2012年第60回全日本吹奏楽コンクール 10月27日28日宇都宮市民会館/10月30日31日名古屋国際会議場
中学校・前半の部
1: 東関東支部 千葉県代表 柏市立酒井根中学校 (指揮:犬塚禎浩)3年連続9回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」(福島弘和)課題曲の冒頭から、よく整えられたアンサンブルと、重厚なサウンドが印象的でした。バッキングのハーモニーが美しかった中間部は、音楽的にはややあっさり目でしたが、全体を通して、メリハリの付いた、場面転換が素晴らしいじゅげむに仕上がっていました。自由曲では、冒頭のオーボエの骨太な音色にビックリ。全体のサウンドのバランスも素晴らしく、緻密なアンサンブルと、内声部までしっかりとアナリーゼされた音楽力は、朝一番という基準点のハンディキャップをものともしない存在感を見せつけていました。終演後は感極まったメンバーもいましたが、それが唯一、中学生らしい顔が見られた瞬間でした。
5: 東京支部 東京都代表 小平市立小平第三中学校 (指揮:中村睦郎)2年連続9回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
青い水平線(F.チェザリーニ)輪郭がクッキリスッキリとしたサウンドでスタートした課題曲は、アンサンブルが緻密で、粒立ちのよいサウンドが心地よい好演でした。中間部はここもややあっさり系でしたが、これが関東のバンドの特徴なのでしょうか。後半はやや流れがぎこちなく、複数の音楽アイテムの絡み合いの妙が見られなかったのが残念でした。自由曲は、木管のサウンドの重厚さが気持ちよく、アンサンブルやハーモニーの安定度も高い演奏でしたが、終盤は、やや盛り上がりに欠けた印象だったでしょうか。しかし、総じて中学生としてはレベルの高い音楽を聞かせていました。
6: 東海支部 愛知県代表 名古屋市立汐路中学校 (指揮:玉谷敏弘)2年連続2回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生)重厚なイントロでスタートしたマーチは、各声部の発音がクリアで、流れがスムースなマーチに仕上がっていました。やや楽器間のバランスが微妙な部分があったり、旋律が埋もれ気味になってしまう部分も見られましたが、終盤は音楽的な盛り上がりが頼もしい好演でした。自由曲は、エッジの効いたサウンドによく楽曲がマッチしていて、フルートやオーボエの音色も素晴らしく、アンサンブルも抜群に安定した名演でした。内声部が更に浮き出て来ると、音楽が更に立体的になった事でしょう。
12: 西関東支部 埼玉県代表 吉見町立吉見中学校 (指揮:中畑裕太初出場金賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生)
重厚なイントロでスタートした課題曲でしたが、やはりこの部分のオーケストレーションを安定させるのは難しいところです。主題がスタートすると、緻密なアンサンブルとメリハリのついた音楽作りが心地よい好演となりました。フルート~ピッコロ陣のマーチにおける味付けの妙も素晴らしかったと思います。自由曲は、ダイナミックなサウンドの中で、ソロ楽器やアンサンブルが非常に安定していて、旋律の際立った名演になりました。パーカッションの扱い方も効果的で、サウンドも音楽もバランスのよい世界観を演じる事に成功していました。
13: 関西支部 兵庫県代表 豊中市立第十一中学校 (指揮:橋本裕行)3年連続3回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
紺碧の波濤(長生淳)広大なサウンドでスタートした課題曲でしたが、やや旋律の精度が甘く、場面によるサウンドの変化にも乏しいマーチになっていたのは残念でした。非常に演奏力を持ったバンドなので、楽曲全体を通して、変化を付けながらも一本の線のようなものをキープして行くという演出方法にチャレンジしてもらいたいものです。自由曲は一転して、肉厚なサウンドと、安定した演奏能力が頼もしい好演になりました。ただここでも、更なるアナリーゼの余地が感じられたのは確かで、場面ごとにサウンドの変化も欲しかったところです。しかし、生徒たちはこの難曲を良く演じきっていたと思います。
3: 東関東支部 千葉県代表 習志野市立第五中学校 (指揮:織戸弘和)3年ぶり5回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
三つの交響的素描「海」より、風と海との対話(C.ドビュッシー/織戸弘和)ややこもりがちなイントロでスタートしたマーチは、テンポ設定のせいもあってか、6/8のリズムが不明瞭で、テーマのアウフタクトも不鮮明に聞こえて来ました。トリオでもピッチの微妙なブレが見られ、終始不安感が支配するマーチになってしまいました。クライマックスも、音楽的な盛り上がりが欲しかったところです。自由曲は一転して、骨太でバランスの取れたサウンドが楽曲にマッチした好演でした。ハーモニーも美しく、中域のサウンドもしっかりと音楽を支えていましたが、クライマックスは更なる盛り上がりが欲しいかったかな、という印象でした。場面場面でのサウンドの変化も、こうした作品においては更に欲しかったところです。
7: 九州支部 鹿児島県代表 姶良市立重富中学校 (指揮:仮屋薗勝宏)8年ぶり2回目銀賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
復興(保科洋)オーケストレーションの難しいこの課題曲のイントロを、荘厳さを持ってスタートしましたが、やや木管のサウンドがバランス的に弱いかなという印象でした。全体のボリューム感は過不足なく、流れもスムースなシンフォニックマーチに仕上がっていたと思います。内声部が更にクッキリと聞こえると、更にサウンドに重厚さが加わった事でしょう。自由曲は、ユニゾンにやや不安定さを感じましたが、ソロ楽器の音色は素晴らしく、アンサンブルも安定した好演。全体のサウンドのバランスが安定して来ると、更に大きな音楽を奏でる事の出来るバンドになるのではないでしょうか。
8: 北海道支部 札幌地区代表 札幌市立清田中学校 (指揮:長田栄二)2年連続2回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
歌劇「ルサルカ」より(A.ドヴォルザーク)重厚で豊かな響きを持ったサウンドでスタートした課題曲でしたが、6/8の刻みが甘く、アンサンブルも雑然としたマーチになってしまいました。そんな中でも、音楽の流れはスムースに聞かせていました。いつもユニークな楽曲を発掘して来るこの指揮者が今年選んだ自由曲は、ドヴォルザークのオペラ作品。安定したアンサンブルを聞かせた金管に比べて、木管のピッチがやや甘く、アンサンブルにもやや不安定な部分が見られたのが残念でした。全体のサウンドのバランスにも一考の余地があったように思います。しかし、なかなかお手本の無い新たな楽曲に次々と取り組む姿は、生徒さんの取り組みを含め、いつも感銘を与えられます。
9: 北陸支部 石川県代表 能美市立根上中学校 (指揮:大橋 望)2年ぶり8回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
宇宙の音楽(P.スパーク)重厚なサウンドでスタートした課題曲は、各声部がクリアで、前進力を持ったマーチに仕上がっていました。アナリーゼもよく施されていましたが、後半サウンドのバランスがやや崩れてしまったのが残念でした。自由曲は中学生には難度の高いオリジナル作品。冒頭のホルンの存在感は素晴らしく、アンサンブルも緻密に練り上げられた好演でした。SAXやオーボエのソロサウンドも見事でしたが、難易度の高い楽曲なだけに発音がやや粗雑になってしまう部分が散見され、全体的に雑然とした印象になってしまったようでした。中低域のサウンドも、バランス的に、更に欲しかったところです。
10:九州 支部 鹿児島県代表 鹿児島市立谷山中学校 (指揮:岩井田万里子)16年ぶり3回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ウィークエンド・イン・ニューヨーク(P.スパーク)重厚なイントロでスタートした課題曲は、全体のアンサンブルの安定度は素晴らしかったのですが、旋律の呈示がいまひとつ明確で無かったのが残念でした。しかし、サウンドのバランスも良く、前進力を持ったマーチに仕上がっていました。自由曲は、16ビートの聞かせ方が秀逸で、ユニゾンやソロ楽器の音楽の安定感が抜群でした。そんな中で、フレーズの種類の違いに沿ったサウンドの変化がなく、音楽的な色の変化に乏しかったのは、残念でした。流れる部分、歯切れの良さを見せる部分、エッジを聞かせる部分、それぞれにそれぞれの音色を持つ事が、こうした楽曲をより効果的に聞かせる方法論のひとつなのではないかと思います。
14: 東海支部 長野県代表 長野市立据花中学校 (指揮:山岸 浩)3年ぶり2回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
歌劇「フェドーラ」より(U.ジョルダーノ/鈴木英史)重厚なイントロでスタートした課題曲でしたが、旋律の線が揃わず、時折アンサンブルにも乱れが見える、芯の無いマーチになっていました。そんな中、音楽の流れは非常に心地よいもので、もしかするとマーチとの相性が悪いのかな、という印象でした。自由曲は一転して、このバンドのサウンドに合っていたようで、重厚な中にも、柔らかい響きを持ったサウンドとのコラボレーションが、心地よい空間を作り出していました。奏者の個人レベルにも高いものを感じましたが、時折ハーモニーにブレが見られたのと、サウンドに変化が乏しかったのが残念でした。しかし、ここでも音楽の流れは秀逸のものを見せていました。
