2014年第62回全日本吹奏楽コンクール
10月25日26日/名古屋国際会議場 10月18日19日/新潟市民芸術文化会館 (りゅーとぴあ)
 
中学校の部
前半の部
4: 東北支部 秋田県代表 秋田市立山王中学校 金賞 (指揮:木内恒)4年連続33回目
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
バレエ音楽「三角帽子」より 粉屋の踊り、終幕の踊り(M.ファリャ/天野正道)
客席もだいぶ温まって来たのか、非常にクリアなサウンドが会場に響きわたりました。音の存在感は非常に持ったバンドですが、全体を通して、ユニゾンの精度が甘く、全体のバランス的にもブレンド感が感じられなかったのが残念です。マーチとしても、6/8のリズムが不安定で、終始こちない流れになってしまいました。自由曲は、往年の吹奏楽ファンなら、一気に1975年にタイムスリップ゚してしまいそうな粋な選曲です。課題曲と比較すると、飛躍的にサウンドのバランスも、アンサンブルの精度もそのレベルを引き上げていました。特に中盤以降は、レンジの広いサウンドと躍動感いっぱいの音楽とのコラボレーションが、見事な化学反応を起こしていました。親子二代で、同じ楽曲により金賞を受賞しましたが、今の時代ならではの天野氏の見事なオーケストレーションも、華を添えていました。
8: 東関東支部 千葉県代表 松戸市立第一中学校 金賞 (指揮:栢木幸宏)初出場
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より(高昌帥)
非常にクリアなサウンドが鳴り響いてきた課題曲のイントロでしたが、サウンド全体としてブレント感がさらに欲しいかなという印象でした。しかし、個々の奏者の演奏力は高く、緻密なアンサンブルが心地よいマーチに仕上がっていました。そんな中で、チューバが時折発音ミスを見せていたのは惜しかったと思います。自由曲では、全く別の世界観を作り上げるのに成功していました。エッジのあるサウンドがこの楽曲にマッチしていて、精度の高いアンサンブルがそれを後押ししていたように感じられたのが、中学生としては驚きでした。旋律もしっかりと際立ち、全体の音楽作りも緻密で映像的でしたが、ここでも時折犯してしまう発音ミスが残念でした。サウンドのハランス作りも、特に、低音部に関して、細かく配慮してほしかった感じです。
9: 東海支部 三重県代表 鈴鹿市立白子中学校 金賞 (指揮:中山かほり)初出場
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
歌劇「蝶々夫人」セレクション(G.プッチーニ/大橋晃一)
非常によくブレンドされたサウンドからスタートした課題曲は、主題のハーモニーの重ね方など、今年聞いてきた課題曲4番の中でも、秀逸のアナリーゼが施された秀演でした。ただマーチそのものはやや重めなイメージで、随所でアンサンブルが崩れたり、発音ミスが散見されたのが残念です。自由曲は、冒頭こそユニゾンの精度が甘く感じられましたが、その後は高い精度を持ったアンサンブルと、重厚なサウンドが楽曲にマッチした好演になりました。終盤ではサウンドに温もりも加わり、感動的なクライマックスへと会場全体を導くのに成功していました。ただ、低音セクション、バストロあたりで破裂音が時折で顔を出していたのが、個人的な好みとしては、やや残念だったかなと思います。しかし、最後まで集中力を切らさない奏者の音楽力は見事でした!
10: 西関東支部 埼玉県代表 さいたま市立岸中学校 金賞 (指揮:星野悦子)2年ぶり3回目
課題曲
3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
歌劇「ばらの騎士」組曲より(R.シュトラウス/渚智佳)非常に安定したハーモニーを伴ったイントロからスタートした課題曲は、旋律が際立った、楽曲の世界観をうまく再現した好演でした。アンサンブルも緻密で、バランスもよく練られていましたが、発音ミスが散見されたのが、残念といえば残念。スネアのチューニングもこの楽曲には、やや違和感を感じました。自由曲は勇壮なホルンからスタートしますが、発音にはより正確さを求めたいところでしょうか。その後は、レンジの広いサウンドが心地よく楽曲の世界観を再現していましたが、ハーモニーに多少のブレが見られたり、旋律が埋もれてしまうなど、音楽がやや平坦になってしまっていたのが残念でした。持ち前のダイナミックなサウンドを生かす、更なるスキルアップに期待したいところです。
14: 東関東支部 千葉県代表 松戸市立第四中学校 金賞 (指揮:須藤卓眞)2年連続6回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
蒼氓愛歌〜三つの異なる表現で〜(清水大輔)
課題曲のイントロにおけるオーケストレーションは、やはりこの百戦錬磨のバンドでも苦労しているようでした。しかし、バランスのよいクリアなサウンドは、それまでの流れを払拭するような存在感で、アンサンブルの精度も高い秀演でした。ただマーチとしては、ややチューバの刻み等、リズムの流れが停滞気味だったかも知れません。終盤の木管の細かいパッセージの生かし方はさすがです。自由曲は、今年流行りの1曲になりましたね。バンダはこのバンドについてはステージ前方で行っていましたが、他のバンドと同じく、後方で行った方が、音楽のブレンド感としては効果的だったのではないかと思いました。その後は、緻密なアンサンブルと、個々の奏者の演奏力が高いレベルで合体した好演で、指揮者がバンドの音色と音量を自在に操っているかのような錯覚を覚えるほどの音楽力の高さを見せつけていました。
1: 関西支部 兵庫県代表 加古川市立浜の宮中学校 銀賞 (指揮:中原淳子)3年連続7回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
白磁の月の輝宮夜(樽屋雅徳)課題曲は、6/8の刻みが心地よいイントロからスタートしました。ただ、朝一番の出演順からなのか、全体的に中域の楽器がバランス的に弱めで、低音と旋律とリズムだけが際立つ、バランスの悪いサウンドになってしまったのが、残念でした。ピッチやハーモニーは安定していましたが、全体のブレンド具合もいま一つで、終盤はトロンボーンがやや音量過多かなという印象で、ホールの空気の流れにうまく音楽が乗り切らなかった感じです。自由曲は、男子生徒による和太鼓5人組の颯爽としたパフォーマンスを擁した好演でしたが、サウンドに更に艶が欲しかったかなというのと、低音楽器がやや弱めで、全体のバランスとしても、旋律が埋もれがちになっていました。やはり朝一番というのは、中学の体力では、なかなか凌駕する事が難しいようです。
2: 東京支部 東京都代表 小平市立小平第三中学校 銀賞 (指揮:澤矢康宏)2年ぶり10回目
課題曲3: 「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
ファントム・ドゥ・ラムール−幻影−(天野正道)イントロはややハーモニーが濁ってしまったでしょうか。その後は旋律が際立ったバランスのとれた好演でしたが、やや発音ミスが目立っていたのが、残念。また、少々大人の色気を付け過ぎたかも知れません。自由曲は、楽曲の世界観を的確に再現し、骨太なサウンドがよくマッチした好演でした。そんな中で、低音楽器、特にチューバはより、クリアな発音を求めたかったところです。SAXセクションのアンサンブルや、フルート、2人のオーボエ奏者の演奏は流麗で、これを土台に、金管楽器をどう艶やかにブレンドさせるか、その辺りが今後の課題となりそうです。演奏力そのものはもともと高いバンドなので、問題点はすぐにクリアして来るだろうと期待しています。
11: 東海支部 静岡県代表 浜松市立開成中学校 銀賞 (指揮:加藤幸太郎)2年連続2回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
イーストコーストの風景(N.ヘス)レアなサウンドからスタートした課題曲は主題のユニゾンの精度が甘く、金管と木管のバランスも悪いからか、やや焦点がぼやけた音楽になっていました。そんな中で、マーチのリズムを的確に引っ張った打楽器セッションの音楽的なパフォーマンスが好印象でした。全体を通して、特に金管の発音ミスが目立ったのは残念です。自由曲は、序盤の豊かな木管の響きが心地よい世界観を作っていましたが、もう一歩、細かいパッセージを揃えてほしかったところです。しかし、この辺りからサウンドも程よくブレンドされ、伸びのある高音ブラスのサウンドが効果的に音楽に色彩感をもたらしていました。リズム感も程よく、アンサンブルも安定を見せた自由曲の充実ぶりが印象的でした。特に、中盤のトランペットソロの音色の美しさには心洗われる思いがしました。
12: 中国支部 広島県代表 広島市立安佐中学校 銀賞 (指揮:岡田正文)2年連続2回目
課題曲1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
ウインドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥)今年も大会を通して演奏される頻度の少なかった課題曲1番。序盤からよく整理された、個々の演奏力の高い音楽を聞かせました。特にユニゾンの精度が高く、全体を通してもアンサンブルが安定した秀演だったと思います。やや打楽器がバランス的に強かったでしょうか。その分管楽器が全体的におとなしめに聞こえてしまっていたのが残念でした。自由曲においても、精度の高いアンサンブルは健在で、バランスのいいサウンドも相まって、相対的に質の高い音楽を演じきっていました。ただ、全体を通して、音楽がややあっさり目で、コントラストの付け方の工夫や、集中力を保った音楽の持続力や、音楽的な押しの強さみたいな主張も欲しかったところです。しかし、総じて音楽力の高いバランスの取れた好演だったと思います。
15: 北陸支部 福井県代表 鯖江市中央中学校 銀賞 (指揮:佐々木和史)18年ぶり2回目
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
信長〜ルネサンスの光芒(鈴木英史)クリアなサウンドでスタートしたマーチでしたが、サウンドは全体的に艶がなく、また6/8のリズムが重く、緩いマーチになってしまいました。他のバンドよりも遅めのテンポ設定でしたが、そのテンポならば、さらにタイトなサウンドと音楽を演じるアプローチが欲しかったところです。自由曲は、全体を通して、全ての音楽の要素が鳴り合ってる感じで、音楽的な整理がまだまだ必要だったのではないかなという印象でした。打楽器のバランスもこういう楽曲においてはさらに気をつかって欲しかったところです。全体的に個々の奏者の演奏力は高いという印象でしたが、そうした素材をどう生かすのか、全国大会においてはそうしたアプローチも求められる事でしょう。
3: 北海道支部 函館地区代表 函館市立戸倉中学校 銅賞 (指揮:杉山裕規)初出場
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
歌劇「蝶々夫人」より(G.プッチーニ/玉手道男)
課題曲のイントロは、サウンドが非常にレアで、鋭角的にかつストレートに客席に伝わって来ました。全体のバランスもいまひとつで、6/8のマーチのリズムもやや停滞気味だったでしょうか。楽曲全体としても、更なるアナリーゼの余地があるように感じました。場面ごとのメリハリも不足しがちで、終盤はアンサンブルも乱れ、雑然とした音楽になってしまいました。自由曲は、冒頭の速いパッセージは、より高い精度で合わせて欲しいかなという印象でした。全体としては、音楽の流れをよく掴んでいましたが、アリアの音楽表現など、まだまだ音楽的に追求できる余地はあったような気がします。また、ここでも場面ごとのサウンドの劇的な変化等、音楽にメリハリが欲しかったところです。
5: 西関東支部 埼玉県代表 川口市立神根中学校 銅賞 (指揮:星野清吾)初出場
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
三つのジャポニスム(真島俊夫)
