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  外国人の法律相談チェックマニュアル【第5版】


著者:奥田安弘
出版社:明石書店
価格:本体2,700円+税
ISBN:9784750338934
判型・ページ数:B5・216ページ
出版年月日:2013/09/30


第5版 はしがき

 本書は、法曹三者、特に弁護士を対象として執筆しました。弁護士にとって、最も大事なのは手続法です。外国人の法律問題では、裁判手続だけでなく、入管法や難民法上の異議申立手続、市町村における戸籍法上の届出、法務局における国籍関係の手続など、様々な行政手続が複雑に入り組んでいます。これらの法的手続において見落としがないようチェックすべき項目を網羅すると共に、実務的な観点からいずれの手続を選択するのが得策であるのかをアドバイスするのが本書の目的です。
 本書は、もともと従来のQ&Aの書物では足りないという問題意識から、チェックマニュアルという方式を採用してきました。旧版では、チェックリストを充実させ、解説は、なるべく1項目につき数行程度で済むよう執筆しました。しかし、そのようなやり方では、答えだけを追い求めて、応用がきかないことになりかねません。そこで、新版では、解説を前面に出し、そのまとめとして、備忘録程度のチェックリストを付けることにしました。法律実務に携わる人は、誰でもご存じのように、全く同じ事件というのは、何一つありません。本書の解説を参考にしながらも、個々の事件の事実関係を丹念に調べ、それぞれの事件に適切な解決を導き出すよう努力して頂きたいと願っております。
 ところで、旧版では、この分野の経験豊かな弁護士のお名前を共著者として挙げることがありましたが、執筆をお願いしたわけではないので、誤解を招くと思うようになりました。そこで、新版では、協力者の皆さんを便宜上(本書のための)実務アドバイザー・グループという名称で呼ばせて頂くことにしました。ご協力頂いたのは(50音順、敬称略)、小豆澤史絵、小田川綾音、関聡介、長谷川桃、丸山由紀といった弁護士の方々です。新版では、特に小田川弁護士に多くの時間を割いて頂き、私の研究室に何度もご足労頂きました。ただし、これらの弁護士の方々から伺った話は、私が法令などの根拠を確認したり探したり、お互いに経験や意見が分かれる箇所を調整したうえで、私自身が納得したものだけを取り入れ、かつ私自身の言葉で表現したのですから、すべての文責は、私ひとりにあります。
 言うまでもなく、本書は、スタイルを変えただけではありません。2012年7月の改正入管法の施行(それは入管法や住民基本台帳法だけでなく渉外戸籍や国籍実務など様々な分野に及んでいます)、その他の改正を多数取り入れました。ただし、旧版では説明不足であった箇所を大幅に補足する一方で、一部の項目を割愛しました。特に子どもの奪い合いについては、わが国は、ハーグ条約を批准するため、その実施法を制定しましたが、今後の運用を見極めるため、拙速を避けることにしました。何卒ご理解の程をお願い申し上げます。
 末筆ながら、旧版以来本書を支持してくださった読者の皆さん、それに応えて新版を出版してくださった明石書店、今回も編集作業を担当してくださった小林洋幸さん、そして上記の実務アドバイザー・グループの方々に対し、この場を借りて御礼申し上げます。

2013年7月

奥田安弘


目次

 第5版 はしがき
 凡例
 参考文献一覧

第T章 来訪時のチェック
 1.持参してもらうもの
 2.書類の読み方
  2-1.旅券 / 2-2.在留カード / 2-3.住民票の写し / 2-4.戸籍謄本
 3.本国法の決定
  3-1.分裂国家に属する人 / 3-2.不統一法国に属する人 / 3-3.重国籍者 /
  3-4.無国籍者
 4.費用援助
  4-1.民事法律扶助 / 4-2.委託援助

TERM
 在留カードと外国人登録 / 広義の旅券と狭義の旅券 / 法務省・市町村間の通知 /
 戸籍の電算化 / オールド・カマーとニュー・カマー / 特別永住者証明書

POINT
 通訳の同伴 / 訳文のチェック

第U章 役所での対応
 1.入管局
  1-1.前提情報 / 1-2.受付前後のトラブル / 1-3.不許可などへの対応策
 2.市町村の戸籍課
  2-1.本人確認 / 2-2.不受理申出 / 2-3.届書の記入方法 / 2-4.受付のトラブル / 
  2-5.審査のトラブル / 2-6.受理照会 / 2-7.外国人の氏名の訂正
 3.裁判所
  3-1.裁判の準備 / 3-2.外国における訴状の送達(申立書の送付) / 3-3.公示送達 / 
  3-4.外国における証拠の収集
 4.証拠収集と原本の還付
  4-1.個人情報開示請求 / 4-2.弁護士照会 / 4-3.職務上請求 / 4-4.記載事項証明書 / 
  4-5.届出・申請時の原本還付請求