15: 西関東支部 埼玉県代表 さいたま市立岸中学校 (指揮:星野悦子)2年連続2回目銀賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」(R.シュトラウス/渚 智佳)心地よいリズムでスタートした課題曲でしたが全体合奏になると、左右の楽器にズレを生じていたのが残念でした。しかし、中間部の歌いっぷりは雄大で、ホルンの合いの手も効果的に響いていました。ただ、終盤はやはりアンサンブルが不安定になり、こうした部分での精度のアップが今後の課題となるのでしょう。自由曲は、肉厚で豊かなサウンドが楽曲にマッチした好演で主役のホルンも大活躍。終始、音楽の流れや変化を楽しませていただきました。
2: 中国支部 山口県代表 山口市立小郡中学校 (指揮:谷村一美)2年連続3回目銅賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
ウインドオーケストラのためのマインドスケープ(高 昌帥)朝早い出演のためか、サウンドがいまひとつブレンドせず、全体を通して雑然とした課題曲になってしまいました。課題曲のSAXのソロや、自由曲のオーボエ等、個々の演奏技術は高いのですが、ひとつの音楽としてまとまりきらなかったのが残念でした。また、自由曲では音楽的にもこのバンドならではの解釈と気持ちの高揚感が欲しかったところです。
4: 東北支部 宮城県代表 仙台市立向陽台中学校 (指揮:大内 泉)2年ぶり2回目銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生)課題曲は全体を通して縦の線が揃わず、雑然とした歯切れの悪いマーチになってしまいました。自由曲になっても,終始ピッチが不安定で、音楽の芯のようなものが感じられなかったのは残念でした。そんな中で、個々のソロ奏者のサウンドにキラリと光るものを感じたのは、うれしい収穫でした。
11: 四国支部 愛媛県代表 松山市立鴨川中学校 (指揮:坪田美知子)2年連続2回目銅賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
二つの交響的断章(V.ネリベル)豊かな音量を持つバンドという印象でしたが、課題曲では特に中間部のハーモニーが不安定で、終盤はアンサンブルも不安定になってしまいました。自由曲でも、バンド全体の音量が許容範囲を超えた感じで、アンサンブルやロングトーンの安定化等、今一度原点に立ち戻った演奏力の再確認が必要なのでは、という印象でした。また美しいffの聞かせ方にも工夫が欲しいところです。
 中学校・後半の部
4: 東関東支部 千葉県代表 松戸市立和名ケ谷中学校 (指揮上村二三子:)3年ぶり6回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より(高昌帥)豊かなサウンドのイントロでスタートしたマーチでしたが、やや旋律が不揃いだったでしょうか。アンサンブルにもやや雑然とした部分が見られ、不安感の漂う音楽になってしまいました。自由曲は一転して、緻密なアンサンブルと、フルートやSAX等の超中学生級のソロ、そして楽曲の流れに沿って変幻自在に移ろって行くサウンドコントロール。歌い込みも充分で、楽曲の持つ世界観を存分に発揮した名演になりました。演奏力が高いというような言葉自体が陳腐なものとなりそうな、圧倒的な音楽力の素晴らしさを堪能させて頂きました。
5: 北陸支部 石川県代表 金沢市立額中学校 (指揮:竹内 寛)3年連続3回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
アルプスの詩(F.チェザリーニ)豊かなサウンドでスタートした課題曲でしたが、全体的にサウンドにクリアさがなく、旋律もやや揃わないマーチになってしまいました。打楽器のバランスも一考の余地ありだったでしょうか。6/8のリズムの意味にも更なる追求が欲しかったところです。自由曲は、冒頭がやや音量的に大きめかなという印象でしたが、淡々とした中にも、音楽の大きな流れを感じさせる好演でした。そんな中て、場面ごとのサウンドの変化の妙による全体のブレンド感が更に欲しかったところですが、クライマックスに向けての音楽の展開等、懐の大きさをかいま見れる演出はお見事でした。
6: 東海支部 愛知県代表 日進市立日進中学校 (指揮:清野雅子)3年連続4回目金賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲(R.ワーグナー/藤田玄播)
後半の部3回目の課題曲1番は、ややピッチに不安はありながらも、芳醇なサウンドと熟成されたハーモニーが美しい世界観を作り上げていました。ただ、音楽の流れが重く、途切れがちに聞こえて来たり、細かい傷が見られたのは残念でしたが、総じて音楽の輝きが安定した好演でした。そして素晴らしかったのは自由曲。70年代の流行りの楽曲特有の、バンドの力が丸裸になるオーケストレーションをものともせず、ホルンをはじめとした骨太なサウンド、ブレの無い細かいパッセージの再現等々、全ての音楽の要素が自信を持って会場に響いて来たのは圧巻でした。重厚なオルガントーンも超中学生のもので、圧倒的な存在感を見せつけていたと思います。
10: 関西支部 兵庫県代表 加古川市立浜の宮中学校 (指揮:中原淳子)3年ぶり5回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲 (中橋愛生)重厚なイントロでスタートした課題曲でしたが、6/8の刻みが甘く、旋律にクリアさも欠いていたのは残念でした。しかし、トリオ以降は立ち直りを見せ始め、弱奏の安定感が非常に美しく、その後もクライマックスに至るまでバランスの良く取れた、前進力のあるマーチを聞かせるのに成功していました。自由曲は、メリハリのついた好演でしたが、部分的に雑然とした部分が見られたり、ハーモニーに濁りを感じる部分があったのが残念でした。しかし、アンサンブル力は非常に高く、全体を通して、音楽の流れがスムースな好演でした。
11: 中国支部 山口県代表 防府市立桑山中学校 (指揮:中村武司)3年ぶり8回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
大いなる約束の大地~チンギス・ハーン~(鈴木英史)勢いのあるイントロからスタートした課題曲でしたが、サウンドにブレンド感がなく、ややアンサンブルがちぐはぐになってしまっしいました。続く中間部は歌い込みが素晴らしく、ハーモニーも安定して、独自の音楽的シーンを見せるのに成功していました。終盤はサウンドのバランスも立ち直りを見せていました。続く自由曲は、このバンドのサウンドにマッチした好演でした。重厚なサウンドのユニゾンは勇壮で、フルート等のソロ楽器の音色も美しく、骨太な木管サウンドや、トランペットの輝かしい響きも、音楽に更なる彩りを添えていました。緻密なアンサンブルも素晴らしかったと思います。余談ですが私、桑山中のみなさんとホテルが一緒でした。(笑)
1: 中国支部 島根県代表 出雲市立第一中学校 (指揮:小西慶一)3年連続41回目銀賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
歌劇「トゥーランドット」より(G.プッチーニ/後藤洋)課題曲の冒頭から、骨太で重厚なサウンドが、この課題曲のオーケストレーションを更に増幅していました。旋律の際立たせ方やハーモニーの美しさも素晴らしく、芯の通った音楽に仕上がっていましたが、終始音楽的色彩感に変化でがなく、聞く側を飽きさせないサウンドの変化の妙を見せて欲しかったところです。しかし、安定させるのが難しい課題曲を非常に美しく彩っていたと思います。続く自由曲も高度なアンサンブルを聞かせていましたが、柔らかいサウンドの部分の素晴らしさに比べると、攻撃的な部分にエッジが付いていかない感じで、場面の変化に合せたサウンド作りを施して欲しかったところです。また、バストロあたりがやや音量過多だった印象で、サウンドのバランスを崩していたのも残念でした。
2: 東北支部 宮城県代表 仙台市立八軒中学校 (指揮:高田志穂)3年連続4回目銀賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
楽劇「サロメ」より、七つのヴェールの踊り(R.シュトラウス/森田一浩)今年のコンクールで課題曲1番を連続して聞けるというのも珍しい体験ですが、そういう意味では今年中学の部が最も冒険心豊かな部門だったのかも知れません。ひとつ前の出雲一中に比べると、このバンドは硬質なサウンドのさくらという印象でした。サウンドのバランスもよく、トランペットトップのサウンドも素晴らしい好演でした。がそんな中で、場面転換によるサウンドの変化が欲しかったところでしょうか。しかし、非常に安定した課題曲1番を作り上げていたと思います。自由曲でも、重厚なサウンドの中で、オーボエのソロも麗しく、安定したユニゾンを聞かせていましたが、ここでもサウンドの変化がやや乏しく、シュトラウスの持つ色彩感を演じきれなかったのが残念でした。
3: 関西支部 奈良県代表 生駒市立生駒中学校 (指揮:牧野耕也)3年連続12回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
交響曲第5番より、 第2・4楽章(M.アーノルド/瀬尾宗利)安定感のあるイントロでスタートした課題曲でしたが、主題の線が揃わず、ピッチにもやや不安が見られるという、およそこれまでのこのバンドのイメージとは真逆のマーチになってしまったようでした。6/8の刻みももうひとつキレが悪く、終始雑然とした音楽になってしまったようでした。自由曲では弱奏の美しさが素晴らしく、会場全体か聞き入っていましたが、4楽章になると、アンサンブルにブレが見られはじめ、ハーモニーにも安定感を欠いてしまったようでした。しかし、さまざまな逆境の中で全国大会までやって来たメンバー達の精神力に、大きな拍手を送りたいと思います。