課題曲のイントロはやや雑然となり、その後のマーチに入っても、アンサンブルが安定せず、終始重めのマーチになってしまいました。また高音部のピッチが悪く、サウンドとしても終始暗い雰囲気となり、発音ミスも散見されました。またマーチというカテゴリーでは、スネアのサウンド作りにも一考の余地があったのではないでしょうか。自由曲は、和の世界観を作り出すには到っていませんでしたが、映像的な表現力が心地よい音空間を作り出していました。ただ、ここでもソロ楽器のピッチ等不安定要素は多く、たとえばティンパニのマレットの選び方ひとつ取っても、研究研鑽の余地はまだまだあったのではないかと思います。中盤以降は持ち直して、サウンドや音楽も本領を発揮し始めた感じではありました。
6: 東北支部 福島県代表 南相馬市立原町第一中学校 銅賞 (指揮:阿部和代)2年連続7回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響詩「ドン・ファン」(R.シュトラウス/森田一浩)課題曲は、イントロから音がこもり、マーチの流れも悪く重い音楽になってしまいました。場面ごとのメリハリも足りなかったようです。また時折、音楽が作為的になってしまうのも、マーチというカテゴリーの中にあっては、少々違和感を感じました。さて、課題曲においては重いと感じたサウンドが自由曲では、その組み合わせの妙か、自由曲ではシュトラウスの世界観を的確に表現するのに成功していました。ただ、速いパッセージや付点音符の感じ方など、こうした音楽では欠かせない緻密なアンサンブルにはやや遠く、技術的な研鑽が望まれるところでしょう。また弱奏部分での安定感も培ってほしいところです。しかし、課題曲と自由曲で別バンドのような変身ぶりには驚かされ、終盤、自然で立体的な音楽が構築されて行くのに、ビックリさせられました。
7: 四国支部 愛媛県代表 松山市立南中学校 銅賞 (指揮:西村恵美)4年ぶり9回目
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より シャコンヌ(J.S.バッハ/森田一浩)課題曲は、颯爽としたイントロと前進力のあるマーチが心地よかったのですが、サウンドが全体を通してレアで、音楽が終始雑然としてしまっていたのが残念でした。全体の流れとしても、勢いだけではなく、細かい音楽構造の組み立てに時間をかけて取り組んでほしいところです。自由曲は、冒頭部分で頭がそろわず、緊張感が一気に緩んでしまいました。全体を通しても、音楽が平坦で、奏者は高い演奏力を持ちながら、非常に勿体ないなという印象を受けました。そんな中でも、自由曲ではハーモニーにも安定感が増し、終盤は心地よいトゥッティの応酬を楽しめました。
13: 九州支部 宮崎県代表 宮崎市立大淀中学校 銅賞 (指揮:川ア徹)29年ぶり4回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
ウインドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥)
課題曲は冒頭から集中力を欠いた感じで、全体を通しても重いマーチになってしまいました。サウンドそのものはバランスのとれた美しいものを持っていますが、マーチというカテゴリーの中にあっては、エッジのある部分や、音楽的な前進力が求められるところでしょう。自由曲になっても、そのサウンドカラーは変わらず一色で、強引に音楽を進めていこうという感じでしたが、1曲の中で、場面ごとに色彩感を変える等の工夫がやはり欲しいところです。アンサンブルにおいても、よりブレをなくす為にどうするべきか的な方法論を追求する必要があるでしょう。持ち前のサウンドを十分に生かすスキルアップが望まれます。
後半の部  
1: 西関東支部 埼玉県代表 越谷市立大相模中学校 金賞 (指揮:田中秀和)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
歌劇「道化師」より(R.レオンカヴァッロ/福島弘和)クリアで重厚な、心地よいサウンドでスタートした課題曲。6/8のマーチのリズム展開もすばらしく、しっかりとアナリーゼが施された秀演でした。オーケストレーション的なバランスも絶妙で、なんといっても、細かい装飾音符、トリオでの裏打ちの連符等、妥協のない音楽の積み重ねが結集した、今年のコンクールを通しても最高峰の課題曲2番だったと思います。自由曲でも、その粒断ちのよいサウンドは健在で、特にユニゾンの精度の緻密さ、音色の美しさ、ハリと芯も充分で、終始安心して音楽に身をゆだねることが出来たと思います。トゥッティも決してうるさくならず、豊かなサウンドを展開していました。全体を通して、更に音楽の情感のようなものが表現されると、音楽の質感がよりアップして行くのではないでしょうか。
4: 東海支部 愛知県代表 日進市立日進中学校 金賞 (指揮:清野雅子)3休明け5回目
課題曲
1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
交響詩「ローマの噴水」より(O.レスピーギ/清野雅子)
非常にエッジを持った、体力のあるサウンドでスタートした課題曲は、譜面に書かれている事を過不足なく表現する好演でした。ただ、時折音の処理が雑になったりする部分があり、より自然で豊かな音楽の流れや響きを追求して欲しいところです。また、細かい発音ミスも残念でしたが、音楽の要素のひとつひとつがしっかりと練り上げられ、組み立てられたアナリーゼの行き届いた演奏でした。自由曲はタイトで芯の通ったサウンドと音楽作りが秀逸でした。質の高い絶妙なアンサンブルも心地よい音空間を作り上げていました。そんな中で、トゥッティの響きが、鋭角的なものだけでなく、耳辺りのいい部分も欲しかったのと、トロンボーンのサウンドがややバンドから離反していたのが残念でした。しかし、全体を通して、ハーモニーも美しく響きわたる心地よい音楽のシャワーが会場いっぱいに降り注がれていた名演だったと思います。
9: 東関東支部 千葉県代表 柏市立酒井根中学校 金賞 (指揮:犬塚禎浩)3休明け10回目
課題曲
3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
彩雲の螺旋〜吹奏楽のための〜(中橋愛生)課題曲の冒頭のハーモニーはまるで水墨画のようなトーンで、その後の木管のユニゾンは、一人の奏者が演じているかのような緻密さ。この時点で全て持って行かれた感満載の課題曲でした。まさに活きた音楽を生で聴く事の素晴らしさを今年も体感する事が出来ました。そんな中で、打楽器セクションにおいてスネアが非常に冷静に音楽の組み立てに従って刻まれているのに比べて、他の楽器や特に鍵盤打楽器が、少々無神経に叩く場面があるように感じられたのが惜しかったと思います。自由曲は、隅々までアナリーゼが施された名演で、寸分のブレも感じさせないほどの集中力と、ユニゾンやアンサンブルの緻密さに脱帽の、聞く側にとってはこの上もなく幸せな12分間でした。個人的にはこのサウンドと演奏力によるアレンジものなんかも聞いてみたい感じはしました。
12: 関西支部 大阪府代表 大阪市立喜連中学校 金賞 (指揮:南由賀)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
歌劇「トゥーランドット」より(G.プッチーニ/後藤洋)やや速めの6/8でしたが、ユニゾンや木管のハーモニーが美しく揃った、タイトで芯の通った音楽とサウンドでした。ただ、その速めのテンポのせいか、終始淡々と音楽が進みすぎた感があったのが残念。時間に追われていたわけではないのであれば、最適なテンポの模索というのも求められるところです。終盤はアンサンブルにも微妙なブレが見られました。自由曲は、よく訓練されたアンサンブルと、伸びの良いサウンドが秀逸でしたが、全体的に音の処理が粗雑な部分が見られたのは残念です。しかし、この経験を経て、今後劇的にスキルアップして行くのでしょう。もちろん今回の演奏も、中学生としては高いレベルのスキルを持った演奏でした。
14: 関西支部 兵庫県代表 宝塚市立中山五月台中学校 金賞 (指揮:渡辺秀之)2年連続11回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン(鈴木英史)
以前までは、全体的にこもった曇りのあるサウンドというイメージでしたが、今年の演奏はそれを一新させる、クリアで重量感のあるサウンドに変身していました。6/8のテンポ設定とリズム感も素晴らしく、前進感のあるマーチに仕上がっていたと思います。アナリーゼもよく施されていましたが、ハーモニーが更にクリアになると、鬼に金棒となる事でしょう。更に、随所でのテンポの乱れと、発音やアンサンブルのブレもこの時間帯の演奏ならば完璧を目指したいところです。今年の中学の部は、マインドスケープとチンギスハーン祭りでしたが、トリもやはりチンギスハーン。演奏された同じ楽曲の中でも、よくアナリーゼが施された、楽曲の世界観を的確に表現した好演だったと思います。ユニゾンも緻密なだけでなく、しっかりと芯を持っているのが、音楽全体を大きく聞かせていました。またティンパニのサウンドが管楽器との兼ね合いの中で、溶け込んで一体化していたのも印象的でした。淡々とした音楽の流れの中にも、しっかりと主張を持った秀演で、中学の部を締めくくっていました。
2: 北海道支部 札幌地区代表 札幌市立白石中学校 銀賞 (指揮:多米恵理子)3休明け5回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
吹奏楽のための風景「陽が昇るとき」より(高昌帥)レンジの豊かなサウンドでスタートした課題曲でしたが、やや6/8のマーチに重さを感じました。旋律と対旋律とのバランス等にも一考の余地ありです。終盤は更なるアナリーゼによる音楽的な整理が望まれるでしょう。自由曲はファンファーレからのスタートでしたが、ハーモニーがすっきりとせず、譜面に書かれていた以上のアプローチも望まれるところです。その後は、緊張感を持った集中力で、ラストまで駆け抜けて行きました。個々の奏者の演奏力には高いものを感じましたが、それぞれの発音を細かく揃えたり、自然なフレージングを同じように感じさせる等、音楽をよりタイトに聞かせる方法論も必要なのではないでしょうか。
3: 中国支部 島根県代表 出雲市立第一中学校 銀賞 (指揮:段真大)3休明け42回目
課題曲
3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
交響詩「ローマの祭」より、五十年祭、十月祭、主顕祭(O.レスピーギ/森田一浩)非常にシンフォニックな響きを持ったバンドです。課題曲における譜面の再現力は抜群で、質の高いアンサンブル、旋律の聞かせ方を見せていました。和の旋律の歌い方も非常に自然なものを感じました。ただ、全体のサウンドのバランスや、テンポ設定など、大人がやらなければならない事を詰めきれないままに全国大会を迎えてしまった感じだったでしょうか。自由曲は弱奏部分におけるハーモニーの重ね方の不自然さをまず感じました。音楽的なメリハリもまだまだいくらでも付けられる余地はあったはずです。しかし、個々の奏者のレベルは非常に高いものがあり、冷静な音楽運びは中学生の域を超えている部分も感じられました。現在の指揮者は赴任一年目ですが、恵まれた素材をいかに着飾らせることが出来るのか、今後の手腕に期待したいと思います。
5: 九州支部 福岡県代表 福岡市立長丘中学校 銀賞 (指揮:菊地亨介)初出場
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶(福島弘和)ダイナミックでクリアなサウンドからスタートした課題曲ですが、音がややストレートすぎた感があり、より練られたサウンド作りが望まれます。マーチ自体は躍動感もあり、歯切れのいい刻みが心地よい世界観を作っていました。ただ、少々アナリーゼ不足の感は否めず、音楽的に細かい整理を施してほしかったところです。自由曲は、全体を通してアンサンブルの精度がすばらしく、楽曲の持つ世界観を的確に表現した好演でした。しかし、タンギングが非常にきれいなサウンドという印象のある演奏力を持つ一方で、音楽が場面場面でブツ切れて行くのが残念でした。音楽をいかに流れを持って紡いでいくか、この辺りは賞の色を棲み分ける境界線のひとつです。