TERM
 査証と在留資格認定証明書 / 特定活動 / 創設的届出と報告的届出 / DV被害者の支援措置の申出

POINT
 市町村職員は裁判官ではない / 外国で死亡した外国人配偶者 / 受付と受理の区別 / 
 受理照会と外国法の調査

第V章 婚姻
 1.婚姻の成立
  1-1.方式 / 1-2.創設的婚姻届 / 1-3.報告的婚姻届 / 1-4.日本人配偶者の氏の変更 / 
  1-5.外国人配偶者の氏の変更
 2.婚姻に伴う在留資格
  2-1.外国在住者の入国 / 2-2.日本在住者の在留資格変更 / 2-3.短期滞在による入国後の
  在留資格の変更 / 2-4.在留期間の更新
 3.婚姻の無効・取消し
  3-1.成立要件の瑕疵 / 3-2.無効・取消しの手続

TERM
 反致 / 活動に基づく在留資格と身分に基づく在留資格 / 短期滞在

POINT
 家事事件の国際的裁判管轄 / 国際的裁判管轄における住所

第W章 離婚
 1.離婚の成立
  1-1.離婚の準拠法 / 1-2.協議離婚届 / 1-3.日本の裁判離婚 / 1-4.外国離婚判決の
  報告的届出 / 
  1-5.離婚無効確認 / 1-6.離婚後の氏の変更
 2.離婚後の在留資格
  2-1.前提情報 / 2-2.定住者への変更

TERM
 定住者

POINT
 ヨット世界一周後の外国人夫婦の常居所 / フィリピン人の離婚 / フィリピンにおける外国離婚
 判決の効力

第X章 法律上の親子関係
 1.実親子関係の成立
  1-1.嫡出親子関係 / 1-2.非嫡出親子関係
 2.出生届
  2-1.添付書類 / 2-2.嫡出子出生届 / 2-3.非嫡出子出生届
 3.認知と親子関係不存在確認
  3-1.認知届 / 3-2.親子関係不存在確認と認知の裁判
 4.養子縁組
  4-1.日本人養親・外国人養子 / 4-2.外国人養親・日本人養子 / 4-3.日本人・外国人夫婦
  の共同縁組 / 
  4-4.外国在住の養子の入国 / 4-5.日本在住の養子の在留資格変更
 5.子の氏の変更

TERM
 セーフガード条項(保護要件) / 隠れた反致

POINT
 フィリピン残留孤児の就籍事件 / フィリピン法における嫡出推定の排除 / 養子輸出国ニッポン / 
 養子縁組と国際私法上の公序

第Y章 日本国籍の取得と喪失
 1.出生による日本国籍の取得
  1-1.前提情報 / 1-2.日本人父≠母の夫のケース
 2.外国出生子の国籍留保
  2-1.国籍留保届 / 2-2.国籍再取得届
 3.認知された子の国籍取得届
 4.重国籍者の国籍選択
 5.父母不明の子ども
  5-1.子どもを預かる際の確認事項 / 5-2.母による出生届が全くないケース / 
  5-3.母が日本の出生届のみをしたケース

TERM
 血統主義と出生地主義

POINT
 国籍法の合憲性

第Z章 上陸・在留のトラブル
 1.上陸のトラブル
  1-1.予防策 / 1-2.事後的対応策
 2.在留資格の取消し
  2-1.取消しの原因 / 2-2.意見聴取手続
 3.不法滞在
  3-1.退去強制の原因 / 3-2.日本に留まりたい理由 / 3-3.出国命令 / 3-4.違反調査 / 
  3-5.仮放免 / 3-6.違反審査 / 3-7.口頭審理 / 3-8.法務大臣の裁決
 4.難民申請
  4-1.在留資格 / 4-2.条約難民の要件 / 4-3.申請手続 / 4-4.難民調査官のインタビュー / 
  4-5.難民認定処分 / 4-6.難民不認定処分

TERM
 難民の第三国定住パイロットケース / 難民審査参与員

第[章 永住・帰化
 1.永住許可
  1-1.前提条件 / 1-2.添付資料
 2.帰化許可
  2-1.帰化の許可条件 / 2-2.添付書類 / 2-3.申請手続

POINT
 帰化は国籍確認訴訟の代わりになるのか?


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