8: 東京支部 東京都代表 玉川学園中学部 (指揮:土屋和彦)2年ぶり11回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番、ニ短調」より、シャコンヌ(J.S.バッハ/森田一浩)締まりのあるイントロでスタートした課題曲は、6/8の刻みも心地よく、旋律が際立った、音楽のスッキリしたマーチに仕上がっていました。アナリーゼもよく施され、全てのフレーズを大事にした丁寧な演奏でしたが、時に元気さが感じられる部分があってもいいかな、という印象でした。自由曲は、美しい発音が素晴らしく、オーボエやSAXの音色も美しい好演で、全体を通して、よくアナリーゼされ整理された音楽に仕上がっていました。並いる重量感のある自由曲オンパレードの中で、音楽を丁寧にしっかりと演じる素晴らしさを感じさせてくれる演奏だったと思います。
9: 東北支部 秋田県代表 秋田市立山王中学校 (指揮:木内 恒)2年連続31回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
パガニーニの主題による狂詩曲(S.ラフマニノフ/森田一浩)イントロからクリアさに欠けたサウンドで、旋律もクッキリと聞こえて来る事が無かったのが残念でした。アンサンブルも全体的に雑然とした印象で、ハーモニーにも時折濁りを感じる部分が見られました。個々の奏者の演奏力は高いのですが、いま一度丁寧なサウンドと音楽の積み重ねに時間を割いてもらいたいものです。自由曲は一転して、音楽の輪郭がクリアで、骨太なサウンドが心地よい好演でした。たたここでもアンサンブルにばらつきが見られたりしたのが残念なところ。サウンドにも変化や更なる艶みたいなものが欲しかったところです。終盤は徐々に本領を発揮していった感じで、このバンドの本来の姿がかいま見られた感じでした。
13: 北海道支部 札幌地区代表 札幌市立白石中学校 (指揮:多米恵理子)3年連続4回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
復興(保科洋)
雄大なサウンドでスタートした課題曲でしたが、メロディのフレーズ感やタンギングが不自然で、音楽の輪郭がクリアに聞こえてこなかったのか残念でした。そんな中で金管のまろやかな響きが、サウンド的心地よさを演出していたのに、頼もしさを感じました。自由曲は、冒頭の弱奏が美しく、その後も中低域のサウンドが、安定した骨太な音楽に仕上げていました。そんな中で高音部にクリアなサウンド作りのアプローチが更に欲しかったところでしょうか。場面ごとのメリハリも、もっと欲しかったところですが、総じて音楽の流れが秀逸な好演でした。個々の奏者の演奏能力の高さもよくわかる演奏だったと思います。
7: 四国支部 徳島県代表 徳島市立国府中学校 (指揮:藤本澄代)3出休明け4回目銅賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
バレエ音楽「サロメの悲劇」より(F.シュミット/佐藤正人)課題曲の冒頭から、非常にストレートなサウンドを持ったバンドという印象でした。また、アンサンブル力が非常にレベルが高い中で、特に中間部のハーモニーに不安定さが漂っていたのが残念でした。音楽的にも更に丁寧な処理が欲しかったところです。自由曲でも、音量そのものが豊かな反面、音質的にはやや乾燥した感じで、音楽が常にストレートに聞こえていたようでした。楽曲のアナリーゼにも更に気をつかってほしかったところです。
12: 西関東支部 新潟県代表 新潟市立山の下中学校 (指揮:岩崎里子)初出場銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
吹奏楽のための神話~天の岩屋戸の物語による(大栗 裕)課題曲は6/8のリズムが転びがちで、旋律も縦の線を揃えることが出来ず、終始アンバランスで不安定なマーチになってしまいました。自由曲は全体として淡々と演奏しているという印象でしたが、アンサンブルのしっかりとした演奏に仕上がっていました。ただ音楽の流れが途中で途切れてしまったり、ピッチにブレが生じる等、最後の詰めがやや甘いかなという印象も感じられたのも事実です。
14: 九州支部 佐賀県代表 佐賀市立成章中学校 (指揮:宮崎保子)3年連続4回目銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ザ・スピード・オブ・ヒート(J.ジルー) 課題曲は、6/8の刻みが甘く、サウンド゙もやや開き気味という感じで、終始雑然としたマーチになってしまいました。また、待ち時間が長かったためか、ピッチも不安定になり、持ち味を発揮できなかったようでした。自由曲は、中低音が安定し、リズムやハーモニー等、音楽の基本をしっかりととらえた好演でしたが、内声部の扱いに、ひと工夫もふた工夫も欲しかったところでしょう。音量的にも、大きく出そうというアプローチは必要なかったように感じました。
高等学校・前半の部
2: 中国支部 岡山県代表 岡山学芸館高等学校 (指揮:中川重則)3年連続11回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ルイ・ブージョワーの讃歌による変奏曲(C.T.スミス)
去年は華麗なる舞曲、そして今年はルイ・ブージョワーで遂に精華と同じ自由曲を演奏する事になった学芸館ですが、奇しくも前半と後半の同じ2番という出演順。バランスの取れたイントロからスタートした課題曲は、旋律の扱い方が絶妙で、余分なものをスッキリとそぎ落としたトリオ等々、流れを損なわない前進力を持ったマーチに仕上げて来ました。アナリーゼもしっかりと施されていて、安定感抜群の演奏でした。自由曲は、県大会支部大会と、高度なテクニックの裏で細かい傷が度々見られていましたが、この日はそのほぼ全てをクリアしていました。アンサンブルも緻密で、内声部の聞かせ方等、ハイレベルな音楽を展開していました。そんな中で、対旋律とのバランスや終盤のトロンボーンの音量バランス等、少々やりすぎの感があったのは残念でしたが、大きな音楽のうねりが、それを遥かに上回った名演でした。
4: 九州支部 熊本県代表 玉名女子高等学校 (指揮:米田真一)3年連続5回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
復興(保科洋)やや雑然としたイントロからスタートしたマーチでしたが、旋律の際立った、明るいマーチに仕上がっていました。6/8のリズムは更に緻密さを持って欲しかった印象で、全体的に更なるアナリーゼによって、楽曲全体をもっと整理する事が可能だったのではないかなと思いました。内声部の動きにも更に気を使ってほしかったところです。自由曲は、緊張感の中にも憂いを感じるサウンドか好印象で、特に木管サウンドの変化が、飽きさせない音楽の流れを作る事に、大きく貢献していたようでした。SAXのソロも美しく、終盤は復興の光が見えてくる明るいサウンドで終結していたのが印象的でした。5回目の挑戦にして初の金賞を受賞しました。
11: 北海道支部 札幌地区代表 東海大学付属第四高等学校吹奏楽部 (指揮:井田重芳)3出休明け30回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
復興(保科洋)非常にバランスの良いイントロでスタートした課題曲、アンサンブルも乱れを見せず、旋律もクリアでこのバンドの演奏能力と表現能力の高さを誇示するマーチに仕上がっていました。そんな中で、サウンド自体にもう少し締まりがあると、より前進感を持ったマーチになったのではないかな、という印象でした。自由曲は、冒頭のユニゾンが色彩感を押さえ、徐々に色づいて行くサウンドの変化の付け方が絶妙でした。低音も充実したサウンドでのアンサンブルも心地よく、細かいパッセージの再現精度も高く、音楽の流れを持続した名演でした。
12: 北陸支部 石川県代表 石川県立金沢桜丘高等学校 (指揮:安嶋俊晴)7年ぶり2回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響詩「ローマの噴水」より(O.レスピーギ/安嶋俊晴)全体を通して、重厚でエッジのあるサウンドを持ったバンドですが、流れるような導入部から終始、楽曲の持つ世界観を的確に再現する事に成功していました。ただ、ややアナリーゼ不足の感は否めず、全体的に音楽的整理不足だったかな、という印象です。終盤は雑然として音楽の芯がハッキリクッキリと聞こえてこなかったのも残念です。自由曲は一転してこのバンドの演奏力の高さを魅せる演奏で、細かいパッセージの精度も高く、アンサンブルの安定した演奏に仕上がっていました。誠実に音楽と向き合い、音を積み重ねた努力の跡が見える噴水、という印象です。
15: 東京支部 東京都代表 東海大学付属高輪台高等学校 (指揮:畠田貴生)3年連続8回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
フェスティバル・ヴァリエーションズ(C.T.スミス)
東京都大会を聞いた私たちは、ある種の不安を持ってこのバンドの登場を待っていました。がしかし、その不安は杞憂のものであった事が課題曲のスタートと同時にわかる変身ぶりでした。前半の部唯一のじゅげむ。冒頭からアンサンブルが緻密で、このバンドが持つ洗練されたクリアなサウンドのシャワーが心地よく、和風の空間を見事に演出していました。中間部のハーモニーも安定し、なんと言っても歌い込みが素晴らしい美演だったと思います。後半の音楽の展開も不安の要素を全く感じることのない安定した演奏でした。そして自由曲。支部大会では悉く撃沈したホルンが、この日は最強の牽引車ぶりを発揮。一瞬の傷はありましたが、そんなことは全く気にならない、エキサイティングでアクロバティックな音空間で前半の部を〆てくれました。
  1: 関西支部 大阪府代表 明浄学院高等学校 (指揮:小野川昭博)3年連続10回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ウインドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥)バランスのいいサウンドでスタートしたイントロで、マーチの主題もクッキリと6/8のリズムも心地よく、聞きやすい課題曲でした。終盤のアナリーゼも素晴らしく、平凡な曲をより立体的に聞かせるアプローチはさすがです。自由曲は、再挑戦となるマインドスケープ。ここでもサウンドのバランスが素晴らしく、同じ曲を演奏するにあたって、前回とは違った、新たなアプローチやこれまで見えなかった新たなフレーズの発見が見られたのは頼もしいところです。部分的にタンギングがやや不自然な部分が見られたりしましたが、戦前の予想以上に激戦となった高校の部のスタートを飾るにふさわしい、骨太な名演でした。演奏終了後に次の学芸館の指揮者とエールを交わしていたのも、微笑ましい情景でした。
