第48回九州吹奏楽コンクール予選〜鹿児島県大会〜7/24〜
2003年7月27〜29日鹿児島市民文化ホール第一
姶良町立重富中学校吹奏楽部 (指揮 : 坂下武巳) 金賞鹿児島県代表 /九州大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲 :
ドラゴンの年(フィリップ・スパーク)中学の部は、仕事のため1日目しか聞けなかったので、概要を。もはや、鹿児島の中学校の吹奏楽の顔となった重富中。去年の九州大会でも惜しい演奏を展開したが、ボリューム感はあるものの、輪郭がいまひとつしっかりしない音楽になってしまうために、アピール度が半減していた。今年はそこを克服して、常連福岡の須恵がお休みという事もあるので、このチャンスをものにして欲しい。さて、九州大会。まず課題曲がスタートしたとたん、非常にクリアで心地よいサウンドに包まれた。去年はやや濁りがちだったサウンドが、1年でここまで成長するとは・・・・。ただ、行進曲なのに、前へ前へと前進するパワーに欠け、後ろ髪を引かれるようなマーチになっていたのが非常に残念。これはテンポ設定の問題だけではなく、行進曲を構成するすべての要素が微妙にズレているせいだと思われる。やや欲求不満な課題曲だった。そして自由曲はうって変わって、このバンドの持ち味を十分に発揮したものとなった。作曲者の意図をよく表現した演奏で聞く者を圧倒した。ただ全体を通して、パーカッションが大きすぎたな、という印象があったのも確か。また、サウンドにもっとバリエーションが増えれば、より卓越した演奏力を実力以上に本番で発揮出来るはずだ。代表になってもいいのでは・・・・とも思われたが、残念。充分にオーディエンスにアピール演奏だった事は間違いないので、更なる奮起を期待したい。
鹿児島市立吉野中学校吹奏楽部 (指揮 : 美座賢治) 金賞鹿児島県代表/九州大会金賞九州代表
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:
リバーダンス(B.ウィラン)一昨年だったかな、銀賞ながらも、九州代表として普門館で活躍した吉野中。その時の指揮者は、現在南中、その次に指揮者となった先生は現在知名中で、今年は新たな指揮者を迎えて代表に返り咲いた。人づてに聞いた話では、県大会で超中学生級の超絶リバーダンスを聞かせたらしい。未知数な部分が多い分だけ、九州大会が楽しみだ。さて、九州大会。課題曲のでだしはやや緊張も感じられ、少々こじんまりとしたサウンドになっていたが、少しずつ音楽に豊かさが加わっていく感じだった。ボリューム感には欠けるものの、非常にすっきりとした音楽作りに好感が持てた。テンポ設定も絶妙で、マーチとしての仕上がりも上々だったと思う。自由曲も、非常に流麗なサウンドからスタートする。午前中に演奏した普天間中学校とは編曲者も違い、まったく別のアイリッシュな世界を堪能させてもらった。ケルト音楽特有のリズム感を秀逸だった。ただ、ppとffの幅を広く持たないと、普門館での演奏は少々つらいかも知れない。ボリュームを出す事が音楽ではないが、聞く者を説得する材料のひとつとして、ダイナミックレンジの広さが必要になる場合もある。ただ、後半のクライマックスでは非常にボリューム感のあるサウンドが展開されたので、あとは使い分けの問題なのかも知れない。一昨年につづいてのアイリッシュ・サウンドでの全国大会、充分に満喫してもらいたい。もちろん応援に行きます!!
加治木町立加治木中学校吹奏楽部 (指揮 : 菊地洋一) 金賞鹿児島県代表/九州大会銀賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:
悪魔の踊り(J.ヘルメスベルガー2世この指揮者は、天保山中時代と加治木中時代に一度ずつ九州大会に出場しており、今回が、6年ぶりの代表となった模様。こちらも未知数な部分が多いので、サンパレスで出会うのが非常に楽しみだ。課題曲のスタートと同時に、音量の足りなさが非常に気になった。演奏そのものは、非常によく整理されたものだったが、音楽的な高揚感が演出出来なかったのが残念。鹿児島県の団体は全体的に、音量不足が否めない。この辺の改善も鹿児島県のバンド全体に 求められるのではないかと思われる。さて自由曲の方も、細かいぱっセー字もよく表現された好演だったが、やはり音楽的な表現不足で、メロディやハーモニーに対する感動を奏者が楽器に吹き込みきれていないのが手にとるようにわかる演奏だった。基礎の部分は非常によく構築されていただけに、残念だと思う。