7: 九州支部 福岡県代表 福岡市立香椎第三中学校 銀賞 (指揮:井手憲一)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
大いなる約束の地〜チンギス・ハーン(鈴木英史)元気溌剌とした課題曲のスタートでしたが、全体的に音の処理が粗雑で、終始全ての楽曲のパーツが鳴り合っている感じで、より細かな音楽的整理を施してほしかったところです。旋律と対旋律のバランス等もいまひとつで、おそらくテンポの速さが全ての音楽的な処理を粗くしてしまったのではないでしょうか。自由曲は音像がクリアに見える、個々の演奏力の高さのわかる好演でしたが、トゥッティではやや音の濁りが感じられ、音楽の組み立て自体にも更なるアナリーゼの余地があったようです。また打楽器は叩いてアクセントを付けるのが目的ではなく、音楽に彩りを添える手段だという方法論で臨んでみてはいかがでしょうか。
8: 中国支部 山口県代表 防府市立桑山中学校 銀賞 (指揮:中村武司)3年連続10回目
課題曲
3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
喜びの島(C.ドビュッシー/真島俊夫)人数が少ないながら、通りの良いハーモニーでスタートした課題曲でしたが、全体的にピッチがやや不安定で、ユニゾンにもブレが見られました。しかし、旋律の歌い方等は自然で、歯切れのいい和の世界観をうまく表現していたと思います。ただ、管楽器の音量に対して、打楽器がやや強めだったでしょうか。その辺りのバランスは人数が少なくなればなるほど、難しくなって来るのでしょう。自由曲は、その人数の少なさを逆手に取った選曲で、ハーモニーが美しく、発音がクリアな好演でした。ドビュッシーの世界観もよく表現していましたが、やや音楽が平坦だったかなという印象です。しかし、人数が少なくなると個々の奏者の演奏力が問われるわけですが、その辺りは非常に安心して音楽に身を委ねる事が出来ました。
10: 東京支部 東京都代表 玉川学園中学部 銀賞 (指揮:土屋和彦)2年ぶり12回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
カントゥス・ソナーレ(鈴木英史)非常にクリアなサウンドによる心地よいマーチのスタートでした。6/8のリズムもうまく再現され、メリハリも感じられる好演だったと思います。更にユニゾンの精度が増すと、旋律が浮かび上がる質の高い音楽に到達できるのではないかと思います。しかし、管楽器のバランスや打楽器とのバランスなどは絶妙で、東京都大会からの成長の素晴らしさを感じました。自由曲は、弱奏のハーモニーも美しく、コントラストがハッキリした好演でしたが、後半やや息切れしたのか、サウンドの体力が不足して聞こえて来ました。中間部も更なる色付けが欲しかったところです。しかし、ソロ楽器の響きも流麗で、しっかりとした主張を持った世界観を再現していたと思います。
13: 北陸支部 福井県代表 坂井市立三国中学校 銀賞 (指揮:武井晋)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
ルイ・ブージェワーの賛歌による変奏曲(C.T.スミス)課題曲は適度に前進力を持った、テンポ設定も絶妙な好演でした。北陸のバンドらしく、トランペットを中心とした金管楽器の響きが美しく、管打楽器全体のバランスもしっかりととれていたと思います。そんな中で、所々でややアンサンブルや発音にブレが見られたのが残念でした。しかし、明るくてクリアな前向きのサウンドは心地よく響いてきました。自由曲は技術的な難曲に挑んできました。が、やはり中学生の体力では、特に速い細かなフレーズはアップアップで、それが発音のミスやブレに繋がってしまいました。しかし、コラールの美しさ等、キラリと光る部分をいくつも持ったバンドで、こうしたチャレンジ精神を失わず、演奏する側も聞く側も楽しめる音楽の追求を今後も続けて行ってほしいと思います。
6: 四国支部 香川県代表 高松市立屋島中学校 銅賞 (指揮:井上智司)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
大いなる約束の地〜チンギス・ハーン(鈴木英史)
クリアでまとまりのあるサウンドを持っているバンドですが、全体的に音色がストレートでレアな感じを受けました。個々のパートにおいて最も美しい響きを常に追求して行くことも大切だと思われます。また、6/8としてはややケンポ設定も速かった感じで、せわしないマーチになってしまいました。細かいフレーズも埋もれがちでしたが、旋律の歌い方は自然で好感が持てました。自由曲では、その世界観をよく理解した演奏になっていましたが、ややアナリーゼ不足の感は否めず、聞かせ所が焦点ボケになってしまいました。そんな中で、旋律の歌い方や、ハーモニーの作り方は自然で、心地よい流れを作り出していました。
11: 東北支部 岩手県代表 盛岡市立北陵中学校 銅賞 (指揮:吉田哲)初出場
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
スペイン奇想曲より(N.リムスキー=コルサコフ/高橋徹)課題曲の冒頭は、非常にストレートでレアなサウンドという印象で、全体のバランスも、低音楽器がやや強めかなという印象でした。マーチの裏打ちもピッチがやや不安定で、全体的に前進力を欠いた音楽になってしまいました。しかし、トランペット等、高音楽器の響きは美しく伸びやかで、そのサウンドを中心に、それぞれの楽器のサウンドをより美しいものに仕上げて行く事が今後の課題ではないでしょうか。奏者の演奏力は高いので、それを生かす聞かせるサウンド作りが望まれます。自由曲は、山王中に続いて東北から懐かしい選曲が届きました。全体的に律儀な音楽を演じているという印象でしたが、アンサンブルがやや雑で、細かいフレーズが浮足立っていたのが残念でした。しかし、SAXセンクションによるカデンツァやフルート、クラ、オーボエのソロ等、キラリと光る部分をいくつも持った、今後が楽しみなバンドです。因みに要らない情報ですが、この学校とはホテルが一緒でした(笑)。
高等学校の部
前半の部
1: 東関東支部 千葉県代表 柏市立柏高等学校 金賞(指揮:石田修一)3年連続25回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ(天野正道)課題曲の冒頭から朝一番とは思えない、がっつりサウンドでマーチがスタートしました。細かい部分では、サウンドがストレート過ぎる印象があったり、アンサンブルが微妙に噛み合わない部分も見られた訳ですが、全体を通して、よくアナリーゼが施された、この楽曲の完成型を呈示することが出来たのではないかと思います。トリオ前のシンバルのクレシェンドはいつもながら、味な演出です。自由曲は、麗しのハーモニーとアンニュイな旋律の絡みが心地よく、このバンドのサウンドの安定感を遺憾なく響かせていました。ソロ楽器や主メロを担当する楽器に関しては、横揺れの艶やかな揺らぎが欲しかったところですが、そこは高校生らしく直情型だったのが、この楽曲における完成度としての物足りなさだったでしょうか。まあ、実際高校生ですし・・・・。彼らが大人になってまたいつかこの曲をこのメンバーで合奏する時があったら、そのときの年齢ならではの音の横揺れを感じ合い、このタイトルの意味についても、語り合う事が出来るのかも知れません。それにしても長丁場のトップバッターから、非常にタイトで主張を持ったサウンドと音楽を堪能させて頂きました。
7: 東海支部 愛知県代表 愛知工業大学名電高等学校 金賞(指揮:伊藤宏樹)2年連続37回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
復興(保科洋)
課題曲のイントロはやや粗雑かなと思えるものでしたが、どうやらこれは東海地区のマーチの在り方の特徴のようですね。その後の木管のユニゾンは見事に一体化して芯のあるサウンドとなり、非常にスムースな流れを持ったマーチに仕上がっていました。全体を通して、旋律が際立ち、場面ごとのサウンドの変化もお見事。やや音楽や音色が幼いかなと感じる部分も見られましたが、ほど良くアナリーゼされた好演だったと思います。自由曲の冒頭は、超pppからスタートしましたが、BDのロールが冒頭全く聞こえず、これはちょっとやりすぎかなという印象でした。そんな中で、クラのユニゾンは緊張感をうまく描きだすのに成功していたと思います。その後は、高いアンサンブルを伴った秀演で、楽曲の持つ世界観を充分に呈示していました。トゥッティのサウンドがやや固すぎるかなという印象でしたが、終盤は旋律の浮き立たせ方もお見事で、復興への導線は見事に完成を見せていたようです。
8: 北海道支部 札幌地区代表 東海大学付属第四高等学校 金賞(指揮:井田重芳)3年連続32回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より(高昌帥)ほどよくブレンドされたサウンドが心地よいイントロからスタートした6/8のマーチは、ややテンポ設定が早めでしたが、サウンドも音楽もマーチも高度な安定感を持った秀演でした。ユニゾンの統一感、ハーモニーのブレの無さや、旋律と対旋律の絡みも高みを極める努力の跡がありありで、コメントをはさむ余地の無い音楽を作り上げていました。ただ、時にサウンドに叩きつけるような部分が若干見られたのだけが、残念だったでしょうか。自由曲ではフルートのソロが音楽の世界観を一転させるのに成功し、その後のトゥッティに凝縮された奏者たちの凄まじいパワーと思いに圧倒されました。アンサンブルの確かさは勿論、旋律や細かいフレーズのひとつひとつを過不足なく紡いで行った音楽進行力には脱帽です。一カ所、頭が揃わずにヒヤリとさせられた部分もありましたが、演奏が終わってみたらそんなことを語る事自体が無意味なほどの、名演が誕生していました。
12: 九州支部 熊本県代表 玉名女子高等学校 金賞 (指揮:米田真一)3休明け6回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
森の贈り物(酒井格)豊かなサウンドによる課題曲のイントロでしたが、やや音質が固く、平板なハーモニーになってしまいました。木管のユニゾンは美しいサウンドを作り出していましたが、ややその精度は甘かったでしょうか。またらしからぬ発音ミスが散見されたり、要所要所でテンポがブレるために音楽が停滞してしまうのも気になりました。全体の合奏では、クリアなサウンドを作り上げていましたが、更にトゥッティのサウンドがスッキリすると、鬼に金棒となる事でしょう。自由曲は、絶妙な湿り感を持った木管サウンドを生かした選曲で、楽曲の世界観を的確に演出しています。随所に登場するトランペットは、高い演奏力を持っていますが、やや木管群に埋もれてしまいがちで、更に突き抜けるようなエッジと艶と輝きが加われば、そのサウンドの心地よさが飛躍的にアップするのではないでしょうか。全体を通して、やや安全運転なテンポ設定でしたが、音楽で森林浴出来るのではないかと思うほどの音空間の組み立てはお見事でした。
2: 中国支部 岡山県代表  岡山学芸館高等学校 銀賞(指揮:中川重則)3休明け12回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
宇宙の音楽(P.スパーク)もう何年もこのバンドのサウンドを聞いていますが、今回はその出演順のせいもあってか、全体的に艶のない、無機質なサウンドになっていたのが残念でした。課題曲はサウンドのバランスが悪く、ブレンド感がいまひとつで、音楽のベクトルが曖昧になっていた印象で、場面転換がスムーズにいかず、音楽が細切れになっていました。勿論、個々の奏者の高いレベルでの演奏技量をクリアした上での話ですが・・・・。自由曲は、短い課題曲を選んだにもかかわらず、冒頭からホルンのソロがせわしなく、ビッグバンへの導線がやや曖昧なものになってしまったようです。全体を通してグレードの高い楽曲をそつなく演奏しているわけですが、いろいろなものを詰め込みすぎて、焦点がぼやけてしまった印象です。しかし、序盤のアグレッシブなブラスの回転音、ハルモニアの高尚なコラールとファンファーレ、終盤の精密なアンサンブル等々、もう一度違った場で違った時間帯に時間制限なく聞いてみたい演奏だったのは確かです。