3: 東関東支部 柏市立柏高等学校吹奏楽部 (指揮:石田修一)3出休明け21回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
復興(保科洋)やや音がこもったイントロでスタートした課題曲は、主題のクラリネットが更にこもってしまった印象で、芯の無いマーチという印象でした。そんな中でも、楽曲のアナリーゼはしっかりとされていて、低音の動き等、他の団体では見られなかった個性的な解釈を興味を持って聞かせて頂きました。冷静な音楽の流れの中に、陰影のしっかりと付けられた素材を積み重ねか跡がしっかりとわかる演奏だったと思います。自由曲においてもアナリーゼが素晴しく、各声部の複雑な絡みや、個々の奏者の演奏力の高さが手にとるようにわかる演奏でしたが、ここでも終始ややこもりがちなサウンドが、全体の印象を薄める事になってしまったようです。しかし、個人的にはめくりめく旋律のうねりを感じることの出来る興味深い解釈の演奏だったと思います。
6: 四国支部 愛媛県代表 愛媛県立伊予高等学校 (指揮:長谷川公彦)3年連続20回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」
(M.ラヴェル/仲田守)色彩感のあるサウンドでスタートした課題曲は中低音が充実した骨太な音楽に仕上がっていましたが、全体を通して、サウンドの変化が乏しく、音が重なりうねり合う様がいまひとつ表現しきれなかったのが残念でした。終盤はアンサンブルもやや不安定で、終始雑然とした印象でした。自由曲は、弾け切らないサウンドが逆にラヴェルの世界にマッチングするという効果をもたらしていて、個々の奏者の高い演奏力も光っていました。ただ、やはりアナリーゼ不足のきらいがあり、粗雑なワルツという印象だったでしょうか。しかし、現在の指揮者になってから、明らかに何かが変わった感のある伊予サウンド。次なるチャレンジに期待をもたせてくれる演奏だったのは間違いありません。
7: 東関東支部 茨城県代表 常総学院高等学校 (指揮:本図智夫)3年連続7回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生)
骨太なのに、音楽がクリアに聞こえてくる、このバンドの最近のサウンド作りは不思議であり、魅力的です。課題曲はアナリーゼが充分に施され、内声部もクリアな、自然な流れを持った音楽に仕上がっていました。自由曲も、中低音が充実したサウンドで、新たな解釈を楽しませて頂きました。アンサンブルの緻密さは言うまでもありません。そんな中で気になったのが、巨大な音圧。名古屋のこの会場では過圧の感が否めなかったのは事実で、緻密なアンサンブルや細かいフレーズも、音圧の高さの中に埋もれてしまう部分が見られたのは、勿体なかったかな、という印象でした。しかしそんな中でも、演奏力の高さや、芯の通った音楽作りは、トップクラスのものを感じさせる存在感を放っていました。
8: 関西支部 大阪府代表 近畿大学付属高等学校 (指揮:小谷康夫)初出場銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
バレエ音楽「エスタンシア」より(A.ヒナステラ/仲田守)
課題曲は、全体的に音楽の流れが重いかなという印象で、発音もアンサンブルにも不安定な部分がかいま見られたのが残念でした。また、細かいパッセージもいまひとつ揃わず、終始雑然とした印象になってしまいました。自由曲は、骨太なサウンドを引き立てる楽曲とのコラボレーションが心地よい世界を作っていました。サウンドのエッジも心地よく、終始たたみかける音楽の嵐がホール全体を揺るがしていました。惜しむらくは、リフレインの中で、微妙に変化するサウンドの妙などを演出できなかった部分でしょうか。全体のバランス取りにも、より緻密さが欲しかったところです。
9: 西関東支部 埼玉県代表 埼玉県立松伏高等学校 (指揮 : 小川 慎) 4年ぶり2回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響曲1997「天地人」(譚盾/天野正道)
骨太なサウンドを持っているバンドです。課題曲は、ややアンサンブルに難が見られ、終始雑然としていたのが残念でした。サウンドに締まりみたいなものも欲しいかったかなという印象です。自由曲になっても、雑然とした印象は拭えず、音楽的にも更に整理を施してほしかったところですが、クリアなサウンドと、個々の奏者の技術力の高さは、次なるチャレンジへの期待を大いに抱かせてくれました。
13: 東北支部 福島県代表 福島県立湯本高等学校 (指揮:橋本葉司)2年連続8回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響詩「ローマの噴水」より(O.レスピーギ/高木登古)やや乾いたサウンドでの課題曲でしたが、その分、ブレンド感に欠けていたのが残念でした。そんな中でも、各楽器の発音の美しさは秀逸でしたが、音量過多だったためか、強奏部分では雑然とした印象になっていたのは惜しかったところです。自由曲はアンサンブルにやや難があり、各声部の絡みがちぐはぐなものになっていました。音楽の流れも、スムースさを欠いていたようです。全体を通して、しっかりとしたアナリーゼによる音楽的な整理が欲しかったな、という印象です。しかし、個々の演奏力の高いバンド、次なるチャレンジに期待しましょう。
5: 東京支部 東京都代表 八王子学園八王子高等学校 (指揮:高梨 晃)4年ぶり3回目銅賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響詩「ローマの祭」より(O.レスピーギ/高梨晃)粒断ちの良いサウンドからスタートした課題曲でしたが、アンサンブルが雑然としていて、音楽的に歯切れが悪くなってしまったようでした。また全国クラスになると、楽曲のアナリーゼにも更に突っ込んだものが要求されるところでしょう。自由曲は、バンダに一体感が感じられず、全体のサウンドも開き気味になってしまいました。後半のユニゾン等、きらりと光る部分もありましたが、やや全国大会の壁に押し返されてしまったかな、という印象でした。
10: 東北支部 秋田県代表 秋田県立秋田南高等学校 (指揮:阿部智博)3出休明け28回目銅賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響曲より(矢代秋雄/天野正道)
題曲は、アンサンブルにやや難があるという印象で、サウンド全体のバランスも安定感を欠いていました。音楽的なアナリーゼにももっと追求する余地があったように思います。自由曲では、持ち前のアンサンブルがキラリと光っていましたが、サウンドのバランスに一考アリだったでしょうか。ユニゾンの精度にも、更に丁寧なアプローチが望まれるところです。終盤は、許容範囲を超えた音量が空間を飽和状態にしてしまったようです。
14: 東海支部 静岡県代表 浜松海の星高等学校 (指揮:土屋史人)初出場銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
科戸の鵲巣~吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生)豊かな音量を持ったバンドという印象でしたが、サウンドが全体的に乾いた印象で、アンサンブルにもほころびが見られたのが残念でした。そんな中で、楽曲のアナリーゼはよくなされていて、音楽が立体的に組み立てられていたのは好印象でした。また、課題曲自由曲を通して、ハーモニーに濁りが見られ、突き抜けるようなクリア感は不足していたようです。そんな中でも中低音の充実した骨太なサウンドは今後の成長への期待をもたらしていたと思います。
 高等学校・後半の部
1: 西関東支部 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 (指揮:宇畑知樹)2年連続14回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
レジェンド(F.リスト/森田一浩)
非常に粒立ちの良いサウンドで奏でた課題曲は、アナリーゼが隅々まで施され、よく整理された演奏に仕上がっていました。ともすれば無機質に聞こえてしまう課題曲5番ですが、このバンドの取り組みはまさに「音楽が活きている」という印象をもたらしていました。また、このバンドのサウンドはややこぢんまりしているという印象があったのも事実ですが、今年は非常に重厚で、かつ繊細さを持っていたと思います。続く自由曲は、ハーモニーの美しさか秀逸で、ユニゾンも美しく、内声部のアナリーゼもしっかりと施されていた名演でした。サウンドも骨太な部分と柔和な部分が見え隠れするという絶妙な使い分けで、高校の部ではなかなか難しい、出演順1番にしての金賞を受賞しました。考えてみれは昨年はまさかの銅賞でしたが、音楽への取り組み方を変えずに、自分たちの道を信じて金賞に返り咲いたその「過程」に、何よりも価値があるのだと思います。
