奥田メモに戻る

日本法図書発送プロジェクト20周年


2023年5月5日 奥田安弘

連休に入ったので、ハンブルクの研究所宛ての選書作業を開始したら、意外に早く済みました。昨年、有斐閣の担当者にお願いして、フォーマットを作り直して頂いたお蔭であり、そのご苦労に感謝申し上げます。

この選書作業自体は、2003年から始めたので、すでに20年を経過しました。当初は、紙媒体の法律図書のカタログに赤丸を付けて、有斐閣に送り、それをリスト化して頂くというような作業をしておりましたが、やがて私自身が各出版社のサイトからコピペするようになりました。

最初は、ドイツ側の希望に応えることに苦労しました。私法研究所ですから、もちろん私法分野が中心となりますが、ドイツ国内の他の研究所は、どんどん日本法担当者がいなくなり、日本法図書が入らなくなったので、私法以外の図書もリストアップしました。なかなか買ってもらえませんが、それでもこのプロジェクトのお蔭で、コストを削減できた成果もあり、少しは私法以外の法律書もご注文頂いております。

もうひとつの希望は、学部向けの入門書や概説書、全くの実務書、論文集や外国法研究などは除くことです。逆にいえば、注釈書や体系書などを希望するということです。これは、日本の出版社の傾向からいえば、かなり苦しい選択といえます。しかし、ドイツ側は、日本法図書を使って、日本法に関する論文や本を執筆するわけですから、当然の要求といえます。

当初の契約では、100冊の本をリストアップして、その中から50冊を注文することになっていましたが、現状は、60冊前後をリストアップするのが精一杯であり、コロナ禍の2020年には、50冊を切る有様でした。ただドイツ側の希望が理解できるようになったお蔭で、最近は、ほぼすべての本をご注文頂いております。

全部で20社以上の法律出版社のサイトを検索し、自分の専門外の本も、ドイツ側の希望に合うかどうかを判断するのは、苦しい作業ですが、勉強になります。「こんな本が出版されているのか」と驚くこともあります。退職後も、選書作業は続けるつもりですが、こういう作業を引き継ぎたいという方がいれば、歓迎します。


有斐閣からマックスプランク研究所への日本法図書発送プロジェクト
Projekt der Buchsendung von Yuhikaku zu MPI Hamburg
http://wwr2.ucom.ne.jp/myokuda/gaikokuho/project_yuhikaku_MPI.html

2023年8月25日更新

昨日、マックスプランク研究所から発注リストが届き、今年は選書リストに掲載した67冊すべてを注文したいとのことです。全部の発注をもらったのは、初めてのことです。

これは、従来の方針を貫いていた成果であるだけでなく、『日本法雑誌』への寄稿やそれをもとにした論文集の出版など、研究面での交流の成果でもあると自負しております。

今後も、このプロジェクトが続くことを願うとともに、日独双方の側で良き後継者が育つことを願っています。

2024年5月1日更新 新着

すでに旧聞に属しますが、昨年11月にマックスプランク研究所から郵便物が届きました。フライシャー所長、ホランド図書室長、バウム教授、エフィノビッチ主任研究員(バウム教授の後任)の4名の署名入りの手紙が同封されており、プロジェクトの20周年を祝う内容でした。他に図書室の年次報告書(2022年版)と立派な革張りの手帳(ドイツ人が良く使う大判のもので良質の紙を使ったもの)が入っていました。

手紙は、スキャンして、有斐閣の会長・社長にメールし、私の署名入りの手紙と会長・社長の署名入りの手紙を返信としましたが、詳細は割愛いたします。いずれにせよ、マックスプランク研究所から、これらのものが送られてきたことは、大変名誉なことであり、今後もより一層頑張らねばと意を強くしました。

ちょうど『国際財産法〔第2版〕の校正作業中であり、それと並行して、中央大学の研究叢書の原稿にも追われていたので、遅くなりましたが、皆様にご報告いたします。



---------------------------------------------------
Copyright (c) 2023 Prof. Dr. Yasuhiro Okuda All Rights Reserved