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  養子縁組あっせん
  ―立法試案の解説と資料―


著者: 奥田安弘・高倉正樹・遠山清彦・鈴木博人・野田聖子
出版社:日本加除出版
判型: A5判
ページ数: 328頁
発刊年月: 2012年10月
定価: 3,465円 (税込)
ISBN/ISSN: 978-4-8178-4028-8


はしがき

 本書は、養子縁組あっせん法の試案およびその解説、さらに関連資料を収録したものである。試案といっても、まだ国会に提出されたわけではなく、我々の勉強会の内部でほぼ案が固まった、という程度にすぎない。その概要は、2010年6月1日に衆議院第一議員会館で開催したシンポジウムにおいて公表したが、その後、様々な事情から作業がストップしてしまった。
 同年12月、日本加除出版編集部の大野弘部長および野口健さんが私の研究室を訪れ、「養子縁組あっせんの本を出さないか」というお誘いを受けた。シンポジウムの内容を掲載した私のウェブサイトを見てくれたのである。年が明けても、勉強会を再開できそうになかったので、2011年夏、野口さんに連絡して、「こういう状態の試案でも出版できるのか」と相談したところ、編集会議にかけて、了承を取り付けて頂いた次第である。
 養子縁組あっせんというテーマ自体は、決して新しいものではない。しかし、これまで様々な分野の者が取り組んできたにもかかわらず、なかなか答えの出ない難問であった。この難問に新境地を切り開いたのが高倉正樹記者である。彼は、新聞記者としてのセンスに加え、持ち前の英語力を活かし、国際養子縁組の実態をこれまで以上に明らかにした。しかも、特集記事の連載という新聞記者としての成果を収めただけでは満足せず、これを国の立法に結び付けたいという熱い思いを持っていた。
 そこで、国会議員としては若手ながら、着実に成果を挙げ、行動力のある遠山清彦議員と接触し、国会で質問をしてもらい、かつその後の勉強会でも、堅実かつ建設的な意見を出してもらった。また野田聖子議員は、勉強会の提案者であり、豊富な経験を活かして、議員立法への道筋を付けて下さった。両議員とも、このように政治的には華々しくないテーマを真摯に取り上げて下さった点において、度量の大きさを感じさせる。
 さらに鈴木博人教授は、養子縁組の専門家として、民法や児童福祉法など関連法令に関する情報を多数提供したり、豊富な人脈を活かして、乳児院の視察や児童福祉関係者へのインタビューなどを世話して下さった。私は、国際私法を専門とし、国際養子縁組については、ハーグ国際私法条約を勉強したり、入管法や戸籍法を隣接法分野として研究したことはあったが、専門外のことでも手を出してしまう傾向があり、養子縁組あっせんにのめり込んでしまった。
 そういう5人が集まって、バランスよく勉強会が出来上がったと考えている。この試案は、今後さらに検討を重ね、超党派の国会議員によって国会に提出してもらうことを目指している。本書によって、広く関係者の皆さんに問題の所在を知って頂ければ幸いである。
 最後に、我々の勉強会を縁の下の力持ちとして支えて下さった衆議院法制局の職員や議員秘書の皆さん、視察やインタビューに快く応じて下さった児童福祉関係者の皆さん、シンポジウムに参加して下さった様々な分野の方々、そして本書の出版を引き受けて下さった日本加除出版に対し、厚く御礼申し上げたい。

2012年6月
執筆者を代表して
奥田安弘


目次

はしがき
初出一覧

第1章 養子縁組あっせん法の必要性
 T 現行法の不備と立法事実                 奥田安弘
    はじめに
   1 養子縁組あっせんの法的枠組み
   2 子どもの置かれている状況
   3 民間あっせん事業者の問題点
   4 児童相談所の問題点
    おわりに
 U 養子縁組あっせんの現場を取材して           高倉正樹
   1 震災孤児を引き取りたい
   2 「赤ちゃんの値段」で訴えたこと
   3 地下に潜る海外あっせん
   4 「赤ちゃんポスト」が投げかけるもの
   5 環の会のこと
    おわりに―キャロリンの母の死
 V 国会論戦を振り返って                    遠山清彦
   1 すべての子どもに家庭環境を
   2 国会論戦 2005年
   3 国会質疑 2008年
   4 法律を成立させるための四条件

第2章 立法論上の課題―試案の解説
               養子縁組あっせん法勉強会(文責 奥田安弘)
   はじめに
 T 養子縁組のあっせんにおける児童の保護などに関する法律(試案)
   1 総則
   2 養子縁組あっせんの機関
   3 養子縁組あっせんの業務
   4 特殊な形態の養子縁組あっせん
   5 その他の課題
 U 特別養子縁組における民法の特例などに関する法律(試案)
   おわりに
  付録1 奥田・鈴木試案
  付録2 ハーグ条約締約国の国際養子縁組件数

第3章 米国の養子縁組あっせん実務―児童の最善の利益とは何か?―
          セイラ・ゲルステンザンク/マドライン・フロインドリッヒ
                           奥田安弘/高倉正樹 訳
訳者はしがき
凡例
訳文
本ガイドの使用方法
T 背景
   1 マッチング小史
   2 社会学的な調査から得られるもの
   3 価値判断とマッチングのプロセス
U 準備と評価
   1 養親候補者の準備
   2 養親候補者のプロフィール
   3 児童の準備とプロフィール
V マッチングの決定
   1 マッチングのガイドラインとスケジュールの提案
   2 待機児童の養親候補者の審査
   3 マッチング決定会合:養親候補者の選別
   4 マッチングにおける法的検討
W 養親への児童の情報提供
X 養子縁組のサポートと維持支援
Y 結論
   追加情報
   付録A:養親候補者のプロフィールの見本
   付録B:児童と養親候補者をマッチングする方法の例
   ワークシート1 養親候補者のプロフィール基本事項記入用紙
   ワークシート2 マッチング決定ガイド
   ワークシート3 事前面談ガイド
   ワークシート4 情報提供チェックリスト
   ワークシート5 縁組後の養子の行動予測

第4章 児童相談所に対するアンケートの法的分析
 T 養子縁組                     鈴木博人/奥田安弘
    はじめに
   1 養子縁組アンケートの分析
   2 里親制度と養子縁組の関係
    おわりに
    別紙
 U 国籍・在留資格                        奥田安弘
    はじめに  
   1 父母の状況と国籍認定
   2 児童相談所職員の認識
   3 在留資格
   4 子どもの処遇
    おわりに
    別紙

あとがき
著者紹介