3: 東関東支部 千葉県代表 習志野市立習志野高等学校 銀賞(指揮:石津谷治法)3年連続28回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
バレエ音楽「眠りの森の美女」より(P.I.チャイコフスキー/石津谷治法)柏〜学芸館〜そして習志野と、サウンドが少しずつまろやかになって行く面白さを堪能しました。イントロからマイルドで心地よいサウンドでスタートしたマーチ、まろやかながらも爽やかですがすがしい印象でしたが、その中でホルンの攻撃的な攻め方がやや違和感を感じさせていました。サウンドのバランスも崩してしまった感じです。トリオでは珍しく、アンサンブルが不安定で、マーチにブレが見られたのは残念です。終盤もいつものこのバンドらしからぬ、雑然としたものになってしまいました。自由曲は、更にシンフォニックなベクトルがサウンドに加わりましたが、導入部はまろやかな中にも、更にエッジが欲しかった感じで、細かいフレーズが不明瞭になってしまいました。オーボエのソロは、位置的にボリューム感が無く、勿体ない感じでした。全体を通しては、レンジの広いシンフォニックなサウンドと、木管群のアンサンブルの流麗さが光っていましたが、今回はやや詰めの足りなさを感じました。
4: 西関東支部 埼玉県代表 春日部共栄高等学校 銀賞(指揮:都賀城太郎)3年連続10回目
課題曲5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
アッフェローチェ(高昌帥)一転して、持ち前の非常にクリアで重厚なサウンドを轟かせたのは春日部共栄高校。サウンドだけでなく、音楽のベクトルも同じ方向を向いているからか、非常にタイトな響きにまずは圧倒されました。アナリーゼもしっかりとなされている印象で、音楽に持続力があるのが、このバンドの紡ぎだすサウンドの特徴でしょう。更にサウンドの色合いの変化が複雑に絡み合って来ると、こういった楽曲の真骨頂に達するのではないでしょうか。課題曲は、ブレの無いオーボエのソロからスタート。このバンドの木管セクションの美しいサウンドをよく生かしたアンサンブルに魅了されました。その後の低音楽器群による速いパッセージのユニゾンは、オーケストレーションもあってか、やや不明瞭になってしまっていたのは残念。その後も金賞バンドと遜色無い、あるいはそれ以上の高い演奏力を如何なく轟かせていましたが、楽曲がそのレベルに見合っていなかったかな、という印象も持ちました。このサウンドを更に輝かせてくれる楽曲の出逢いに期待したいところです。
5: 東海支部 愛知県代表 光ヶ丘女子高等学校 銀賞(指揮:日野謙太郎)4年連続13回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
歌劇「ばらの騎士」組曲(R.シュトラウス/仲田守)非常に硬質なサウンドで、破壊力の大きなイントロからスタートした感のあるマーチでした。全体のサウンドのバランス、打楽器の叩き方、時折見られる叩きつけるようなサウンド、このマーチを的確に演奏するにはややオーバーアクション、オーバー・フロウかな、という印象でした。自由曲冒頭は、勇壮なホルンからスタートしますが、ピッチがやや揺らぎ気味だったでしょうか。その後も高い演奏力で、シュトラウスの世界観を辿っていきましたが、全体を通してサウンドがバラけ気味だったのは残念。音量を意識するのではなく、持ち前のサウンドを音色を更に磨いて行く方向に練習のベクトルを向け直せば、ガラリとその音楽が美しく変貌するのではないかと思いました
11: 東京支部 東京都代表 東海大学付属高輪台高等学校 銀賞(指揮:畠田貴生)3休明け9回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
バレエ音楽「白鳥の湖」第4幕より、間奏曲・情景・終曲(P.チャイコフスキー/畠田貴生)持ち前のゴージャスなイントロからスタートした課題曲は、木管のユニゾンの精度が素晴らしく、ひとつひとつの要素やともすれば隠れがちなハーモニーを見つけてしっかりと再現するという、高度なアナリーゼが施されていました。トリオで若干アンサンブルに細かいブレが見られましたが、全体を通して、サウンドのバランスも素晴らしく、緻密に音楽が組み立てられたマーチだったと思います。このバンドの為にアレンジされた自由曲は、木管のアンサンブルからスタート。細かいパッセージから、複雑なフレーズまでしっかりと紡がれ、歌い込まれた極上の世界観を演出しています。ここでもユニゾンの精度が高く、ソロ楽器も安定し、最後まで集中力が途切れる事のない、名演だったと思います。クラシックの名曲を、吹奏楽ならではのベクトルでアレンジした完成度の高い音楽でした。
13: 中国支部 山口県代表 山口県立防府西高等学校 銀賞(指揮:野上慎二郎)2年連続3回目
課題曲
3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
パガニーニ・ロスト・イン・ウィンド(長生淳)芯の通ったサウンドからスタートした課題曲は、音楽を追うごとに変化して行くサウンドの変容が素晴らしく、こうした世界観を持つ楽曲に相応しい演出でした。同じ事の繰り返しでも、絶妙にそのバランスを変化させて音色を変えて行く手法はお見事です。全体を通して、しっかりとアナリーゼが施された質の高い演奏でしたが、中間部において、やや洋風な和という感じになってしまったのが勿体なかったでしょうか。終盤は、持ち前の精度の高いアンサンブルが心地よい、秀演でした。自由曲は世界観を一転して、美しい木管のアンサンブルからスタート。このバンドは木管金管共にサウンドや演奏力の質が高く、ブレンドされた音楽が、譜面に書かれている以上の心地よさを感じさせてくれるのが魅力です。2年前に中国大会で聞いたブラームス作品も非常に上質な音楽に仕上げていましたが、個人的にはそういう作品の方がバンドのサウンドに会うのではないかな、と思いました。
15: 関西支部 大阪府代表 大阪桐蔭高等学校 銀賞(指揮:梅田隆司)2年連続7回目
課題曲3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
歌劇「キャンディード」より、序曲、ウェストファリア賛歌、死刑宣告、我らの庭を育てよう(L.バーンスタイン/C.グランドマン)課題曲の冒頭は、例年に比べてサウンドのレンジが狭いかなあ、と思いながら聞きました。しかし、いわゆる登場感をしっかりと持ったイントロで、それに続く場面でも緻密なアンサンブルと、精度の高いユニゾンが、上質な音楽を作り上げていました。そんな中で、打楽器のバランスがやや強すぎる感じがあり、管楽器のサウンドをつぶしてしまう場面が散見されたのが残念です。旋律と対旋律のバランスももっと細かく取り計らう演出がほしかったところでしょう。しかし、全体を通しては、勇壮な響きを持った好演だったと思います。自由曲でも、その緻密なアンサンブルは健在でしたが、ここでも、打楽器とのバランスが悪く、全体としても叩きつけるようなアプローチが時折見られたのは残念。トゥッティなどでも更なるサウンドの伸びが欲しかったところです。しかし、ハーモニーなどは異常なほどにクリアで、質の高い演奏力を持ったバンドであるのは間違いありません。
6: 四国支部 愛媛県代表 愛媛県立伊予高等学校 銅賞 (指揮:長谷川公彦)3休明け21回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響曲第5番 嬰ハ短調より、第5楽章(G.マーラー/田村文生)イントロはサウンドのブレンド具合が悪いのかややスッキリさを欠いてしまいましたが、主題のユニゾンは美しく、マーチの前進力をしっかりと保った好演でした。時に、ややリズムと旋律のノリがズレる部分がありましたが、歌心を感じさせる心地よいマーチに仕上がっていたと思います。そんな中でこうしたマーチの場合には、ケアレスミスは最小限にとどめたいものです。自由曲は、弦楽器が必須とも言われるマーラー作品の吹奏楽版に、コンクールで挑戦して来ました。がしかし、今年のサウンドは中域低域のサウンドがやや不足気味なのと、倍音があまり感じられず、楽器と楽器の隙間がありすぎるためか、楽曲の持つ世界観を呈示するまでには至りませんでした。こうした楽曲を演奏する上でのサウンド作り、そして配置の妙も含めて、やるべき事はまだまだあったのかな、という印象です。しかし、こうした取り組みは、個人的には拍手喝采で、是非今後もチャレンジして行って欲しい路線だなと感じました。
9: 北陸支部 福井県代表 福井県立武生商業高等学校 銅賞(指揮:植田薫)2年連続2回目
課題曲5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
ウインドアンサンブルのためのコンチェルト(S.ブライアント)課題曲は、やや軽めのサウンドでスタートしました。全体的にアナリーゼ不足の感じは否めず、焦点がぼやけた音楽になっていたのは残念。ハーモニーのバランスの取り方、独立したフレーズはハーモニーの一部なのか旋律なのか、効果音的要素との絡みはどうするのか等々、まだまだ詰めて行く要素はあるような印象でした。課題曲が終わると、全員が立ち上がって配置チェンジを行ったので、会場はやや沸いていました。コアな時代のジャズを再現したような楽曲とでもいう感じでしょうか。普段から、ジャズやファンクに取り組んでいると思われるバンドだけに、リズムへのノリに違和感が無く、素晴らしい4ビートの世界観を作り上げていました。ただ、コンクールという場では、楽しさや面白さだけでなく、こうした楽曲をいかにスッキリと整理して聞かせるか、というアプローチも欲しかったような気がします。
10: 九州支部 福岡県代表 福岡工業大学附属城東高等学校 銅賞(指揮:武田邦彦)3年ぶり28回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
復興(保科洋)課題曲のイントロはハーモニーが濁り、クリアさに欠けてのスタートとなりました。その後も全体的にピッチがフラット気味の楽器があるからか、音程感が安定せず、このマーチの持つ晴れやかさすがすがしさを演出する事は出来ませんでした。また、楽曲のひとつひとつの要素をなんとなくテンポに合わせて繋いでいく感じで、トリオ明けのファゴットとバリトンサックスのバランス等、細かい部分にも気をつかって欲しかったところです。自由曲は、冒頭部分での緊張感が演出できなかったようですが、課題曲に比べると音程感は安定を見せていました。豊かな音量と個々の奏者の高い技術力を持ったバンドですが、その要素を最大限に使って、緻密に音楽を積み上げていく取り組みも必要なのではないでしょうか。底力を持っているバンドなので、次なるアプローチに期待したいと思います。
14: 東北支部 福島県代表 福島県立湯本高等学校 銅賞 (指揮:橋本葉司)4年連続10回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響曲第1番 へ短調より、第4楽章(D.ショスタコーヴィチ/高木登古)課題曲は非常にストレートなサウンドのイントロでしたが、ややアンサンブルが雑然としてしまったように感じました。主題のユニゾンもいまひとつ精度が甘く、音楽の焦点がぼやけてしまった印象です。マーチのテンポやリズムはいいのですが、トリオになってもサウンドの変化がなく、全体を通して平坦な音楽になっていたのが残念でした。旋律の歌い方にしても、更に高校生ならではのアプローチが出来たのではないかと思います。さてさて昨今は、全国的に賞狙いの選曲が目立ちますが、まあそれはそれで悪い事ではないとして、福島県のバンドは意欲的な選曲、編曲にチャレンジする姿勢に素晴らしさを感じます。今回の自由曲も、アンサンブルがどうだとかユニゾンの精度がどうだとか、いろいろ言い始めればキリが無いわけですが、吹奏楽によるこういう楽曲のアレンジを聴く場を与えてくれたその姿勢に敬意を表したい、そんな気分で、楽しく興味深く聞かせて頂きました。そしてめくるめる音楽とサウンドの心地よいシャワー心ゆくまで堪能させて頂きました!