2: 九州支部 福岡県代表 精華女子高等学校 (指揮:藤重佳久)2年連続17回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ルイ・ブージョワーの讃歌による変奏曲(C.T.スミス)すっきりと整えられたイントロからスタートした課題曲は、旋律の組み立て方が秀逸で、完璧に近い6/8の刻みの上で、表情(音色)を変えながら飛び交うメロディー達、という印象でした。全体的にメリハリの付け方も素晴らしく、各声部を独立させて抑揚や表情を付けて行くという、その地道な積み重ねが完成型となった、今年最高の「希望の空」をホールいっぱいに轟かせていました。続く自由曲は、2度目のチャレンジでしたが、前回から更に発展した新たなアプローチが頼もしく、複雑に絡み合う音楽の輪郭と、その中でうねりを魅せる内声部の扱い方が絶妙な、名演でした。一瞬の傷は見られましたが、全体を貫く音楽の流れは、今年の高校の部を通しても、群を抜いていたと思います。音圧もppからffまでいっぱいに使っていた、数少ないバンドでしょう。また前半のコラールの重厚さは、おそらくこのバンドにしか出せないサウンドに間違いありません。
6: 九州支部 鹿児島県代表  原田学園鹿児島情報高等学校 (指揮:屋比久勲)3出休明け4回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
エルフゲンの叫び(G.ローレンス)
非常にオーソドックスな王道なマーチは健在です。重厚なイントロからスタートした課題曲は、冒頭のクラリネットによる主題が、やや抑え過ぎかな、という印象でしたが、その後の展開は素晴らしく、「マーチとはこういうもの」という絶対的な自信を感じる事の出来る秀演でした。またトリオの独特な表現システムはこのバンドならではのものでしょう。自由曲は、指揮者が城東高校時代に演奏している作品。前回との一番の違いは木管サウンドでしょうか。そのためか、木管の細かいパッセージをしっかりと聞かせるために、全体的に金管を抑えていたのが、やや消化不良気味に聞こえるきらいはありましたが、音楽の流れや組み立て方は素晴らしく、感動に音圧は関係ないというセオリーを証明する演奏だったと思います。ところで、演奏とは関係無いのですが前夜のホテルが情報高校の生徒さんと同じでした。エレベーターに何度か一緒になった時の女子生徒の気配りに感動。そして屋比久先生は私の隣のお部屋でした(笑)。
9: 関西支部 大阪府代表 大阪府立淀川工科高等学校 (指揮:丸谷明夫)2年連続33回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より、イントロダクション、夜明け、全員の踊り(M.ラヴェル/立田浩介)
颯爽と入場して来るのはいつもの淀工の姿。しかし、雑然としたイントロでスタートした課題曲にいつもの圧倒的な音楽はありませんでした。6/8のリズムの刻みも不明瞭不正確で、旋律の流れがやっとマーチを支えているという印象でした。トリオも緊張感を欠き、決めの部分では音を叩きつけるというアプローチ。あの流れるように繊細で美しかった淀工のマーチが息をひそめてしまっていたのが非常に残念でした。自由曲においても夜明けの木管による細かいパッセージはクリアさを欠き、後半の金管楽器のタンギングも甘く、鉄壁なダフニスを誇っていた淀工の姿を今回感じる事は出来ませんでした。全体を通してのアンサンブルの確かさと、ユニゾンの確かさは何とか健在だったのと、終盤のフルート陣のトリルの圧倒的な存在感が秀逸だったのに救われた感じでしょうか。一体何があったのか、しばし呆然の12分間でした。
13: 東海支部 愛知県代表 光ヶ丘女子高等学校 (指揮:日野謙太郎)2年連続11回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
パガニーニ・ロスト・イン・ウィンド(長生淳)
全体的に雑然とした印象だった課題曲、アナリーゼも不足している感じで、発音の悪い部分も目立つなど、終始音楽的な安定感を書いていたのが残念でした。音量も、このホールの中では、やや大きすぎるかな、という印象でした。自由曲は、一転して個々の演奏能力の高さを感じるもので、ユニゾンの美しさやアンサンブルの緻密さを感じさせる好演でした。ただここでも終始音圧が高すぎる感はいなめず、繊細なサウンドにおけるバランス取りを施して欲しかったところです。この自由曲は一般の部でも伊奈学園OBが演奏していましたが、来年プチ流行りしそうな好感度の高い楽曲のひとつかも知れません。
14: 東京支部 東京都代表 駒澤大学高等学校 (指揮:吉野信行)3年ぶり11回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
宇宙の音楽(P.スパーク)今年のコンクールの大トリは、このバンドが締めくくりました。東京都大会でも圧倒的な存在感を魅せた演奏でしたが、まずは課題曲。6/8の刻みはやや不安定でしたが、重厚なイントロと、旋律のクリアさが、マーチに重い中にも前進感をもたらしていました。そしてなんと言っても秀逸だったのは、自由曲。金管楽器のエッジが鋭いこのバンドのサウンドにマッチした選曲だったと言えるでしょう。冒頭のホルン、はやや傷はありながらも、ビッグバンを牽引する役を充分に果たし、その後はめくるめくようなサウンドシャワーがホールいっぱいに降り注いでいました。そして泣きのハルモニア。昨年の精華のアプローチとはまた違う、重厚なオルガンサウンド的演出で、プチファンファーレの音の積み上げ方は、華やかなサウンドを誇るこのバンドならではのものでした。終盤も安全運転に陥ることなく、全速力で金賞ゲット、という印象でした。
4: 東関東支部 千葉県代表 習志野市立習志野高等学校吹奏楽部 (指揮:石津谷治法)3出休明け26回目銀賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
バレエ音楽「シバの女王ベルキス」より(O.レスピーギ/石津谷治法)美しい発音を誇る習志野サウンドでのさくらのうた。予想通りの展開で、終始流れのある極上の世界を作り上げていました。メリハリも申し分なく、芯の通ったバラードに仕上がった、という印象でしょうか。ただ、そうした流れの中で、感銘度が高いものであったかというと、美しさを超えるものが感じられなかったのは、少々残念でした。自由曲は、このバンドの為にアレンジされたバージョンで、オフステージのペットも美しく、音の積み重ね方にも絶妙なものを感じました。たた、ここでも、その美しさにプラスされていいはずの訴えかけるものが感じられたかというと、それは疑問符だったかも知れません。
5: 北海道支部 札幌地区代表 札幌日本大学高等学校 (指揮:木田恵介)初出場銀賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
交響詩「ローマの祭」より、チルチェンセス、主顕祭(O.レスピーギ/磯崎敦博)北海道からのニューフェイスの登場ですね。歯切れのいい重厚なサウンドからスタートした課題曲は、リズムがやや転びがちだったのが残念でした。サウンドもやや開き気味だったでしょうか。そんな中で中間部の歌い込みは美しく、このバンドの売りは、その辺にあるのかなという印象でした。自由曲は、バンダの完成度が高く、アンサンブルの緻密さやユニゾンの美しさも際立っていましたが、全体を通して安全運転だった印象はいなめず、めくるめくような映像感を感じることか出来ない音楽になっていたのが惜しまれます。個々の奏者の技術力は高いバンドなので、もっと出来るキャパシティを持っていたのではないでしょうか。
8: 東海支部 三重県代表 三重県立白子高等学校 (指揮:桐生智晃)2年連続6回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
歌劇「トスカ」より(G.プッチーニ/鈴木英史)ステージに入場する際、ひとりひとり全員が礼をしながら入って来たのがまずは印象的でした。去年は非常に柔和なサウンドを持っていたという印象でしたが、今年はそこにエッジが加わって、そのバリエーションが増えてきたようです。クリアなイントロでスタートした課題曲は、旋律が際立ち、発音も確かな好演でしたが、サウンドに更に艶が加わると、音の色合いが明るくなった事でしょう。自由曲は、指揮者がオペラ好きなのでしょうか。情感をたっぷりと歌った好演で、独自の世界観を持っていたのが印象的でした。ただこのホールにあってはやや音圧が高過ぎたかなという感じで、その辺りの絶妙なさじ加減が加わると、音楽の感銘度が更に増すのではないてしょうか。
10:西関東 支部 埼玉県代表 春日部共栄高等学校 (指揮:都賀城太郎)3出休明け8回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
吹奏楽のための協奏交響曲
(福島弘和)骨太で非常に粒立ちの良いサウンドは健在です。バランスも良く、アナリーゼを充分に施された、内声部まで配慮の行き届いた好演でした。やや音圧か高過ぎるのか、時折音楽が粗雑に聞こえて来てしまうのが残念でした。しかし、演奏能力の高さは、レベルの高い高校の部の中にあっても、群を抜いている存在のひとつです。自由曲は、福島作品の初演ですね。重厚で、クリアで明るいサウンドがこの楽曲に非常にマッチしていました。ソロも美しく、アンサンブルも緻密な好演でした。自由曲では音圧過多は感じられず、課題曲はやや力みすぎたのでしょうか?個人的には短い課題曲の選択で、自由曲を長めに聞きたかった感じです。この作品、本来は10分近くあるらしく、来年以降流行りを見せるのか、注目していたいところです。
12: 中国支部 島根県代表 出雲北陵高等学校 (指揮:原田 実)2年連続7回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
歌劇「ローエングリン」より、エルザの大聖堂への行列(R.ワーグナー/鈴木英史)堅固なサウンドを誇るこのバンドの課題曲5番は、高校の部を通じても、レベルと完成度の高い好演でした。特にアンサンブルの緻密さと発音の美しさが際立ち、輪郭のスッキリとした音楽に仕上がっていました。アナリーゼも隅々までよく施されていたと思います。自由曲は、オフステージのファンファーレも美しく、終始流麗なエルザを聞かせていました。ただ、主題の冒頭がカットされいつの間にか旋律がスタートしていた感じ否めず、この楽曲に取り組んだ意味が今ひとつ納得できないものになっていたのも事実です。このバンドのここ数年の自由曲へのアプローチは個人的に好きなのですが、こと今年の展開については、全国大会までに修正の余地があったのではないかな、と思います。