九州大会〜8月24日(日)中学校の部〜福岡サンパレス

鹿児島県代表 鹿児島市立吉野中学校吹奏楽部 (指揮 : 美座賢治) 
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:リバーダンス(B.ウィラン)

福岡県代表  志免町立志免東中学校吹奏楽部(指揮 : 白土直也)
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : 交響詩「スパルタクス」(J.V.デル=ロースト)

福岡県代表  北九州市立沼中学校吹奏楽部(指揮 : 武田邦彦)
課題曲 1: ウィナーズ─吹奏楽のための行進曲(諏訪雅彦)
自由曲 : 「GR」より、シンフォニック・セレクション(天野正道)

 九州大会の代表となったのは以上3団体。中でも、北九州の沼中学校の演奏は、中学の部の中でも、ひときわ群を抜くもので、中学校という範疇を越えるものだった。特筆すべきはその鮮やかでダイナミックレンジの広いサウンド。楽器を操るテクニックはそれなりに訓練を積めば出来る事だが、ここまで卓越したサウンドを構築するのはなみたいていの事ではない。全国大会でも金賞は確実なサウンドと演奏だった。そして志免東中学校はこれで3年連続出場を果たしたが、例年にたがわず課題曲の完成度が低い。自由曲は非常に卓越したテクニックを聞かせるバンドだが、全国大会までにいかに行進曲を仕上げてくるか、楽しみにしていたい。もうひとつの代表の椅子をゲットしたのは、鹿児島の吉野中学校。おそらく、沼中学校以外の金賞団体の上位はかなりの接戦だったと思われるが、他の金賞団体とはもっとも異質なサウンドと音楽の世界観を持っていた吉野中学校が、代表となった。コンクールの審査は審査員の点数の合計であるが、観客が客席で聞いた感じとは違う結果が出るのが、この数字のマジックであり、これがコンクールの面白さでもあり、怖さでもある。もちろん吉野中学校の演奏も九州代表としての堂々たるものであり、出場団体の中でももっとも「音楽」を感じさせてくれた。全国大会でさらにパワーアップして来るのを楽しみにしていたい。

 その他の金賞団体の中では、北九州の若松中学校と鹿児島の重富中学校の演奏が印象に残った。音楽的な仕上げ感がもうひとつではあったが、代表バンドにひけを取らない技術力とサウンドはオーディエンスを魅了した。特に重富中学校は、今でも耳に残る演奏を残してくれた。若松中学校はピッチを安定させるともっといい音楽になっただろう。アンサンブルのレベルが高い演奏だった。菅生中学校は、無駄のないサウンドとそつのない音楽で安定感を出していた。また沖縄の普天間中学校は課題曲1番がすばらしかった。前日の高校生が出し得なかったハーモニーの妙を演出していたのは非常に評価に値する。自由曲で、ケルト系のリズム感がしっかり演出出来たら、面白い存在になっていただろう。しかし、このところ低迷する沖縄バンドに希望の光が見えてきた感じだ。また銀賞ながら、卓越した技術力を発揮した、延岡市の東海中学校も印象的だった。ただ、サウンドに空洞の部分がいくつかあるのでそこを埋める事が出来たなら、今後面白い存在になって行く事だろう。それにしても、銅賞がひとつもないという結果だったが、それだけ底辺がそこ上げされてきた感じは非常にあった。今後益々楽しみな、九州、中学校の部である。

出水市立米ノ津中学校吹奏楽部 (指揮 : 福島玲士) 鹿児島県大会金賞
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲:スパルタクス(ヤン・ヴァンデルロースト)
国分市立国分中学校吹奏楽部 (指揮 : 内田 貢) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:
仮面幻想(大栗 裕
鹿児島市立城西中学校吹奏楽部 (指揮 : 坂下 修) 鹿児島県大会金賞
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲:ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(Z.コダーイ)
鹿児島市立天保山中学校吹奏楽部 (指揮 : 福崎順子) 鹿児島県大会金賞
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲:スナップショッツ
大崎町立大崎中学校吹奏楽部 (指揮 : 板坂英子) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:勝利の時
末吉町立末吉中学校吹奏楽部 (指揮 : 松田慶治郎) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:フニクリフニクラ狂詩曲
鹿児島市立南中学校吹奏楽部 (指揮 : 江口秀人) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲:ジャラン・ジャラン
宮之城町立宮之城中学校吹奏楽部 (指揮 : 紺屋弘志) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲:ケルト・ラプソディ
伊集院町立伊集院中学校吹奏楽部 (指揮 : 木原環美) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲:「GR」シンフォニックセレクション(天野正道)
串木野市立串木野西中学校吹奏楽部 (指揮 : 内田 恵) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲:舞楽
鹿児島市立谷山中学校吹奏楽部 (指揮 : 真茅孝洋) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲:「GR」シンフォニックセレクション(天野正道)
鹿児島市立星峯中学校吹奏楽部 (指揮 : 永野俊也) 鹿児島県大会金賞
課題曲 1: ウィナーズ─吹奏楽のための行進曲(諏訪雅彦)
自由曲:ピアノ四重奏曲第一番