後半の部
6: 九州支部 福岡県代表 精華女子高等学校 金賞 (指揮:藤重佳久)4年連続19回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
華麗なる舞曲(C.T.スミス)課題曲のイントロから、焦点の定まったタイトなサウンドが会場の空気を引き締めていました。主題のユニゾンは絶品で、その後の金管の重ね具合の推移まで実に計算され尽くしたマーチに仕上がっていました。トリオでのサウンドの変化もお見事。非常に清楚で、艶やかな音空間を伴った、爽快なマーチが、会場の空気感をプラスのベクトルに導いたようでした。そういえば、冒頭の方で上手からシンバルがガシャンと倒れる音がしましたが、全く動揺する事なく、いい意味で淡々とマーチを刻んでいた集中力もお見事です。さて、前回のリベンジとして選曲された自由曲、華麗なる舞曲。冒頭から、タイトに細かいパッセージを刻んでいくバンドの実力を、万遍なく披露する展開を見せた前半でした。中盤のソロ楽器もそれぞれの役割をしっかりと果たしていましたが、ピッコロトランペットのソロがうまくいかず、直後は全体のサウンドも負のベクトルを見せかけました。がしかし、仲間のミスを挽回しようと団結した奏者全員の「気」がそこから炸裂!管楽器のサウンドがクリスタルに輝くような科学反応まで起こし、ラストは圧巻のグルーヴ感を見せ、オーディエンスの大喝采を浴びていました。
8: 東関東支部 神奈川県代表 横浜創英中学・高等学校 金賞 (指揮:常光誠治)3年ぶり7回目
課題曲3:「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
ルイ・ブージョワーの讃歌による変奏曲(C.T.スミス)
課題曲の冒頭は、重厚でクリアなサウンドがその登場感を高めていました。その後の旋律は、もっとサウンドに変化が欲しかったところですか、イン・テンポになってからの旋律の歌い方、バッキングの安定感はお見事でした。パートを超えたハーモニーのコラボレーションも完璧です。埋もれがちなその後の旋律群もしっかりと再現され、音楽的に充実した課題曲だったと言えるでしょう。全体を通して、気をてらわない正攻法の音楽が、好感度大だったのではないかと思います。和の旋律の歌い方もよく考えられていました。テンポは若干速めだったかも知れません。自由曲は過去の選曲のイメージを払拭する、スミス作品に挑戦。打楽器のキラキラサウンドと管楽器のブレンドが心地良く、その後のコラールは、教会の中にいるかのような心地よさを演じていました。中盤以降は、時折集中が切れるのか、発音ミスやバランスの悪さも見せていましたが、「今年こそは」という「念」の強さはそれを上回っていたようで、ラストのオルガントーンも力強く、やり切った感満載のエンディングに圧倒されました。
13: 関西支部 大阪府代表 大阪府立淀川工科高等学校 金賞 (指揮:丸谷明夫)4年連続35回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り(M.ラヴェル/立田浩介)
このところ、マーチが不調な印象のあったこのバンドでしたが、今年の課題曲は、奇をてらわないスムースなイントロから、自然な旋律の流れ、そして歯切れのいいサウンドが心地よいマーチに仕上げて来ました。トリオは、やや発音ミスが散見されたり、サウンドがこもったりする部分も見受けられましたが、総じて、前進力を持った、流れのあるマーチに仕上がっていたと思います。自由曲は十八番の1曲の再演です。終始木管が細かいパッセージを余すところなく再現していたのには脱帽で、ハープの使い方も前回のダフニスの時に比べると、上質なものを感じさせていました。ただ、夜明けのクライマックスでは、更にサウンドに艶が欲しかったところです。全員の踊りは、やや息切れ感が随所に見られ、力業で押し通して行こうという部分が見られたのが残念で、打楽器も全体のバランスを崩していました。がしかし、総じて流れをしっかりと維持した好演だったと思います。
14: 東京支部 東京都代表 東京都立片倉高等学校 金賞 (指揮:馬場正英)2年連続11回目
課題曲5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
時の跳ね馬〜吹奏楽のための(中橋愛生)全日本の新潟大会で片倉チームの面々をお見かけしましたが、そこで数多く演奏された課題曲をしっかりリサーチ、アナリーゼして来たのか、東京都大会の時に比べると、その精度はアップし、新たなアプローチが楽曲を更にクリアに、立体的に演出する事に成功していました。このバンドはなんと言っても、奏者たちの演奏力のクォリティの高さが絶品です。この楽曲に内包されたひとつひとつの細かい要素を余すところなく導き出し、高レベルのアンサンブルで味付けをする演出に、しっかりと応えているのが素晴らしいところです。自由曲は、今年のこのバンドの委嘱作品。タイトルの時の跳ね馬は「指揮台で跳ねる(ジャンプする)馬」つまりこのバンドの指揮者の事を表しているんだそうです。楽曲としては科戸とハリソンが合体したようなイメージでしょうか。東京都大会で聞いたときは、打楽器と管楽器のバランスの悪さが気になりましたが、名古屋では見事に修正してきました。その適応能力もお見事!今年のコンクールの大トリを、きらびやかで骨太な極上のサウンドで締めくくってくれました。
1: 西関東支部 埼玉県代表 埼玉栄高等学校 銀賞 (指揮:奥章)2年連続23回目
課題曲1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
歌劇「蝶々夫人」より(G.プッチーニ/宍倉晃)しっかりとブレンドされ、持ち前の芯のあるサウンドでスタートした課題曲でしたが、冒頭やや発音ミスが散見されたのは残念。しかし、その後は、安定したサウンドと、緻密なアンサンブルが心地よい世界観を演出していました。しかし、この課題曲はバンドの持っている力を発揮するのが中々難しい曲ではあるなあ、という印象を改めて持った次第です。自由曲はガラリとサウンドを替えて、エッジのあるサウンドで、細かいパッセージを、内声部に至るまで、しっかりと聞かせるのに成功していました。素晴らしい再現力です。ソロ楽器の集中力も高く、終盤もバンド全体の気持ちの方向はブレることなく、プッチーニのめくるめく音楽を紡ぎだして行く、胸のすくような快演でした。がしかし、前半の部もそうでしたが、今年のオケマン審査員の方々は、クラシック音楽のセレクションものに対して、どうやら厳しい姿勢で臨んで来たようですね。非常に残念な事です。
2: 北海道支部 札幌地区代表 札幌日本大学高等学校 銀賞 (指揮:木田恵介)3年連続3回目
課題曲5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
レクイエムより(G.ヴェルディ/福田洋介)課題曲は、やや雑然としたサウンドと音楽でスタートしました。全体を通しても直線的なサウンドを持ったバンドという印象でしょうか。しかしこの課題曲についてはアナリーゼの余地がまだまだあったようで、音楽の焦点が曖昧になっていたのが残念。ユニゾンの精度も、更なる向上を期待したいところです。そしてこのストレートできらびやか、かつゴージャスなサウンドは自由曲で本領を発揮しました。冒頭のリベラメはエッジのある音楽が、楽曲の世界観を的確に表現していたと思います。ただ、全体のサウンドのバランスがいまひとつで、旋律が埋もれてしまう部分が見られたのは残念です。またその後、音色の変化が見られず、終始同じ色彩感で音楽が進んで行ってしまった感がありました。弱奏部分もやや安定感を欠いた感じで、和音の重ね方にも更に突っ込んだアプローチが望まれるところです。
3: 関西支部 大阪府代表 明浄学院高等学校 銀賞 (指揮:小野川昭博)3休明け11回目
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
紺碧の波濤(長生淳)粒立ちの良いサウンドでスタートした課題曲でしたが、これまで持っていたイメージに比べるとサウンドがややこじんまりとした印象になっていました。音楽的には全ての要素をクリアに再現し、絶妙にバランスを取っていましたが、サウンドのレンジが狭いためか、音楽全体にスケール感を欠いてしまったようです。後半は非常に淡々と音楽が進んでいく感じで、最後の山を登りきらないまま終わってしまった印象でした。自由曲になっても、サウンドがいまひとつ突き抜けない印象で、的確に再現される音楽とは裏腹に、スケール感の物足りなさは否めませんでした。全体を通してソロ楽器の技量も高く、楽曲の世界観を確実に再現していましたが、時折メロディの奏で方に作為的な部分が見られたのが個人的には気になりました。しかし、個々の奏者の演奏力は高く、終始安心して音楽に身を委ねることが出来たと思います。
4: 西関東支部 埼玉県代表 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 銀賞 (指揮:宇畑知樹)4年連続16回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響的舞曲より 第1・3楽章(S.ラフマニノフ/森田一浩)非常に艶と表情を伴ったサウンドでスタートした課題曲は、全体のサウンドがまろやかながらも、旋律が際立った、歯切れのいいマーチでした。音楽の流れも自然で、まさに王道の西関東サウンド伊奈サウンドの健在ぶりを見せていました。自由曲の交響的舞曲は第3楽章のみ演奏される事が多いのですが、このバンドは第1楽章からのスタート。他があまりやらないという事は、コンクールで聞かせきるのが難しいという事でもありますね。そこに果敢に挑んでくるのが、西関東バンドの潔さという感じでしょうか。しかし、第1楽章は同じフレーズの応酬的な展開の楽曲で、音楽の流れが冗漫になってしまうのは致し方ないわけですが、コンクールという場では、やはり有利に働く事は無いのでしょう。総じて高い演奏力を発揮していましたが、第3楽章で音楽的な流れを劇的に変化させるには至らなかったようです。そして最も残念だったのは、音楽の余韻を打ち消してしまったフライング拍手でした。
7: 東北支部 福島県代表 福島県立平商業高等学校 銀賞 (指揮:藤林二三夫)2年連続4回目
課題曲2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
交響曲「画家マティス」より(P.ヒンデミット/篠崎卓美)精華の後だからなのか、非常にまろやかでややこじんまりとしたサウンドが耳に飛び込んできた印象でした。全体を通して、打楽器がやや大きすぎた印象だったでしょうか。管楽器のバランスは良く、旋律も際立ち、ハーモニーが安定した好演だっただけに、全体のサウンドのバランスが悔やまれます。トリオ以降は、マーチとしての前進力はあるものの、音楽が淡々と単調になってしまったのか残念でした。自由曲は、やはり福島のバンドらしく、ユニークな選曲を持ってきました。サウンドも音楽も非常にシンフォニックなアプローチをしているバンドというイメージです。そして何よりも個々の奏者の演奏力の高さが、こうした選曲のアプローチをしっかりと支えている感じで、緻密なアンサンブルや、豊な響きを持ったハーモニーが非常に心地よい12分間でした。
9: 東海支部 愛知県代表 安城学園高等学校 銀賞 (指揮:三浦聖司)4年ぶり13回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
楽劇「サロメ」より、七つのヴェールの踊り(R.シュトラウス/小澤俊朗)ややクリア感に欠けるイントロでスタートしたマーチでしたが、リズムのキープ感が心地よく、前進力のあるマーチを演出していました。更に旋律が艶やかに際立って届いてくると、音楽が更に明るさを増した事てしょう。そんな中で随所でアンサンブルのブレが見られたのは残念でした。自由曲は勢いとドライブ感のある導入部でスタートしましたが、オーボエソロの流麗な響きに対して、バッキングがややアップアップな感じで、妖艶さの後押しが出来なかったように見られたのか残念でした。表情にももっともっと変化が欲しかったところです。そんな中でハーモニーの安定感は素晴らしく、奏者の演奏力の高さを感じさせました。終盤、やや打楽器がバランスを崩してしまいましたが、こんな音楽の流れの中でも冷静にコントロールして行くアプローチが求められるところです。
10: 東北支部 福島県代表 福島県立磐城高等学校 銀賞 (指揮:根本直人)2年連続15回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
