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   バセドウ教授追悼


2023年4月11日付けのハンブルクの研究所のサイトにバセドウ教授の訃報が掲載され、大変驚いています。 リンク
記事によれば、急逝されたとのことで詳細は分かりません。

バセドウ教授は、1949年生まれですから、私と4歳しか違いません。
1981年に私が香川大学講師となり、ハンブルクの研究所に1年間滞在した頃、彼は、まだ30代前半の若い研究員であり、当時、研究所の所長とハンブルク大学教授を兼務していたドロープニック教授の代講で行った授業を聴講したことがあります。私が翌年の帰国間際にドイツ海法会の主催でハンブルクのコングレスセンターにおいて開催された講演(国際海上物品運送に関するハンブルク条約の適用規範)には、ドロープニック教授と一緒に参加し、講演の際と講演後に貴重な意見をもらった記憶があります。その頃から、彼はボウタイ・スタイルでした。

バセドウ教授は、1987年に教授資格論文である運送契約に関する本を出版しています。 リンク
602頁の本は、今でこそ珍しくありませんが、まだ電動タイプライターの時代に、よくこれだけの大著を書いたものだと思います。その後、アウグスブルク大学教授・ベルリン大学教授を経て、1997年から2017年までハンブルクの研究所の所長を務めていました。 リンク

ちょうど2000年から2015年までの間は、私もよくハンブルクの研究所を訪れ、何度か二人だけで昼食を共にし、国際私法の議論を交わしたことを思い出します。ある時、私たちが昼食から戻った際に、研究所の非常ベルが誤作動をしたようで、多数の研究員や外国からの訪問研究者が外に出ていたことがありました。バセドウ教授は、多くの人から挨拶されて、人気の程がよく分かりました。まさにスーパースターであったわけです。

バセドウ教授の著作は、膨大な量に及び、著作一覧だけで56頁になります。
 リンク
私の著書や論文に引用したことはありませんが、バセドウ教授は、私の英語やドイツ語の論文を引用してくれることがあり、私が論文の抜き刷り(PDF)をメールしていたことが功を奏したようです。私が編集した中東欧私法の本を2014年にウィーンで出版した際は、ちょうど比較法アカデミーがウィーン大学で開催され、会場にいたバセドウ教授に手渡すことができました。その3年後に、ラーベル雑誌に本の書評が掲載されたのも、バセドウ教授の計らいであったと思い、御礼のメールを送りました。
Buchbesprechung von Nataša Hadžimanovic in: Rabels Zeitschrift für ausländisches und internationales Privatrecht Nr. 3/2017

昨年3月にドロープニック教授が亡くなった際には、バセドウ教授が長文の訃報を書いています。 リンク
もちろん彼にお悔やみのメールを送りました。
実は、先日私の退職挨拶のBCCメールを送った際も、最も早く4月2日に返信メールを送ってくれたのは、バセドウ教授でした。「名誉教授の会にようこそ」と書いてあったので、ネットで調べたところ、アメリカの大学では、Emeritus Club, Emeriti Clubなどの名称で、名誉教授の会があることを知りました。

それから数日後に亡くなったとは、全く信じられません。ドロープニック教授が亡くなってからも、1年しか経っていません。あまりに早いスーパースターの退場に驚き、再会の機会を得ることができなかったことに深い後悔の念を抱いております。

追記(2023年4月21日、5月2日))

ハンブルクの研究所のサイトに記帳所(Kondolenzbuch / Book of condolence)が設けられました。"in any language"と書かれていますが、今のところ、ドイツ語および英語のみのようです。https://www.mpipriv.de/condolence-basedow

私は、下記の追悼文を送りました。
Ich erlaube mir, mein Beileid zum plötzlichen Tod von Herrn Basedow zu äußern, den ich 1981 in Hamburg persönlich kennengelernt habe. Er hat mir am 2. April 2023 eine Rückmeldung zu meiner Pensionierung gesendet. Ich kann nicht glauben, dass er einige Tage danach ums Leben gekommen ist.
Yasuhiro Okuda, Professor emeritus an der Universität Chuo (Tokyo) / Hokkaido (Sapporo)

日本法雑誌(Zeitschrift für Japanisches Recht / Journal of Japanese Law)では、バウム教授とベルツ教授(フランクフルト大学)が共著で追悼文を掲載するそうです。

追記(2023年4月30日)

以下のサイトがバセドウ教授の訃報を伝えています。比較的URLの短いものだけです。
 https://aidc-iacl.org/remembering-jurgen-basedow/
 https://conflictoflaws.net/2023/jurgen-basedow-1949-2023/
 https://eapil.org/2023/04/17/jurgen-basedow-29-september-1949-6-april-2023/
 https://www.iprax.de/de/aktuelles/neueste-informationen.php
 http://news.unipv.it/?p=81952
 https://hamburgertrauer.de/traueranzeige/juergen-basedow
 https://lebenswege.faz.net/traueranzeige/juergen-basedow

追記(2023年5月18日)

Eva-Maria Kieninger (Würzburg) および Ralf Michaels (Hamburg) の連名で、研究所のサイトに長い追悼文が掲載されました(5月12日付け)
 https://www.mpipriv.de/1625933/juergen-basedow

この追悼文は、Heft 2/2023 der Rabels Zeitschrift für ausländisches und internationales Privatrecht (RabelsZ)に掲載されるとのことです。



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