銀賞受賞校/国分南中/皇徳寺中/坂元中/志布志中/和泊中/喜入中/高山中/川内中央中/金久中/清水中/日吉中/枕崎中/垂水中/武中/鴨池中/川内北中/鹿児島大学付属中/西紫原中/財部中/隼人中/野間中/伊敷台中/川辺中/大口中/紫原中/天城中/出水中/舞鶴中/小宿中/高尾野中/西陵中/東市来中/牧園中/郡山中/南種子中/知覧中/桜丘中/加世田中/開聞中/霧島中/第一鹿屋中/和田中/帖佐中/伊集院北中

知名町立知名中学校吹奏楽部 (指揮 : 木場智明) 
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲:エルザの大聖堂への行列(R.ワーグナー)課題曲は非常に人数が少ないので、聞く側もひやひやしたが、非常に暖かいサウンドのまとまりのある音楽だった。指揮の先生もテンポを維持するというよりは、指揮台をいっぱいに使って、生徒達に語りかけるように指揮していたのが印象的だった。日ごろの指導ぶりが伺えるというものだ。自由曲は簡単なようで難しい曲だが、冒頭のハーモニーの美しさは秀逸だった。人数が少ないながらも、こうして音楽を手作りで仕上げてくる姿勢に拍手を送りたい感じがした。それにしても非常に懐かしい曲をコンクールで聞かせてもらった。

