が可能となった日から21日以内に申し立てられなければならない。
3 すべての苦情は、魯面により、2に定める期間内に、手交され又は発送されなければならない。
4 2に定める期間内に苦情の申立てがない場合には、運送人による詐欺があった場合を除くほか、運送人に対するいかなる訴えも受理されない。

第32条(責任を負う者の死亡)
 責任を負う者が死亡した場合には、損害賠償についての訴えは、この条約の定める条件に従い、当該責任を負う者の財産を法的に承継した者に対して行うことができる。

第33条(管轄)
1 損害賠償についての訴えは、原告の選択により、いずれか一の締約国の領域において、運送人の住所地、運送人の主たる営業所若しくはその契約を締結した営業所の所在地の裁判所又は到達地の裁判所のいずれかに提起しなければならない。
2 旅客の死亡又は傷害から生じた損害についての損害賠償の訴えは、1に規定する裁判所のほか、事故の発生の時に旅客が主要かつ恒常的な居住地を有していた締約国の領域における裁判所に提起することができる。ただし、関係する運送人が、自己の航空機により又は商業上の合意に基づき他の運送人が所有する航空機により当該締約国の領域との間で旅客の航空運送を行っており、及び当該関係する運送人が、自己又は商業上の合意の下にある他の運送人が賃借し又は所有する施設を利用して、当該締約国の領域内で旅客の航空運送業務を遂行している場合に限る。
3 2の規定の適用上、
(a) 「商業上の合意」とは、代理店契約を除くほか、運送人の間の合意であって共同の旅客運送業務の遂行に関連するものをいう。
(b) 「主要かつ恒常的な居住地」とは、事故の発生の時における旅客の一定した、かつ、恒常的な一の居住地をいう。旅客の国籍は、この点に関する決定的な要因とはならない。
4 訴訟手続については、訴えが係属する裁判所に適用される法令によって規律される。

第34条(仲裁)
1 貨物運送契約の当事者は、この条の規定に従い、この条約に基づく運送人の責任に関するいかなる紛争も仲裁によって解決することを定めることができる。そのような合意は、書面によるものとする。
2 仲裁手続は、請求者の選択により、前条に規定する裁判所の管轄のうち一の管轄内で行う。
3 仲裁人又は仲裁裁判所は、この条約を適用する。
4 2及び3の規定は、仲裁について定める条項又は合意の一部であるとみなし、これらの条項又は合意中2又は3の規定に抵触するいかなる規定も無効とする。

第35条(訴えを提起する期限)
1 損害賠償を請求する権利は、到達地への到達の日、航空機が到達すべきであった日又は運送の中止の日から起算して2年の期間内に訴えが提起されない場合には、消滅する。
2 1に規定する期間の計算の方法は、訴えが係属する裁判所に適用される法令によって決定する。

第36条(相次運送)
1 二以上の運送人が相次いで行う運送であって第1条3に定める運送に該当するものの場合には、旅客、手荷物又は貨物を引き受ける各運送人は、この条約の規定の適用を受けるものとし、また、運送契約が当該各運送人の管理の下に行われる運送を取り扱う限度において、当該運送契約の当事者の 1人とみなされる。
2 1に規定する運送の場合には、旅客又はその旅客に関する損害賠償を請求する権利を有する者は、明示の合意により最初の運送人がすべての行程について責任を負うこととなっていた場合を除くほか、事故又は延着が発生した運送を行った運送人に対してのみ損害賠償の請求を行うことができる。
3 手荷物又は貨物については、旅客又は荷送人にあっては最初の運送人に対し、引渡しを受ける権利を有する旅客又は荷受人にあっては最後の運送人に対して、損害賠償を請求する権利を有する。さらに、当該旅客、荷送人及び荷受人は、破壊、滅失、き損又は延着が発生した運送を行った運送人に対して損害賠償の請求を行うことができる。これらの運送人は、旅客又は荷送人若しくは荷受人に対し連帯して責任を負う。

第37条(第三者に対する求償の権利)
 この条約のいかなる規定も、この条約の規定に従い損害について責任を負う者が他の者に対して求償の権利を有するか有しないかについて影響を及ぼすものではない。

第4章 複合運送

第38条(複合運送)
1 一部が航空機により行われ、かつ、一部が他の形態の運送手段により行われる複合運送の場合には、この条約は、第18条4の規定に従うことを条件として、航空運送の部分についてのみ適用する。ただし、当該航空運送が第1条に定めるところに該当するものである場合に限る。
2 この条約のいかなる規定も、複合運送の場合において、当事者が航空運送証券に他の形態の運送手段に関する条件を記載することを妨げるものではない。ただし、航空運送の部分に関してこの条約を遵守することを条件とする。

第5章 契約運送人以外の者によって行われる航空運送

第39条(契約運送人及び実行運送人)
 この章の規定は、いずれかの者が契約当事者としてこの条約が規律する運送契約を旅客若しくは荷送人又は当該旅客若しくは荷送人のために行動する者と締結する場合(この場合において当該いずれかの者を以下「契約運送人」とい う。)であって、かつ、契約運送人以外の者が契約運送人からの授権により運送の全部又は一部を行うとき(当該契約運送人以外の者を以下「実行運送人」という。ただし、当該部分の運送についてこの条約に規定する相次運送の運送人となる者は含まない。)について適用する。反証がない限り、そのような授権があるものと推定する。