ディオニソスの祭り(F.シュミット/根本直人)意外にも丁寧に音をつむぎ出した感のあるイントロから課題曲はスタートしました。木管のユニゾンの美しさや、ハーモニーの安定感は健在でしたが、マーチのリズムがやや甘く、音楽の流れを時にせき止めてしまった印象でした。サウンドもやや平たいかなという印象てしうょうか。しかし、トリオ後のアナリーゼ力は素晴らしく、終盤は溌剌感と爽快感が同居したエッジのある音楽を作り上げていました。自由曲は、恐らくこのバンドの十八番のひとつの、自編曲版。バンド全体の演奏力の高さと、緻密なアンサンブルが心地よい秀演でしたが、早いフレーズのユニゾン等にブレが散見され、サウンドや音楽がバラけてしまった印象でした。しかし、楽曲全体の世界観の演出はお手の物で、終盤の高濃度高密度のアンサンブルは圧巻でした。
5: 北陸支部 富山県代表 富山県立高岡商業高等学校 銅賞 (指揮:神田賢二)2年ぶり28回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響詩「ドン・ファン」(R.シュトラウス/大橋晃一)ブラスサウンドを中心としたきらびやかさが持ち前の北陸サウンドですが、課題曲のイントロは、雑然としてしまい、発音ミスも見られたものになってしまいました。その後の木管のユニゾンも詰めが甘く、全体的に焦点がぼやけたマーチになってしまいました。その後のトランペットのアンサンブルの頼もしさは北陸バンドならではのものですが、やはり土台となるサウンド、アンサンブルの構築が先決ではないでしょうか。サウンド全体としても、特に木管を中心に艶のある響きを目指してもらいもいものです。自由曲でも、金管を中心とした音楽作りを施していましたが、木管とのブレンドがなされず、きめの細かいバランスの施しが求められるところです。
11: 中国支部 岡山県代表 就実高等学校 銅賞 (指揮:小林巧)10年ぶり15回目
課題曲1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
スペイン狂詩曲より 祭り(M.ラヴェル/森田一浩)冒頭から、サウンドやハーモニーがやや濁っているのが気になりました。音色自体もややこもった感じで、細かいパッセージが散漫な印象になってしまいました。その後も音楽が平面的に進んでいく感じで、旋律が的確に届いてこなかったのが残念でした。そんな中でも、ハーモニーは安定感を持ち出し、リズムの刻みも音楽全体を心地よいものにしていました。自由曲は、中国大会では同曲対決を制して来たスペイン狂詩曲。サウンドもようやく会場にこ慣れて来た感じで、重厚さを持ったエッジのあるサウンドがそのヴェール脱いできたという印象でした。細かいフレーズも的確にこなし、音楽が持続力持ってきた感じでしたが、更に金管と木管のサウンドにブレンド感が加わると、音楽の色彩感が増すのではないかな、と思いました。
12: 四国支部 高知県代表 高知県立高知西高等学校 銅賞(指揮:中山直之)2年連続6回目
課題曲1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
奔馬を秘めて(長生淳)大きめのトムのサウンドからスタートした課題曲は、発音が不明瞭な部分が見られ、全体的にハーモニーに濁りが見える形になっていました。不用意な発音ミスも散見されたのは残念です。個々の演奏力自体は高いものがあるように見受けられましたが、そこからひとつの作品を作り上げて行くというアプローチを今一度見直す必要があるのではないかなという印象です。自由曲になっても、散漫なサウンドに変わりなく、訴求力の欠けた音楽になってしまったようでした。更なるアナリーゼ力が求められるところでしょう。そんな中でもサウンドのクリアさは好印象でした。
大学の部
3: 東京支部 東京都代表 東海大学吹奏楽研究会 金賞 (指揮:福本信太郎)4年連続7回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
輪廻の八魂〜仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌〜(樽屋雅徳)今年は、東京の予選〜本選、そして全国大会と全ての演奏を聞くことが出来ました。その全ての場で、安定した完成度の高い演奏を残したのは流石で、指揮者とのコンビネーションやお互いの信頼度も着実にレベルアップして来ているのを感じさせていました。重厚ながらもクリアなサウンドは心地良く、音像がクリアなのが奏者たちの鍛練度の高さを表しています。会場の響きを意識した配置もお見事。課題曲の終盤は、バストロの破裂音かやや音楽の品格を邪魔したかのように見えましたが、それはまあ一瞬の幻。自由曲は東京都本選に比べると、和太鼓のバランスが非常に改善されたようで、楽曲の骨組みがシースルーとなる完成度の高い演奏でした。ハーモニーの安定感は勿論、行き届いたアナリーゼによる旋律の際立たせ方も素晴らしく、演奏後は溢れんばかりの喝采を浴びていました。
10: 東関東支部 神奈川県代表 神奈川大学吹奏楽部 金賞 (指揮:小澤俊朗)2年連続42回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
バレエ音楽「中国の不思議な役人」より(B.バルトーク/小澤俊朗)多人数で音楽を奏でるという行為を、何故、人が目指し、それを聞く人々が感動を覚えるのか・・・・。このバンドの演奏を聞きながらそんなことをふと考えました。ひとりひとりの奏者が平常と変わらず限りなく冷静にそのロール(役割)を演じ、そのひとつひとつの素材をマエストロが更に冷静に組み立て、気が遠くなるほどに複雑な味付けを行う。そうして出来上がった音楽の魔術に観衆が酔う。それはひとつの楽団の理想郷であり、今回の神奈川大学の演奏は、まさにその領域に足を踏み入れたような味わいを持っていました。よく「目の覚めるような・・・・」という言葉を使いますが、今回の課題曲5番を聞いて、眠くなるのか、目が覚めるのか・・・・このバンドの5番はまさに後者で、めくるめく場面転換、楽曲の要素ひとつひとつを丁寧に紡いで行く、奏者と指揮者の音楽の質の高さに脱帽の思いでした。2日間を通じて、最もアナリーゼの行き届いた極上の音楽を完成させていました。自由曲については細かい部分を突つけば色々出てくるわけですが、そんな行為が野暮だと思えるほどに、過不足の無い音楽の濃度を体感出来た12分間だったと思います。
1: 関西支部 大阪府代表 近畿大学吹奏楽部 銀賞 (指揮:森下治郎)4年連続30回目
課題曲
1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
交響曲第3番より、第4楽章(J.バーンズ)今年出場30回目となった近畿大学。ずいぶん長い間、このバンドの演奏を聞いてきたわけです。昔から変わらない、少々硬派で重厚なサウンドは今年も健在でした。が、サウンドも音楽も全体的にもっさりとした感じで、細かいフレーズにばらつきが見られたのは残念。こうしたホールは、そんな細かいざわつきもクリアに伝わって来てしまいます。その為か、終始旋律がくっきりとせず、全体的に説得力の無い演奏になってしまいました。このタイプのホールへの対策が不十分だったのでしょうか。自由曲は、金管の発音がやや悪く、こちらもクリアさに欠けていたのが残念。また発音ミスも散見され、平常の力を発揮できないまま終わってしまった感じでした。そんな中で、冷静にリズムを刻んでいくパーカッションの存在が光っていました。
2: 西関東支部 埼玉県代表 文教大学吹奏楽部 銀賞 (指揮:佐川聖二)3年連続22回目
課題曲
3: 「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
コンコルディア〜調和によって〜(長生淳) 常連バンドだけあって、クリアなサウンドは心地よかったのですが、らしからぬアンサンブルの乱れがあったりと、やはり今回のようなホールとの相性が少々悪かったようです。それにしても、課題曲は、非常に速いテンポ設定。演奏力のある奏者たちは何事も無くテンポに付いていきますが、今回のようなホールの響きの中にあっては、終始もやもやモコモコした音楽になってしまいます。自由曲は、このバンドの麗しい木管の音色にマッチングした選曲でしたが、課題曲の不調そのままに、伝えたいものが把握できないままに終わってしまった、という印象でした。そんな中でも、全体のサウンドのバランスやアナリーゼ力は、お見事で、その力量を本番で発揮しきれなかったのが悔やまれます。
4: 関西支部 京都府代表 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部 銀賞 (指揮:若林義人)3休明け18回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響曲第5番「革命」より、第4楽章(D.ショスタコーヴィチ/上埜孝)課題曲は持ち前のまろやかなサウンドで、丁寧な音楽作りに好感が持てました。旋律も際立ち、サウンドのバランスも絶妙なマーチに仕上がっていたと思います。自由曲は、時代を越えて多くのバンドが取り組んできたアレンジもの。冒頭は、課題曲に比べてより鋭角的なサウンドを期待していましたが、課題曲からの変化が見られなかったのは残念。アンサンブルもやや不安な部分が見受けられました。またこの曲を演じるには、サウンドがやや明るすぎるかな、という印象でした。バンド全体としても、もっと低音が聞こえてくると、音楽が安定した事でしょう。しかし、音楽は非常にタイトな表現で、木管と金管のブレンド具合も心地よく、終演後はオーディエンスからの喝采を浴びていました。
8: 九州支部 福岡県代表 福岡工業大学吹奏楽団 銀賞 (指揮:柴田裕二)3休明け14回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
交響詩「ローマの祭り」より、主顕祭(O.レスピーギ/中村睦郎)課題曲は、芯の通ったサウンドが、その健在ぶりを示していましたが、ハイトーンにややキツさを感じさせていたのは残念でした。音楽的には絵画的な表現をしているなという印象でしたが、この楽曲についてはまだまだアナリーゼの余地があったのではないかなと思える、やや中途半端な仕上がりでした。音の後処理にも丁寧さが欲しかったところです。自由曲は、テンポ設定のせいか、細かいフレーズが粗雑になり、メリハリに欠けた雑然とした音楽になっていました。しかし、ブラスセクションのストレートなサウンドは相変わらずの心地よさで、その長所を今回は生かしきれなかったかな、という印象でした。
9: 北海道支部 札幌地区代表 札幌大学吹奏楽団 銀賞 (指揮:今井敏勝)2年連続11回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
コラール前奏曲「おお、人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」による幻想曲(伊藤康英)全体を通して、サウンドがレアすぎるかな、というのが、正直な感想でした。それぞれの楽器で、パートで、そして全体で、より美しい音色を追求して欲しいかな、という印象です。課題曲は、マーチとしてのリズムが弱く、ひとつひとつのフレーズが不明瞭になってしまいました。自由曲では、クラリネットのアンサンブルにおいて、旋律をどう際立たせるかというアプローチが欲しかったところです。コラールにおいても、音楽が平坦にならないような工夫が欲しかった感じでしょうか。特に弱奏部分ではよりきめの細かいアプローチが必要なのではないかなと思います。底力のあるバンドなので次なる開花に期待したいところです。
11: 中国支部 広島県代表 広島大学吹奏楽部 銀賞 (指揮:温品慶明)2年連続12回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)外見から察するに、大学の部唯一の学生指揮だったと思います。課題曲では、指揮者と奏者が一体となった溌剌サウンドに心地よさを感じました。がしかし、やはりアナリーゼ不足は否めず、メリハリに欠けたマーチになってしまいました。終盤は音楽的にも更に整理が必要だったようです。自由曲は、このバンドの歯切れのいいサウンドがよくマッチしていましたが、「和」のニュアンスを「洋」の楽器でどう表現するのかという工夫がもっと欲しかった印象です。全体的に音楽がまったりとしてしまった感じでしょうか。終盤に見られた集中力を、全体に満遍なく出せるような努力や工夫で、12分間の音楽絵図が劇的に鮮やかになるはずです。しかし、学生指揮さん、よく頑張ってました!