銅賞受賞校/古仁屋中/熔城中/伊敷中/串木野中/鹿屋東中/串良中/金峰中/松山中/東串良中/阿久根中/北指宿中/祁答院中/名瀬中/吾平中/鹿屋中/別府中
中学校Bの部最優秀/別府中学校
中学校Bの部優秀賞/万世中/南指宿中
中学校Bの部優良賞/薩摩中/頴娃中/三笠中/鶴田中
中学校Bの部奨励賞/山川中/吉野東中
2003年7月24〜25日鹿児島市民文化ホール第一
鹿児島県立松陽高等学校吹奏楽部 (指揮 : 立石純也) 鹿児島県金賞代表/九州大会金賞
課題曲 1: ウィナーズ─吹奏楽のための行進曲(諏訪雅彦)
自由曲 :
スペイン狂詩曲(M. ラヴェル/森田一浩)課題曲の冒頭、不安定ながらも、さすがに全国大会出場での自信を付けている貫禄の演奏で、課題曲後半部分の矢のように飛び回るファンファーレ風のクライマックスの金管の響きは絶品。ジェリー・ゴールドスミスのサウンドトラックを聞いているかのような高揚感とここちよさだった。自由曲は、全国的にはコンクールのおなじみ曲だが、まだまだ鹿児島ではこの曲に挑戦する団体はあまりいない。ま、勝負に出た選曲と言っていいだろう。この曲をどこまで仕上げてくるか楽しみにしていたが、M.ラヴェルの情感を表現するまでには至らないものの、一糸乱れぬアンサンブルの名が非常に心地よかった。課題曲自由曲ともに、難しい曲を取り上げている分、ミスも目だったが、九州大会では完壁に音楽を演じてもらいたい。しかし、この段階でここまで仕上がっていれば、九州代表は射程距離にあると言っていいと思う。問題は、課題曲の完成度を九州大会までに、どこまで引き上げられるか・・・・だろう。さて、九州大会。課題曲での細かいミスは、九州大会ではしっかりと克服されていた。この辺はさすがである。しかし、この課題曲が持つ主題のひとつひとつはきっちりと表現されし尽くしていたが、ハーモニーの持続性、連携がいまひとつだったのが惜しまれる。マーチでありながらコラールの雰囲気をも持つこの課題曲は、完成させるのが非常に難しい。九州代表となった団体に、課題曲1を選んだところがひとつもないのでわかるように、この楽曲を完壁にアナリーゼし、表現するに至るのは非常に難しい。傷はあっても、県大会での演奏の方が個人的に好感が持てた。そして自由曲ではこのバンドの本領を発揮していた。適度なテンポ設定と、音楽的な絞まり、ラヴェルらしさというのには欠けるかも知れないが、非常に情感を持った音楽に仕上げてきた。ただ、課題曲でもそうだったが、ややパーカッションのffが強すぎる感があり、特にシンバルが管楽器のサウンドをときおり遮って、音楽の流れを止めてしまうのが、残念だった。九州大会クラスになるとこうした細かいサウンドのバランスも大きな痛手となる。ま、九州代表となってもおかしくはない演奏ではあったが、このバンドの実力からするともっとレベルの高い「音楽」に仕上がっても良かったような気もする。また来年に期待したい!!
鹿児島県立鶴丸高等学校吹奏楽部 (指揮 : 新穂雄二) 鹿児島県金賞代表/九州大会銀賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : 海の男達の歌(スミス)唯一、一日目の演奏団体から選ばれたのが、ここ。県外の人のために書いておくが、この学校は勉強では、鹿児島県の公立高校のトップに君臨する学校。吹奏楽でも、数多くの鹿児島県代表歴を誇っている。さて課題曲は思い切りやメリハリにはかけるものの、理想的なサウンドのブレンド感が心地よい。ただその分安全運転気味で、音楽的な面白みに欠けていたかも知れない。自由曲は、鹿児島でもおなじみの曲。この曲は効果音が多用されがちな曲だが、それを最低限に控えて、音楽そのもので勝負しているのが良かった。パーカッシンの演出も見事で、危なげなく代表権をゲットした。さて九州大会では午後のトップを飾った鶴丸高校。緞帳があがった瞬間、その配置を見てびっくり。それぞれの奏者の間隔が狭すぎて、見栄えもこぢんまりとしてしまっていたが、演奏が始まると、そのサウンドもこぢんまりとして、ステージ上でそれぞれのサウンドがブレンドされてしまうために、非常に不明瞭なサウンドになってしまっていた。演奏そのものは、着実に譜面を追っていたが、この配置ミスがすべてだったような気がする。県大会で非常に心地よい音楽を聞かせてもらっただけに非常に残念だった。
前田学園鹿屋中央高等学校吹奏楽部 (指揮 : 谷口修美) 鹿児島県金賞代表/九州大会銀賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : バトル・オブ・ブリテン(W.ウォルトン)非常にきらびやかで、つやのあるサウンドだが、場面場面ではそれがややもすると荒く、無神経なサウンドになってしまうのも事実。この辺のサウンドのブレンド感の演出がこれからの課題だと思われる。しかし、走者全員がのびのびと、かつ前向きに音楽している姿には心打たれるものがあった。さて自由曲は、非常にこのバンドの サウンドに合った選曲だったと言えるだろう。芯のしっかりしたサウンドを持つバンドならではの表現力で、この楽曲の持つメッセージを充分に発揮していた。惜しむらくは、自由曲でもやや荒さが目だった部分だろうか。さて、九州大会。課題曲がまずすばらしかった。その前に演奏した福岡の学校とも遜色のない、クリアで非常に技術のしっかりとした演奏を聞かせてくれた。課題曲に関しては県大会よりも、かなり前進していた感があった。そして自由曲。県大会とはカットを変えたのかな??県大会後に変えたのか、それとも以前からこのカットも試していたのかはわからないが、このカットを処うかしきれないまま九州大会に突入した感がしないでもなかった。オープニングからの緊張感は非常に良かったが、すぐにこの緊張の糸は切れてしまい、音楽的な持続感が失われてしまったのが残念。このバンドのサウンドなら、県大会のカットの方が良かった気がする・・・・。
神村学園高等部吹奏楽部 (指揮 : 久木田恵理子) 鹿児島県金賞代表/九州大会銀賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)