3: 四国支部 愛媛県代表 愛媛県立松山中央高等学校 (指揮:土居俊一)7年ぶり4回目銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(Z.コダーイ/森田一浩)作為的なイントロからスタートした課題曲は、旋律が揃わず、全体を通して雑然とした不安定なマーチになってしまいました。また音楽の決めの部分で、音を叩きつけるような演出は、やや古さを感じるアプローチではないかな、という印象です。自由曲では、フルートやハープのサウンドの表情の美しさやユニゾンの醍醐味を感じさせる演出が好印象でしたが、サウンドにブレンド感がなく、全体を通して音楽的な表情の変化に乏しかったのが残念でした。
7: 東北支部 山形県代表 山形県立鶴岡南高等学校 (指揮:蛸井 朗)初出場銅賞
課題曲課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
楽劇「サロメ」より 七つのヴェールの踊り(R.シュトラウス/M.ハインズレー)クリアなサウンドを持つバンドという印象でしたが、アンサンブルに乱れがあったり、サウンドにレアな部分が見え隠れしたりするなど、音楽的に締まりがないかな、という印象の課題曲でした。自由曲では、骨太なサウンドが心地よく、ユニゾンも安定した演奏でしたが、ソロ楽器や全体のアンサンブルにやや不安定なものが感じられたのが残念でした。ハーモニーにも時折濁りがあったでしょうか。しかし、東北から初見参のバンド。骨太なサウンドを軸に今後どう変化していくのか、楽しみな存在です。
11: 北陸支部 富山県代表 富山県立高岡商業高等学校 (指揮:神田賢二)3出休明け27回目銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
歌劇「ばらの騎士」組曲(R.シュトラウス/酒井格)ストレートなサウンドからスタートした課題曲は、6/8の刻みが不明瞭で、アンサンブルにも不安定さを生じるなど、個々の演奏力が高い中で本領を発揮できないものになってしまったようでした。自由曲では、重厚なサウンドが心地よく、アンサンブルやハーモニーも安定した好演でしたが、音楽的にはまだまだ整理する部分が残されていたかな、という印象でした。
大学の部
6: 九州支部 福岡県代表 福岡工業大学吹奏楽団 (指揮:柴田裕二)3年連続13回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
交響曲第4番より、終楽章(P.I.チャイコフスキー/M.ハインズレー)課題曲はややサウンドがこもっていたのが気になりましたが、誠実に譜面を紡いで行くという、楽曲への取り組みが印象的でした。サウンドのダイナミックレンジの広さも充分で、内声部へのアナリーゼもしっかりなされていた為、音楽が立体的に聞こえていました。個人的には更にサウンドにエッジがある部分が加わると、タイトルの「香り立つ・・・・」という意図がより的確に再現できたのではないかと思います。自由曲は温故知新シリーズのチャイコフスキー4番。70年前後に自由曲として大流行した曲ですね。全体を通して、ハーモニーも安定し、音楽的にも説得力のある高い演奏力を聞かせていましたが、細かいパッセージの音圧が、楽器によってバラバラで、ひとつひとつの素材の集合体に流れが無かったのが残念でした。しかし、音楽全体の印象で、大きな感銘をオーディエンスに与えた好演たったと思います。
8: 西関東支部 埼玉県代表 文教大学吹奏楽部 (指揮:佐川聖二)3出休開け20回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
トリトン・エムファシス(長生淳)なかなか好演に出会うことが出来ない今年の課題曲3番ですが、高いアンサンブル力を誇るこのバンドもやや苦戦していたようでした。全体を通して、打楽器と管楽器がうまくブレンドせず、時折アンサンブルにも迷いが生じていた他、中間部のハーモニーも、らしからぬわずかなブレがあったのが残念でした。一転して自由曲は、バンドのサウンドと個性にマッチした好演でした。骨太な木管サウンドがここでは威力を発揮し、重厚なハーモニーの中で、しっかりと旋律を浮き立たせるというこのバンドの本来の力を魅せていました。また、細かい部分までしっかりとアナリーゼか施され、特に後半はバンドの技術力の高さが、音楽を比類なきものに昇華させていました。
11: 東京支部 東京都代表 東海大学吹奏楽研究会 (指揮:福本信太郎)2年連続5回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
紺碧の波濤(長生淳)
しっかりとアナリーゼの施された課題曲でしたが、東京都大会で聞いた時と比べると、やや粗雑な部分が見られたり、音楽の流れがスムースにいかない部分もかいま見られました。しかし、迷いの無い指揮棒と、その指揮者を全面的に信頼している奏者とのコラボレーションが、プラスの方向に音楽を導いてくれたようでした。また、楽曲のエンディングの演出は、この指揮者のセンスの高さを物語っていました。自由曲は一転して、サウンドや表現の意図がクリアで、細かい部分まで音符のひとつひとつを慈しむように音楽を積み上げて来た跡が見られる秀演だったと思います。ただ、音楽が時にステージ上で完結してしまう部分も見られ、その辺りがこのバンドの今後の課題となるのでしょう。また、中音域の更なる充実も望みたいところです。
2: 北陸支部 富山県代表 富山大学吹奏楽団 (指揮:建部知弘)3年ぶり4回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
交響曲1997「天地人」(譚盾/天野正道)
やや粗雑なイントロからスタートしたマーチは、全体を通してアンサンブルが不安定で、旋律等、音楽の要素のひとつひとつが埋もれてしまっていたようでした。そんな中でも、テンポ感等は絶妙で、溌剌感の漂うマーチに仕上がっていたと思います。自由曲でも、全体を通して線が揃わない等、アンサンブルに不安なものを感じましたが、音楽の流れを感じる部分もかいま見られました。中間部等はもっと歌っても良かったかも知れません。そんな中でも、個人個人の演奏力の高さを感じたのも確かで、今後が楽しみなバンドのひとつです。
4: 九州支部 長崎県代表 長崎大学吹奏楽部 (指揮:篠原昂太)初出場銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
交響詩「スパルタクス」(J.ヴァン・デル・ロースト)例年福岡勢が代表を独占する事の多い九州代表ですが、今年は、このバンドが初出場のキップを手にしました。ビジュアルからしておそらく学生指揮だと思われますが、奏者との相性はバッチリで、なみいる巨匠の方々と比べても遜色の無い音楽を引き出していました。課題曲のイントロはバランスの悪さが気になりましたが、主題がスタートすると、伴奏とのバランスやテンポ設定も絶妙で、楽器間の受け渡しも見事でした。細かい動きが更にクリアになると、より音楽が立体的になっていたことでしょう。自由曲では、ソロ楽器の秀逸さが光っていましたが、全体を通して場面にあった音楽的表情が更に付くと、より感銘度が上昇した事でしょう。しかし、今回の演奏で初出場にして好印象を残したのは確かです。
5: 北海道支部 札幌地区代表 北翔大学吹奏楽団 (指揮:菅原克弘)7年ぶり2回目(前回は浅井学園として出場)銀賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:プラトンの洞窟からの脱出(S.メリロ)
和の世界を持った課題曲は、全体的に打楽器と管楽器のバランスが悪く、曲の持っているブレンドの妙を感じられなかったのか残念でした。中間部もやや歌い過ぎのきらいはありましたが、一方でハーモニーは安定し、美しい世界を作るのに成功していました。終盤は和のフレーズが持っている独特の「跳ねる」感が感じられず、やや物足りない印象になっていました。自由曲は全体を通して、更にアナリーゼ出来る部分があったのではないかと思いますが、サウンドはクリアで、輪郭のクッキリとした音楽に仕上がっていました。このサウンドに、更に艶が加わると、音楽に深みが出てくるのではないでしょうか。
7: 東北支部 宮城県代表 東北福祉大学吹奏楽部 (指揮:松崎泰)2年連続9回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
リヤン・エテルネル~浄められた天使たちの愛(八木澤教司) 課題曲は全体を通して音楽がストレートになりすぎた感があり、作曲者の意図がやや伝わりにくかったかも知れません。アンサンブルや音楽全体の流れは安定していましたが、まだまだアナリーゼの余地があったのではないかと思います。サウンドとしては中音域の充実が望まれるところでしょう。自由曲は、高音が不明瞭で、音楽の輪郭がぼやけていたのが残念です。ここでも、更なるアナリーゼの余地かあったように思われます。
10: 関西支部 京都府代表 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部 (指揮:若林義人)3年連続17回目銀賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
ハンガリー狂詩曲第2番(F.リスト/井澗昌樹)毎年課題曲に合せた配置(シフト)が話題になる龍谷大学。今年はあまり左右に拡がらず、奏者同士の幅を狭く取った配置が印象的でした。もともとオーケストレーションの薄い課題曲1番。その演奏にあたって、この配置は見事に功を奏していました。楽器同士の倍音が影響し合う事で、ひとつひとつの音色が骨太になり、オーケストレーションの隙間をうまい具合に埋める事で、ハーモニーが安定し、旋律の受け渡し等、音楽の流れも非常にスムースになっていました。1番をこの域にまで仕上げた手腕はお見事です。自由曲は、70年代にコンクールで流行した楽曲のひとつ。重厚なイントロからスタートし、各ソロ楽器の音色や表情も素晴らしく、旋律の際立った、好演だったと思います。個人的にはこのバンドの課題曲から自由曲への流れが、大学の部の中でも最もツボに来た演奏でした。今後もこうしたユニークな取り組みを自信を持って続けて行ってもらいたいなと思います。