第40条(契約運送人及び実行運送人の責任)
 この章に別段の定めがある場合を除くほか、前条に規定する運送契約によりこの条約が規律する運送の全部又は一部を実行運送人が行う場合には、契約運送人及び実行運送人の双方がこの条約の規定に従うものとする。この場合において、契約運送人は当該契約に規定する運送の全部について、実行運送人は自己が行う部分の運送についてのみ、この条約の規定に従うものとする。

第41条(相互の責任)
1 実行運送人が行う運送については、実行運送人並びにそれぞれの職務を遂行中であったその使用人及び代理人の行為(不作為を含む。)は、契約運送人の行為(不作為を含む。)とみなす。
2 実行運送人が行う運送については、契約運送人並びにそれぞれの職務を遂行中であったその使用人及び代理人の行為(不作為を含む。)は、実行運送人の行為(不作為を含む。)とみなす。もっとも、このような契約運送人並びにその使用人及び代理人の行為(不作為を含む。)は、当該実行運送人に対し、第21条から第24条までに定める額を超える責任を負わせるものではない。この条約が課する義務以外の義務を契約運送人が引き受ける旨の特別な合意、この条約に基づく権利若しくは抗弁の放棄又は第22条に規定する到達地における引渡しの時の価額としての特定の価額の申告は、いずれも、実行運送人の同意がない限り、当該実行運送人に影键を及ぼすものではない。

第42条(苦情及び要求のあて先)
 運送人に対する苦情又は要求であってこの条約に基づくものは、契約運送人又は実行運送人のいずれにあてたものであっても同一の効果を有する。もっとも、第12条に規定する求めは、契約運送人に対してあてられた場合においてのみ効果を有する。

第43条(使用人又は代理人)
 実行運送人が行う運送については、契約運送人又は実行運送人の使用人又は代理人は、それぞれの職務を遂行中であったことを証明する場合には、この条約の下で当該契約運送人又は実行運送人に対して適用される条件及び責任の限度を援用することができる。ただし、当該使用人又は代理人の行動が、この条約に従った責任の限度の援用を妨げるようなものであったことが証明される場合は、この限りでない。

第44条(損害賠償の総額)
 実行運送人が行う運送については、契約運送人及び実行運送人並びにそれぞれの職務を遂行中であったそれらの使用人及び代理人から受けることのできる損害賠償の総額は、この条約に基づき契約運送人又は実行運送人の支払うべき損害賠償の額として裁定されたであろう額のうち最も高いものを超えてはならない。もっとも、いずれの者も、自己に適用される限度を超える額について責任を負うことはない。

第45条(請求のあて先)
 実行運送人が行う運送については、損害賠償についての訴えは、原告の選択により、契約運送人若しくは実行運送人のいずれか一方に対して、又はこれらの運送人の双方に対して併せて若しくは個別に、提起することができる。訴えがいずれか一方の運送人に対してのみ提起される場合には、当該一方の運送人は、他方の運送人に対して訴訟手続への参加を要請する権利を有する。この場合において当該参加の手続及び効果は、訴えが係属する裁判所に適用される法令によって規律される。

第46条(追加的管轄)
 前条に規定する損害賠償についての訴えは、原告の選択により、いずれか一の締約国の領域において、第33条の規定に従い契約運送人に対する訴えを提起することが認められる裁判所又は実行運送人の住所地若しくはその主たる営業所の所在地の裁判所のいずれかに提起しなければならない。

第47条(契約上の規定の無効)
 契約上の規定であって、この章の規定に基づく契約運送人若しくは実行運送人の責任を免除し又はこの章の規定により適用する責任の限度より低い額の責任の限度を定めるものは、無効とする。ただし、当該契約は、このような規定の無効によって無効となるものではなく、引き続き、この章の規定の適用を受ける。

第48条(契約運送人と実行運送人との相互の関係)
 第45条に規定する場合を除くほか、この章のいかなる規定も、求償又は損害賠償の権利を含む契約運送人と実行運送人との間の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

第6章 その他の規定

第49条(必要的な適用)
 運送契約中の条項又は損害の発生前に行った特別な合意は、当事者が、これらにより適用する法令を決定し又は裁判管轄に関する規則を変更し、もってこの条約に定める規則に反することを意図する場合には、いずれも無効とする。

第50条(保険)
 締約国は、自国の運送人に対して、この条約に基づく責任についての適切な保険を維持するよう要求する。運送人は、締約国の領域内への運送を行う場合に.当該締約国から、この条約に基づく責任についての適切な保険を維持している旨の証拠を提出するよう要求されることがある。

第51条(異常な状況の下で行われる運送)
 運送に関する書類についての第3条から第5条まで、第7条及び第8条の規定は、運送人としての通常の業務の範囲外において異常な状況の下で行われる運送については、適用しない。

第52条(日数の定義)
 この条約における日数は、取引日によらず暦日による。

第7章 最終規定(略)