12: 北陸支部 富山県代表 富山大学吹奏楽団 銀賞 (指揮:建部知弘)3年連続6回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
蒼氓愛歌〜三つの異なる表現で〜(清水大輔)課題曲は、やや歯切れの悪いマーチという印象で、テンポ設定に問題があったかも知れません。アンサンブルも全体的に精彩を欠き、旋律と対旋律のバランスに一考の余地ありです。最も気になったのはスネアドラムのチューニングというか、いわゆるスネアの張り具合でしょうか。マーチ全体か重くなる要因のひとつになっていたようです。自由曲は、2本のトランペットによるバンダからスタートするユニークな曲。「大人のチンギス・ハーン」といったような雰囲気を持った楽曲ですが、演奏面ではバンド全体のサウンドに更にクリアさが欲しかったところ。学生が主体となって、日々アナリーゼする習慣も、大学生になれば必要かも知れません。しかし、北陸のバンドのブラスの響きのきらびやかさは、健在で、個人的に心地よいものを感じてしまいます。
5: 東海支部 静岡県代表 静岡大学吹奏楽団 銅賞 (指揮:三田村健)2年連続12回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
巨人の肩にのって(P.グラハム)ここの指揮者がステージに登場すると、アメリカのアニメのような明るさを感じます。さて、課題曲のマーチは全体を通してやや雑然としている感じで、楽器によって技量のバラツキが大きいのか、発音の悪い楽器が散見されました。楽譜を再現した後に、どんなメッセージを音楽に込めるのか、そうしたアプローチも欲しいところです。自由曲は、やはり細かいフレーズのバラつきが気になりました。ラテン・テイストを持った音楽においては、サウンドのうねりや音楽的な妖艶さも、欲しかったところです。
6: 九州支部 福岡県代表 福岡大学応援指導部吹奏楽団 銅賞 (指揮:花岡金光)2年連続31回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
「アメリカの騎士」より、選ばれし者(S.メリロ)演奏前は、セッティングの遅さがやや気になりました。課題曲は、楽曲の要素はしっかりと再現されていましたが、全体的にメリハリを欠いたマーチになっていたのが残念。音色もダーク気味で、音楽に合わせた音色の研究も必要でしょう。自由曲は、麗しいサックスのソロからスタート、エレキベースが使えなくなってから久々の登場曲ですね。ただ当時と同じバランスを取るなら、弦バスは、最低でも4本必要なのではと、聞いていて感じました。そういう意味で、低音が歯抜けになってしまった感は否めませんでした。音楽にも更にタイトさが欲しかったところですが、木管のサウンドが美しく、旋律が際立った好演だったと思います。
7: 東北支部 岩手県代表 岩手大学吹奏楽部 銅賞 (指揮:牛渡克之)28年ぶり14回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
交響曲第3番より、第3・4楽章(J.バーンズ)課題曲は、音楽が平坦で、その表現もおとなしめ、という印象だったでしょうか。マーチにおいてはトリオでサウンドや音楽にどう変化を付けるかが問われるところですが、そのままの勢いで突っ走ってしまいました。アンサンブルも、更なる鍛練が必要なようです。自由曲は、3楽章の弱奏に不安定さを感じました。4楽章では、トゥッティにおけるサウンドに濁りが散見されたのが残念です。しかし、サウンドそのものはダイナミックレンジが広く、心地よい響きを持っているので、これから音楽的にどう磨きをかけて行くのか、楽しみにしていたいと思います。
職場・一般の部
前半の部
3: 東北支部 秋田代表 大曲吹奏楽団 金賞 (指揮:小塚 類)3休明け16回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
バッハの名による幻想曲とフーガ(F.リスト/田村文生)持ち前の重厚なサウンドでスタートした課題曲でしたが、やや重いマーチという印象で、これは多分低音に重心を置いたサウンド作りが影響していたのかも知れません。サウンドそのものにも、マーチを奏でるにあたっては、更にクリアさが欲しかったところです。更に金管楽器に艶みたいなものが加わると、耳辺りが格段に良くなるのではないでしょうか。自由曲は一転して、そのサウンドが楽曲に程良くマッチした好演でした。木管楽器が更にシンフォニックな響きを持つと、色彩感が増した事でしょう。フーガの骨組みには更なるアナリーゼが欲しかったところですが、全体を通して、高いレベルのアンサンブルが心地よい世界観を作り上げていたと思います。
6: 東海支部 静岡県代表 ヤマハ吹奏楽団浜松 金賞 (指揮:須川展也)3休明け38回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
「アイ・ガット・リズム」変奏曲(G.ガーシュイン/中橋愛生) このところ横綱相撲を取り続けている感のあるバンドです。重厚ながらもクリアなサウンドは健在で、全体を通して音楽をスッキリと聞かせていました。また緩急のタイミングも絶妙で、ともすれば無機質になりがちな5番に、見事に命を宿らせていたのに感銘を受けました。ラストの鈴の音はステレオ効果もある演出で、ミュージック・カンパニーならではの心憎い演出でした。自由曲は世界観がガラリと代わり、合わせてサウンドもガラリと変貌させたのは流石です。ホールの反響の影響なのか、途中でややリズムの噛み合わない部分も見られましたが、細かいフレーズの再現力は見事で、遊び心も満載の余裕の横綱相撲を今年も堪能させて頂きました。
8: 東関東支部 神奈川県代表 横浜ブラスオルケスター 金賞 (指揮:近藤久敦)2年連続10回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
祝典序曲(J.イベール/近藤久敦)伝統の重厚なサウンドは健在で、マーチをどのように演出するのか興味津々でしたが、音楽が非常にクリアで、全ての要素を過不足無く再現していたのには脱帽でした。特にトリオ明けのドライブ感は鳥肌もの!ただ、ベースラインの処理が、ややシンフォニック過ぎたためか、いわゆるマーチとしての前進力を感じる事が出来なかったのだけが残念でした。自由曲は、細かい動きの中でもブレないハーモニーが素晴らしく、躍動感に溢れた、切れの良い音楽を展開していました。高度なレベルのアンサンブルも絶妙でしたが、終盤やや音楽が雑然としてしまったのだけが残念でした。この祝典序曲は私のフェイバリットソングのひとつ。イメージ通り、いやそれ以上の演奏に遭遇出来た幸せに感謝したいと思います。
9: 東京支部 東京都代表 創価グロリア吹奏楽団 金賞 (指揮:中村睦郎)4年連続22回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
バレエ音楽「中国の不思議な役人」より(B.バルトーク/小澤俊朗)重厚で骨太ながらも繊細な部分も持ちら合わせたサウンドは、全日本のステージでも健在でした。またサウンドがしっかりとブレンドされているのに分離が良いという独特の響きは、他の追随を許すことはしばらく無さそうです。課題曲5番は、内声部までしっかりとアナリーゼされ、極限までそれを再現しようという奏者たちの潔さはまさに音楽の勇者そのもの。加えて立体的に音が飛び交うアンサンブル力の高さも、存分に楽しませて頂きました。自由曲は、定番曲ですが、より高度なアンサンブルが心地よく、安定感抜群の音楽を展開させていました。ただ、安定感抜群であるがゆえに、更に冒険心を持った選曲も聞きたいと思うのは、オーディエンスの身勝手な願いでしょうか。
11: 西関東支部 埼玉県代表 川越奏和奏友会吹奏楽団 金賞 (指揮:佐藤正人)2年連続14回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
「吹奏楽のための組曲」より、1.ファンファーレ 2.子守歌 3.カプリチオ(菊池幸夫)ほかのバンドとは一線を画したステージのセッティングにまずは目を奪われました。余裕のある音量で繰り広げた課題曲5番は、音楽をアナリーゼするという事の楽しさを伝えようとするかのような演出で、このバンドならではの独自性を随所に感じさせる、大人の解釈を持った作品に仕上がっていました。また、管楽器の隙間を縫って現れてくる打楽器の存在感等、全日本の舞台にあっても新たな発見が垣間見られるというのは、オーディエンスの醍醐味のひとつです。自由曲においても、重厚ながらもクリアなサウンドは健在で、音楽以前にサウンドそのものが躍動しているのに目を奪われました。はらわたに響いてくる重心の低いサウンド作りも、大人のバンドならではの達成感なのだと、改めて感じさせてくれました。
1: 東北支部 宮城県代表 泉シンフォニックウィンドオーケストラ 銀賞 (指揮:荒井富雄)2年連続6回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
シング・ウィズ・シンセリティー(長生淳)重厚で文字通りシンフォニックなサウンドを持っているハンドですが、そのせいか課題曲はやや重い印象のマーチになっていました。またアサイチの出演順も影響してか、サウンドが乾燥気味だったようです。また、音楽的にも更なるアナリーゼの余地があるように見受けられました。自由曲では、やはりサウンドにクリアさが欠けていたせいか、音楽的訴求力に欠けた演奏になってしまったようです。バンドのサウンドを生かす選曲によって、更に評価があがるのでは、という感じも受けました。
4: 関西支部 奈良県代表 M's Sound Factory 銀賞 (指揮:高木宏之)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
歌劇「トスカ」より(G.プッチーニ/鈴木英史)課題曲の冒頭から個々人の演奏技術の高さを感じました。少人数である分だけ、サウンドがクリアで、ナチュラルな音楽を奏でていたのが印象的でした。ただ、マーチとしての前進力は充分に感じられたのですが、ハーモニーが固く、旋律とのブレンド感がいまひとつ不足していたようです。自由曲でも、その高いアンサンブル力は健在で、旋律の歌い方も非常に音楽的なものを感じました。ただ対旋律の処理、主メロとの絡みがもうひとつで、逆の意味で音楽がわかりやす過ぎるという印象も受けました。今後人数が増えてサウンドや音楽がどう変貌して行くのかも、楽しみなバンドです。
5: 九州支部 鹿児島県代表 J.S.B.吹奏楽団 銀賞 (指揮:東 久照)2年連続8回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
交響的印象「教会のステンドグラス」より(O.レスピーギ/藤田玄播)課題曲の冒頭から、重厚でクリア、かつ分離の良いサウンドに心地よさを感じました。安定したハーモニーも、課題曲5番を艶やかな音楽に仕立て上げていたようです。ただ全体にまったり感が強すぎるきらいがあり、随所で音楽が停滞してしまったのが残念です。自由曲は、冒頭の弦バスのサウンドから、楽曲の色彩感世界観をうまく演出した好演でした。旋律の歌い方も、大人ならではの艶やかさを持っていたと思います。ただここでも音楽が全体的に冗漫で、更なる情熱がほとばしる部分や、シーンごとの音色の変化等が欲しかったな、という印象でした。
7: 九州支部 福岡県代表 春日市吹奏楽団 銀賞 (指揮:八尋清繁)24年ぶり5回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
エルガー・ヴァリエーション(M.エレビー)課題曲は、サウンドが固めで、表情に乏しいマーチという印象でした。発音ミスも散見され、アンサンブルも不安な部分がいくつか見られたのは残念でした。そんな中でも、バンドそのもののサウンドは、レンジが広く心地よいものがあったと思います。自由曲でも、音楽的な整理が付いていないのは明白で、訴求力に欠ける演奏になってしまいました。旋律ももっと歌って聞かせる工夫を施してもらいたいものです。
10: 四国支部 高知県代表 鏡野吹奏楽団 銀賞 (指揮:弘田靖明)4年連続22回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
輪廻の八魂〜仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌〜(樽屋雅徳)まずはサウンドが、大人のバンドとしては線が細いかな、という印象を持ちました。全体のブレンド感もいまひとつで、音楽がやや雑然としてしまったようです。ハーモニーもよりクリアに響かせて欲しかったかなという印象でした。自由曲は、楽曲のオーケストレーションも手伝って、サウンドはガラリとクリアに変身。ただ低音はもっと出てきてもバランス的に良かったかも知れません。また、細かいフレーズにおいて、どこにアクセントを持ってくるか、そうした表現の細やかさみたいなものも欲しいところでした。
2: 北陸支部 福井県代表 ソノーレ・ウィンド・アンサンブル 銅賞 (指揮:栗田健一)3休明け9回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
蒼氓愛歌〜三つの異なる表現で〜(清水大輔)やや作為的なイントロからスタートしたマーチでしたが、やはりそこは自然な流れを大切にして欲しいところでしょう。サウンドはクリアで安定したものを感じさせましたが、全体を通して歯切れの悪い演奏で、マーチが重い印象になってしまったようでした。自由曲は、ホールの響きを生かした好演で、サウンドはよりクリアになり、安定したハーモニーも心地よいものを感じました。この楽曲をよく理解しアナリーゼを施した解釈だったと思います。更に、旋律が際立つ演出があれば、音楽そのものもクリアに届いたのではないでしょうか。
12: 北海道支部 札幌地区代表 札幌ブラスバンド 銅賞 (指揮:米田浩哉)初出場
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