12: 関西支部 大阪府代表 近畿大学吹奏楽部 (指揮:森下治郎)2年連続28回目銀賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
アルメニアン狂詩曲第一番(A.コミタス)鬼門の課題曲3番は、百戦錬磨のこのバンドにとっても鬼門だったようです。全体を通して、アンサンブルが不安定で、このバンドらしからぬ音楽展開に少々耳を疑いました。中間部はハーモニーも美しく安定し、歌い込みも充分でしたが、終盤はやはり雑然とした印象になってしまいました。アナリーゼ不足だったのか、逆にアナリーゼしすぎたのか、ブラックホールにはまった感は最後まで解ける事が無かったようです。自由曲は一転して、強固なアンサンブル力を発揮した好演でした。持ち前の重厚なサウンドも心地よく、弱奏の安定感もお見事。ソロ楽器も美しい世界観を紡ぎだして、全体的に高い演奏力を魅せていました。ただ、この楽曲が結局何をオーディエンスに伝えたかったのかが、いまひとつ見えてこなかったのが残念でした。
1: 東関東支部 茨城県代表 流通経済大学吹奏楽部 (指揮:花坂義孝)8年ぶり3回目銅賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
青い水平線(F.チェザリーニ)
3: 中国支部 岡山県代表 川崎医療福祉大学ウインドオーケストラハートフルウインズ (指揮:岩田俊哉)2年ぶり7回目銅賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
サウンド・アンド・スモーク(V.コウン)
9: 東海支部 代表 信州大学吹奏楽団 (指揮:荒井弘太)初出場銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
バレエ音楽「中国の不思議な役人」より(B.バルトーク/森田一浩)
職場一般・前半の部
1: 東京支部 東京都代表 東京隆生吹奏楽団 (指揮:畠田貴生)2年連続2回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
バレエ音楽「シバの女王ベルキス」より(O.レスピーギ/畠田貴生)ほどよくブレンドされたイントロからスタートした課題曲は、粒立ちの良いサウンドである事も相まって、前進力を感じさせる、心地よい音楽に仕上がっていました。楽曲へのアナリーゼも的確に施され、朝一番であることを全く感じさせない完成度の高いマーチでした。自由曲では、若干発音の不確実な部分が見られましたが、安定したハーモニーと、自然に受け継がれて行く旋律とのコラボレーションの前では、さほど大きな事ではないようでした。アンサンブルも緻密に仕上げられていましたが、サウンド的にやや中低音が物足りないかな、という印象でした。この辺が、暖まりきっていないホールの落とし穴なのかも知れません。
9: 東海支部 静岡県代表 ヤマハ吹奏楽団 (指揮:須川展也)3年連続37回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
エッセイ(高昌帥)
統合後、この部門の王者に座り続けている感のあるバンドの登場です。課題曲の冒頭から、非常に発音の美しいサウンドが次々に飛び出して来るのが、お気に入りのおもちゃ箱をひっくり返したかのようで、こうした音楽に触れられる事の幸せを感じさせてくれました。サウンドのバランスも申し分なく、奏者も含めて隅々までアナリーゼの施された、秀演だったと思います。自由曲においても、重厚なサウンドの中で、クリアに旋律を聞かせる手腕はお見事。ピッチやハーモニー等、少しも不安を感じる事の無いない、極上の12分間でした。
10:西関東支部 埼玉県代表 伊奈学園OB吹奏楽団 (指揮:宇畑知樹)2年ぶり5回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
パガニーニ・ロスト・イン・ウインド(長生淳) 2団体という代表団体数の制限の為に、全国大会に駒を進める事自体がひとつの目標になっている感のあるこのバンドですが、課題曲は、クリアなサウンドで、非常に冷静なマーチを演じていました。アンサンブルにやや乱れが感じられた部分もありましたが、流れていく音楽がそうしたものを帳消しにしていたようでした。自由曲は、確実なアンサンブル力と技術力が素晴らしく、安定してハーモニーと、ソロ奏者の流麗なサウンドに酔わせて頂きました。
13: 関西支部  滋賀県代表 大津シンフォニックバンド (指揮:森島洋一)2年ぶり12回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:響瀬の鹿(酒井格)
まず課題曲4番が圧倒的な名演でした。クッキリスッキリとしたサウンドによるイントロ、続く第一主題の木管楽器による旋律のコラボレーションは、楽器ごとのバランスを緻密に変化させながら、場面転換を図って行くという、まさに神業。更に個々の楽器の音のひとつひとつが美しく、そうした素材をより魅力的に合体させて出来上がったマーチの4番は、今年私が聞いた中でも最も理想的な完成度を持っていました。また、表舞台だけでなく、バッキングの正確さや、和音における緻密なバランス取りもお見事でした。アンサンブルの正確さは言うまでもありません。自由曲では、更に音楽か立体的に構築されていて、譜面に書かれている音符をひとつも無駄にしない心配りと、センスを感じさせる秀演でした。ソロ楽器の存在感も素晴らしかったと思います。
2: 東北支部 宮城県代表 名取交響吹奏楽団 (指揮:近藤久敦)3出休明け17回目銀賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
エニグマ変奏曲より、トロイト、ニムロッド、E.D.U(E.エルガー/近藤久敦)堅実なアンサンブルと、レンジの広いサウンドが心地よい音世界を作っていましたが、ややアンサンブルに乱れが見られ、左右の音楽にブレが見えていたのが少々残念でした。また、パーカッションのサウンドは、特に課題曲において興味深い工夫か見られていましたが、ややバランス的に音量過多だったかも知れません。後半にかけては、持ち前の大きな音楽を奏でる事に成功していたようです。自由曲は、ハーモニーの安定感が抜群で、重厚なサウンドに楽曲とアレンジがよくマッチした好演でした。随所て見られたエッジのあるサウンドも心地よい音楽の流れを作り出すのに成功していました。
5: 九州支部 福岡県代表 飯塚吹奏楽団 (指揮:谷口宗生)初出場銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
オリエントの光芒2012~ウインドオーケストラのために(片岡寛晶)課題曲は、アナリーゼ不足なのか、全体的にややまったりとした感じで、こもりがちのサウンドも相まって、輪郭の不明瞭なマーチになってしまいました。旋律も更にクッキリ感が欲しかったところです。自由曲はこのバンドの為の書き下ろし作品でしょうか。ここでもアンサンブルが雑然としていたために、やや主張に欠けた音楽になってしまいましたが、楽曲の世界観を奏者がよく理解しているのが伝わってくる熱演でした。サウンドにバリエーションが加わると、音楽の場面変化がよりクリアになるのではないてしょうか。
7: 北陸支部 福井県代表 ソノーレ・ウインドアンサンブル (指揮:佐藤正人)3年連続8回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
交響詩「ローマの祭」より 十月祭、主顕祭(O.レスピーギ/佐藤正人)
重厚なイントロからスタートした課題曲は、旋律がくっきりと表現豊かに奏でられる、色彩感のあるマーチに仕上がっていました。時折見られたアンサンブルの乱れは惜しいところです。自由曲は、ソロ楽器が安定し、音楽がよく整理された好演でした。個々の奏者の技術力も高く、音楽が前へ前へと進んでいく演出は見事でした。そんな中でも、音楽的に更なる高揚感が欲しかったところでしょうか。自由曲の終盤は、圧倒的な音圧でオーディエンスを圧倒した心地良いサウンドのシャワーを楽しませて頂きました。
8: 九州支部 佐賀県代表 佐賀市民吹奏楽団 (指揮:南里隆弘)3年連続15回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」(福島弘和)
シンフォニックなサウンドとよくアナリーゼされた音楽の展開が心地よい課題曲でしたが、アンサンブルが安定する一方で、サウンドにブレンド感がなく、音楽の流れがスムースに感じ取れなかったのが残念でした。後半はやや雑然とした印象も与えてしまったようです。自由曲は、バンドの重厚なサウンドが楽曲にマッチしていましたが、アンサンブルの精度が甘く、音楽的にも整理不足の感は否めなかったようです。そんな中でソロ楽器の音色やトゥッティにおけるサウンドの美しさなどは、オーディエンスを酔わせるのに充分なものを持っていました。
11: 関西支部 兵庫県代表 尼崎市吹奏楽団 (指揮:辻井清幸)2年連続28回目銀賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)重厚なサウンドが心地よい課題曲でしたが、ややアナリーブ不足かなという部分が見られ、旋律が不明瞭になる部分が散見されたのが残念でした。サウンドにも変化が欲しかったところです。パーカッションのバランスも更なる緻密さが欲しかったところでしょう。自由曲は、レンジの広いサウンドが楽曲の持つオーケストレーションの素晴らしさを再現するのに成功していました。個々の演奏力も高いものを見せていましたが、ここでもシーンに伴うサウンドの変化が欲しかったところです。
3: 東関東支部 千葉県代表 聖徳ウィンド・アンサンブル (指揮:井後基博)初出場銅賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:
交響組曲「もののけ姫」より(久石 譲森田一浩)
4: 中国支部 島根県代表 出雲吹奏楽団 (指揮:金本克康)3年連続14回目銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
ダンシング・イン・レイン(後藤洋)
6: 北海道支部 空知地区代表 滝川吹奏楽団 (指揮:鷲尾昌法)初出場銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:歌劇「トゥーランドット」セレクション~2007改訂版(G.プッチーニ/真島俊夫)
12: 四国支部 香川県代表 高松市民吹奏楽団 (指揮:金川公久)3年連続6回目銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
ディオニソスの祭り(F.シュミット)
 職場一般・後半の部
1: 西関東支部 埼玉県代表 川口市アンサンブルリベルテ吹奏楽団 (指揮:福本信太郎)2年連続16回目金賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
パッサカリアとトッカータ(福島弘和) 持ち前の重厚なサウンドと、発音の美しいサウンドが心地よい課題曲でしたが、若干音の粒立ちが甘い部分も見られたりしていたのが残念でした。しかし、程よい緊張感を持った好演で、アナリーゼを的確に施された音楽作りの緻密さは秀逸でした。中域のサウンドが更に安定すると、音楽がより立体的になるのではないてしょうか。自由曲では、ユニゾンの美しさが際立っていましたが、旋律を更に浮き立たせるアプローチが欲しかったような気がします。場面ごとにサウンドの変化も欲しかったところです。
3: 東関東支部 神奈川県代表 相模原市民吹奏楽団 (指揮:福本信太郎)2年連続6回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:交響的詩曲「地獄変」(福島弘和)
重厚なサウンドからスタートしたマーチでしたが、ややバッキングのリズムの刻みがぎこちなかったのが残念でした。しかし、全体を通して豊かなサウンドのシャワーが心地よいマーチに仕上がっていたと思います。自由曲では、安定したハーモニーがオーディエンスに心地良さを与えていましたが、更に旋律が浮き立って来ると、音楽全体が締まりのあるものになっていたと思います。終盤はやや雑然とした印象で、最後まで緊張感を保って欲しかったかな、という印象でした。
8: 東京支部 東京都代表 デアクライス・ブラスオルケスター (指揮:佐川聖二)2年ぶり2回目金賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
バイバイ・ヴァイオレット(井澗昌樹)この課題曲のイントロをバシッと決めるのはなかなか難しいようですが、管楽器が加わるとこのバンドの本領発揮という感じでエンジン全開になるのが心地よい好演でした。中間部、ややハーモニーにブレが見られたりしましたが、全体の音楽の流れがそれを凌駕していたようです。この曲の中間部は、歌い込み方に地方色が出ていて聞き比べが面白かったのですが、このバンドは大江戸温泉風、という感じだったでしょうか。一転して自由曲は、このバンドのカラーにハマった選曲で、緻密なアンサンブルと安定したハーモニーが心地よい秀演でした。サウンド的には低音が更に欲しかったところです。
11: 九州支部  福岡県代表 ブリヂストン吹奏楽団久留米 (指揮:塩谷晋平)3出休明け40回目金賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:オラトリオ「イワン雷帝」より(S.プロコフィエフ/榛葉光治)
指揮者が交代して初の全国大会。課題曲4番は、サウンドがやや開き気味で、その分雑然とした印象でしたが、音楽全体の流れが秀逸で、懐の広いマーチという印象でした。また全体を通して、骨太で重厚なサウンドに心地よさを感じる部分も、かいま見られました。一転して自由曲は、ダイナミックなサウンドの中で、緻密なアンサンブルと技術力の高さを誇る秀演でした。男声コーラスによるハミングも凛々しく麗しく、終盤は力業でねじ伏せた、という感じだったでしょうか。おそらく今年はサウンド転換の過渡期。地元開催となる来年は、その完成型に出会う事が出来そうです。
2: 北海道支部 札幌地区代表 ウィンドアンサンブル ドゥ・ノール(指揮:仲田 守)3年連続9回目銀賞
課題曲5:香り立つ刹那
自由曲:
よみがえる大地への前奏曲(鹿野草平)課題曲は、アンサンブルが全体的に雑然としている感じで、個々の楽器の粒立ちの悪さが目立っていたのが残念でした。また、細かいパッセージの乱れが、サウンドをこもらせる要因のひとつにもなっていたようです。自由曲は一転して、木管の豊かなサウンドと楽曲のマッチングが素晴らしく、トランペットのソロも流麗で、重厚な響きが音楽を存在感あるものに導いていました。ただ、トウィッティになるとサウンドも音楽も雑然とする部分が見られたほか、旋律の浮き立たせ方にも工夫が欲しかったところです。
4: 中国支部  広島県代表 NTT西日本中国吹奏楽クラブ (指揮:金田康孝)3出休明け45回目銀賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
華麗なる舞曲(C.T.スミス)歯切れのいいイントロからスタートした課題曲でしたが、ややアンサンブルが不安定で、躍動感に欠けたマーチになってしまいました。そんな中て、トリオから後半にかけては雄大なマーチを演出するのに成功していましたが、全体的に旋律をもっと聞かせる工夫が欲しかったところです。自由曲は、冒頭から躍動感溢れる音楽作りが心地よさを持たらしていましたが、全体を通して安全運転気味だったでしょうか。ユニゾンやハーモニーの美しさ安定感は心地よさを演出していましたが、特にこういう楽曲では攻めの姿勢に出る部分も聞きたかったところです。
6: 東関東支部 茨城県代表 古河シティウインドオーケストラ (指揮:福田昌範)2年ぶり2回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
セルゲイ・モンタージュ(鈴木英史)ダイナミックなサウンドを持ちながら、課題曲のイントロが平面的で、6/8の刻みがやや不安定だったのが残念でした。全体う通してサウンドの変化も乏しく、内声部に至るアナリーゼにもさらに突っ込んで欲しかったところでしょう。自由曲では一転して、安定したハーモニーからスタート。楽曲のイメージをよく把握した好演でした。ただ、ここでもシーンの変化に対してサウンドの変化が乏しく、音楽が平面的になってしまったようでした。高い技術力と説得力のあるレンジを持ったサウンドがあるのですから、音楽を自在に操る方法論を見いだせれば、一皮むけた音楽を奏でるバンドになることでしょう。
10: 東海支部 静岡県代表 浜松交響吹奏楽団 (指揮:浅田 享)2年連続11回目銀賞
課題曲1:さくらのうた
自由曲:交響曲第2番「キリストの受難」より(F.フェルラン)
課題曲の冒頭はやや繊細さに欠けていたのが残念でしたが、その後はハーモニーやアンサンブルも安定した心地よいバラードを作り上げていました。ただ時折雑然とする部分が見られたり、サウンドの表情にも更に変化が欲しかったところでしょう。そんな中で、サックスの麗しい音色等、個々の奏者の演奏力の高さが楽曲の感銘度を更に高めていたようです。自由曲は、それまでとは全く正反対のサウンドで勝負して来た、という感じでしたが、ややりすぎの感は否めず、音楽を立体的に演出してほしかったところです。特にトゥッティにおいて金属的なサウンドが散見されたりしましたが、そういう部分にこそ、サウンドに艶を与える方法論を実現させてほしいところです。
12: 東北支部 秋田県代表 大曲吹奏楽団 (指揮:小塚 類)3年連続15回目銀賞
課題曲4:行進曲「希望の空」
自由曲:
交響詩「ローマの祭」より チルチェンセス、主顕祭(O.レスピーギ/木村吉宏)スッキリとしたイントロからスタートした課題曲は、ユニゾンが美しく、旋律の際立った躍動感のあるマーチでした。ハーモニーも安定していましたが、打楽器はやや抑えすぎの感があったでしょうか。音面にもさらに表情の変化も欲しかったところです。自由曲は、冒頭からサウンドにエッジが不足気味で、ユニゾンの精度も低く、印象が散漫なスタートになってしまいました。中盤以降はアンサンブルも緻密になりソロも安定し、本領発揮といったところだったでしょうか。サウンド的には中音域のさらなる充実が望まれるところです。
13: 関西支部 大阪府代表 箕面市青少年吹奏楽団 (指揮:竹本裕一)初出場銀賞
課4:行進曲「希望の空」題曲
自由曲:
復興(保科洋)勢い余ってスタートした感のある課題曲でしたが、全体を通して、個々の演奏力の高さが光る好演でした。ただ、音楽的にはややアナリーゼ不足の感は否めず、ユニゾンにも更なる精度アップが望まれるところです。自由曲は、ユニゾンの響きと流れが美しく、アンサンブルの精度も高い、余裕を持った演奏でした。ただ、随所で雑然とした部分が見られたのも事実で、音楽的に繊細な表現を持った部分も欲しかったところです。中間部もオーディエンスを飽きさせない演出法があったのではないでしょうか。
5: 四国支部 高知県代表 鏡野吹奏楽団 (指揮:弘田靖明)2年連続20回目銅賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:
バレエ音楽「ガイーヌ」より (A.ハチャトゥリアン/W.V.D.ベーク、林紀人)
7: 北陸支部 福井県代表 福井ブラスアカデミー (指揮:奥野 一)初出場銅賞
課題曲2:行進曲「よろこびへ歩きだせ」
自由曲:
復興(保科洋)
9: 北海道支部  北見地区代表 北見交響吹奏楽団 (指揮:村本寛太郎)11年ぶり4回目銅賞
課題曲3:吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」
自由曲:交響詩「ローマの祭」より(O.レスピーギ/佐藤正人)