ミュージカル「レ・ミゼラブル」より(C.M.シェーンベルク/福島弘和)サウンドが全体的に発音不明瞭で、音楽にメリハリが欠けてしまいました。全体的に淡々と音楽が進行して行く感じて、何か大人のスパイスみたいなものを施して欲しかったところです。自由曲は、ゆったりと歌う部分ではその本領を発揮していたようですが、それ以外の部分での場面ごとのサウンドの変化や、音楽的なメリハリ等、ミュージカルの楽曲を演奏する意味みたいなものを追求して欲しかったかな、という印象でした。
13: 中国支部 広島県代表 NTT西日本中国吹奏楽クラブ 銅賞 (指揮:金田康孝)2年ぶり46回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
セント・アンソニー・ヴァリエーション(W.H.ヒル)明るいサウンドによる前進感のあるマーチが心地よさを演出していましたが、サウンドにやや潤いが不足していたのが残念でした。メリハリにもやや欠けていたようです。自由曲は、音楽の骨組みがよくわかる、アナリーゼのよく施された好演で、高いアンサンブル力を見せていました。終盤はやや息切れしてしまった印象で、ファンファーレやフーガの演出に、更なる大人の情感を感じさせて欲しかったところです。しかし、サウンドも音楽もクリアな演奏に対する銅賞は少々酷かな、という印象も持ちました。
 後半の部
1: 西関東支部 埼玉県代表 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 金賞 (指揮:福本信太郎)4年連続18回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
バレエ音楽「中国の不思議な役人」より(B.バルトーク/加養浩幸)課題曲の冒頭からそのサウンドもさることながら、音楽的な処理が非常に立体的になされているのが印象的でした。このバンドは特に木管の響きが豊かで、金管とブレンドされた時に、全体のサウンドに揺らぎをもたらしているのにいつも驚かされます。楽曲の全ての要素を過不足なく再現し、レンジの広いサウンドと高いアンサンブル力が、音楽を高いステージに昇華させているのでしょう。サウンドそのものも様々なカラーを持っているのが、音楽を更に表情豊かにしていたようです。自由曲は、コンクールの定番曲ですが、木管が充実したバンドでのバルトークはまた新鮮な響きと発見をもたらしていました。ユニゾンの精度も素晴らしく、その世界にまさに没入させられてしまった12分間でした。
2: 東海支部 静岡県代表 浜松交響吹奏楽団 金賞 (指揮:浅田 享)4年連続13回目
課題曲
3: 「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
自由曲:
鳳凰が舞う〜印象、京都、石庭、金閣寺(真島俊夫)きらびやかなブラスサウンドが、この課題曲3番のイントロに華やかさを添えてのスタートでした。冒頭の主題は、セグメントごとに音色の変化をもっと演出して欲しかったところですが、全体的にはアナリーゼの行き届いた、好演だったと思います。ただ、ユニゾンの精度が甘く、時折叩きつけるようなサウンドの処理が見られたのも残念でした。終盤の旋律と対旋律のバランスにも、細かい気配りが欲しかったところです。自由曲は、このバンドらしからぬ選曲で、どんな処理を施してくるのか楽しみにしていましたが、金管楽器の鋭角的なサウンドが、この楽曲に新たな魅力を添えていました。総じてアンサンブルのレベルが高い秀演でしたが、ハーモニーの重ね方等にはより繊細な心配りが欲しかったかな、という印象です。
7: 関西支部 大阪府代表 創価学会関西吹奏楽団 金賞 (指揮:伊勢敏之)3年ぶり16回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
三つのジャポニスム(真島俊夫)課題曲の冒頭、一瞬アンサンブルの乱れが見られ、ドキリとさせられましたが、その後は安定したマーチを展開していました。サウンドも音楽も重厚でしたが、全体的に音が乾燥している感じで、全体を通して躍動感を感じられなかったのは残念です。また、音楽がやや開き気味でしたが、部分的にはタイトなものが見られてもいいのかな、という印象でした。自由曲は、高いアンサンブル力で、余裕を持って音楽を演じていましたが、こうした楽曲ではサウンドや音楽のうねりみたいなものも欲しかったところです。また旋律が時折埋もれてしまいそうになる部分もあり、より突っ込んだ音楽の構築や、大人ならではの旋律の謳い込み等も、もっとあっていいかなと感じました。とはいえ、これは高い演奏力を持ったバンドなだけに思ってしまう、聞く側の更なる我が儘でもあるわけですが・・・・。
11: 東北支部 宮城県代表 名取交響吹奏楽団 金賞 (指揮:楊 鴻泰)3年連続19回目
課題曲
5:きみは林檎の樹を植える(谷地村博人)
自由曲:
アスファルト・カクテル(J.マッキー)重厚で豊かな響きを持ったサウンドによる課題曲は、冒頭からやや音楽が平面的になっていて、まだまだアナリーゼの余地があるのではないかな、という印象でした。譜面を高いレベルで再現するその演奏力には素晴らしさを感じるのですが、楽曲全体をどのようなストーリーで紡いでいくのか、そういうアプローチまでは達していなかったのかも知れません。しかし、全体を通してサウンドのバランスが良く、高いアンサンブル力を持った好演でした。演奏力と言えば、自由曲はそのプラス面を見事に生かした怪演でした。ただ随所でオーバーフロウ気味になってしまう部分があったり、ドタバタしてしまう部分もあったわけですが、奏者たちのエネルギーの強さは素晴らしく、演奏後は溢れんばかりの拍手喝采を浴びていました。その集中力にも脱帽です。CDやDVD等を買う予定の方々は楽しみにしていて下さい!
3: 東京支部 東京都代表 東京隆生吹奏楽団 銀賞 (指揮:畠田貴生)4年連続4回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
フェスティバル・ヴァリエーション(C.T.スミス)若い溌剌としたサウンドというのがこのバンドのイメージでしたが、課題曲は大人のマーチといういでたちで、中低音の響きを大切にした、安定感のある音楽でした。ただ、やや浮遊感が強く、地に足が付いた部分、タイトな部分もあれば、音楽全体が締まったのではないかな、という印象でした。しかし、強い前進力を持った音楽作りは、このバンドの溢れんばかりのパワー充分に感じさせるものでした。自由曲は、発音やリズムの難易度が高い楽曲に挑戦。旋律をよく聞かせ、高揚感を随所に配した、心躍る音楽を演出していましたが、マーチからの転換にとまどった奏者が散見され、冒頭部分でリズムやアンサンブルに、ほころびが見えてしまったのが、残念でした。が、こうしたチャレンジ精神には大きな拍手を贈りたいと思います。
4: 北海道支部 北見地区代表 北見吹奏楽団 銀賞 (指揮:松田彰光)2年連続6回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
復興(保科洋)課題曲は、ブラスサウンドがややレアで、ハーモニーニに濁りが見えてしまっていたのが残念でした。適度にアナリーゼが施された、安定したアンサンブルは、心地よさを放っていましたが、部分的に耳につくサウンドを持った楽器がいくつか見られました。その辺の音楽的サウンド的処理は、大人のバンドとしてはしっかりと施して来たもらいたいところです。自由曲は、ここでも安定したアンサンブルを見せていましたが、全体的に音楽が平坦になってしまった印象でしょうか。終盤は、更に大人ならではの歌い方もあって良かったのではないかな、と思いました。
5: 東関東支部 千葉県代表 光ウィンドオーケストラ 銀賞 (指揮:佐藤 博)2年連続2回目
課題曲
1: 最果ての城のゼビア(中西英介)
自由曲:
白磁の月の輝宮夜(樽屋雅徳)非常にレンジの広いサウンドが心地良く、内声部までしっかりとアナリーゼが施された、高いアンサンブル力は、金賞バンドに匹敵するものを持っていたと思います。弱奏も安定していて、こうしたホールの中でも、適度にサウンドに艶を持たせる事に成功していたブラスの響きが印象的でした。自由曲においても、安定したハーモニー、ブレない弱奏が、音楽全体に自然にメリハリを与えていました。若干のケアレスミスが残念だったのと、全体を通して低音サウンドがもう少しバランス的に大きく聞こえると、より安定感が増したのではないかなと思いました。
8: 東関東支部 神奈川県代表 グラールウィンドオーケストラ 銀賞 (指揮:佐川聖二)3年ぶり9回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
トラジチニ・ソナタ・ナ・ジュレバカ・イ・プウォーヴエ(天野正道)レンジの広いクリアなサウンドを持ったバンドですが、課題曲は、6/8のビートにやや不自然さと不安定さを感じました。またスネアと、管楽器とのコラボレーション、コンビネーションにも課題があったような気がします。また旋律にも、場面によってさまざまな表情が必要なのではないてしょうか。自由曲は、冒頭カルミナブラーナのような展開を見せる楽曲ですが、ハーモニーがややスカッとせず、雑然とした音楽になっていた印象でした。サウンドそのものにも、こういいった楽曲を演じる時には、よりエッジが欲しかったところです。歴史のあるバンドですから、次回はまたガラリと建て直して、爽快な音楽を聞かせてくれる事でしょう。
10: 九州支部 福岡県代表 飯塚吹奏楽団 銀賞 (指揮:谷口宗生)3年連続3回目
課題曲4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
オリエンタリズムード2014〜ウインドオーケストラのために(片岡寛晶)課題曲の冒頭から、非常にまろやかなサウンドを持ったバンドという印象で、低音の刻みが非常に心地よいマーチでした。しかし、木管のユニゾンにややブレが散見されたのと、メリハリや場面転換があまり感じられず、勢いでそのまま突っ走った感があったのは残念。自由曲では、そのまろやかなサウンドのためか、全体がもっさりとした印象になってしまいました。まろやかな中にも、場面によっては鋭角的なサウンド等、その種類は豊富に欲しいところでしょう。またスコアには現れていない立体的な音楽作りというのも、これからのレベルアップには必要となって行くのではないてしょうか。
13: 関西支部 兵庫県代表 宝塚市吹奏楽団 銀賞 (指揮:渡辺秀之)2年連続8回目
課題曲
4:コンサートマーチ「青葉の街で」(小林武夫)
自由曲:
復興(保科洋)非常にまろやかなサウンドを持ったバンドです。が、今回はチューバを中心とした低音楽器とそれ以外のサウンドとのブレンド感がいまひとつで、場面によっては更なるエッジを持った響きも欲しいところでした。。全体的に音楽が不明瞭なマーチになってしまったのが残念。自由曲は、完成度の高いアンサンブルが、楽曲のイメージを的確に表現していましたが、やはりサウンドのバランスがいまひとつで、木管を主体にしたバンドではあるものの、ブラスサウンドがもっと欲しいかなという場面もたびたび見られました。中盤以降はバランスも良くなり、鮮やかなアンサンブルで新潟大会のトリを締めてくれました。
6: 北陸支部 富山県代表 富山ミナミ吹奏楽団 銅賞 (指揮:牧野 誠)5年ぶり5回目
課題曲
2:行進曲「勇気のトビラ」(高橋宏樹)
自由曲:
コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ(P.ウィリアムズ/S.ネスティコ)課題曲は、サウンドにクリアさが欠けているためか、流れが悪く、旋律が届いて来ない、中途半端なマーチになってしまいました。全体のアンサンブルも、やや安定さを欠いていたでしょうか。自由曲は、多分こうしたテイストが好きなのでしょう、一転して、4ビートの世界観をふんだんに表現する好演でした。特にトローンボーンを中心としたホーン・セクションのJazzyな揺らぎは、絶妙に心地よいものがありました。サックスアンサンブルはもっとビブラートを駆使して、ジャズの世界観を打ち出しても良かったかも知れません。大人のバンドですから、賞の色よりも、どれだけ極限までその世界観を演出し、浸れるか、そういう勝負にもっともっと挑んでもらいたいものです。弦バスはもう2本ぐらいあっても、良かったかも知れません。個人的に非常に楽しませて頂いた自由曲でした。
9: 四国支部 愛媛県代表 藤原大征とゆかいな音楽仲間たち 銅賞 (指揮:藤原大征)4年ぶり2回目
課題曲
3: 「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)
由曲:
ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶(福島弘和)ややもやっとしたサウンドからスタートした課題曲は、ややテンポが速過ぎる感があったでしょうか。そのためか、音楽にエッジがなく不鮮明なものとなってしまいました。ハーモニーにも更なる安定感が欲しかったところです。自由曲は、安定感のあるアンサンブルと、重厚なサウンドをよく生かした好演でしたが、全体を通して、全ての要素が鳴り合ってるという感じで、より丁寧なバランスを施してもらいたかったな、という印象でした。
12: 中国支部 広島県代表 広島シンフォニック・ファミリア吹奏楽団 銅賞 (指揮:古井戸正己)初出場
課題曲
3: 「斎太郎節」の主題による幻想(合田佳代子)  
自由曲:
大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン(鈴木英史)指揮者は、広島県の中学校の先生ですが、このバンドも赴任した中学校の卒業生などで編成されているのでしょうか。課題曲では、高いアンサンブル力と、美しい弱奏が混在した、文字通りシンフォニックな響きを持つサウンドに惹き込まれました。課題曲3番のテンポ設定も絶妙で、旋律の歌い方も素晴らしい音楽を作り上げていました。自由曲でも重厚なサウンドは健在で、特に中域を担当する楽器の安定感が抜群なのは今後に期待が持てるというもの。ただ、この自由曲にあっては、大人ならではの解釈、訴求力があっても、というかあった方が良かったかな、いや、あって欲しかったなと思った次第です。