自由曲 :
ディオニソスの祭(F.シュミット)課題曲のテンポが異常に速く、マーチのカテゴリーを逸脱してしまっていた。しかし、そのテンポに果敢に付いていくプレイヤー達はお見事。指揮の先生が緊張していたのか、或いは、自由曲の都合で時間を気にしなければならなかったのか・・・・。自由曲は、コンクールでお馴染の曲だが、この曲を演奏しきるには、ややサウンドにエッジが足りないような気がする。金管の荒いサウンドを出すというよりは、しっかりと締まった、エッジの効いたサウンドが構築できれば、非常に完成度の高いディオニソスになったはずだが・・・・。しかし、そんな中でも自信たっぷりに音を紡いで行くひとりひとりの奏者手腕に、拍手を送りたいと思う。さて、九州大会。課題曲のテンポ設定は、県大会の時よりもやや落ち着いていたような感じだったが、いわゆる行進曲としての安定感はいまひとつ構築出来ないまま終わってしまった。マーチが苦手なのかな??そして自由曲は、課題曲とは裏腹に、県大会よりもかなり成長した音楽に仕上がっていた。ただ、この楽曲が持つ、地の底から沸き上がってくるような世界観までは演出出来なかった。去年も思ったのだが、このバンドのサウンドと選曲がいまひとつ合っていないのでは・・・・という気がするのも事実。技術力のあるバンドだけに、そこが非常に惜しい気がする。

九州大会〜8月23日(土)高等学校の部〜福岡サンパレス

福岡県代表  福岡工業大学附属城東高等学校吹奏楽部(指揮 : 屋比久勲)
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲 : トッカータとフーガ ニ短調(J.S.バッハ/ライゼン)

福岡県代表  精華女子高等学校吹奏楽部(指揮 : 藤重佳久)
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : ダンス・ムーブメント(P.スパーク)

福岡県代表  都築学園福岡第一高等学校吹奏楽部(指揮 : 清水万敬)
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : 楽劇「サロメ」より、7つのヴェールの踊り(R.シュトラウス/M.ハインズレー)

 以上が九州代表となった団体。ま、お馴染の顔ぶれと言っていいだろう。中でも、福岡工業大学附属城東高校の課題曲は圧巻だった。イントロのブラスセクションの一糸乱れぬサウンド、マーチとしての条件をすべてクリアした完璧なまでの表現力。そして随所に隠されている主題の素材、ひとつひとつをすべて表現し尽くした課題曲3に、初めて出会った。まさに課題曲のでだしで、代表を確信した演奏だった。自由曲は屋比久氏お得意のナンバー。彼の現役中にまたトッカータとフーガを聞けるなんて、非常に光栄である。思わず、1972年の西部大会を思い起こしてしまった。今回のバッハは、より、オルガンのサウンドを意識したもので、究極のトッカータとフーガとなった。いろんな意味で普門館で話題を集める演奏となるだろう。

 その他、精華女子高等学校福岡第一高等学校城南高等学校嘉穂高等学校、そして松陽高等学校までは、ほとんど横一線だと思われる名演が揃った。城東は別格として、この5校はどこが代表になってもおかしくなかったと思う。そんな中で選出された代表団体には、涙をのんだ団体の分まで全国大会で暴れてきてもらいたいものだ。その他の金賞団体の中で、大牟田高校は、九州大会では私は初めて聞く団体だったが、非常に卓越した技術とサウンドを持ったバンドで、これからの成長が非常に楽しみだ。今回のメンバーの中ではスネアドラムを叩いていた生徒が非常に音楽に乗って絶妙なサウンドで音楽を引っ張っていたのが印象的だった。また銀賞ながら、朝一の演奏で、非常にきらびやかな豊かなサウンドと音楽を聞かせてくれた長崎東高等学校は、懐かしい選曲で楽しませてくれた。また、玉名女子高等学校は会場での礼儀作法が非常にしっかりとしていて、好感が持てる。サウンドは非常にいいものを持っているが、音楽的な構築力がいまひとつで、いつも非常に勿体ないなと思う。また自由曲に比べると、課題曲への取り組みがいまひとつで、せっかくのサウンドと技術を持っているのだから、いまひとつの奮起を望みたい。それにしても、中学の部と同様、底辺が非常に底上げされてきた、非常にレベルの接近した、頼もしい大会だった。

鹿児島県立伊集院高等学校吹奏楽部 (指揮 : 下茂大二郎) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : エルフゲンの叫び(ジェフリー・ローレンス)昨年の代表校ということで期待していたが、課題曲の冒頭から、高音金管のサウンドに勢いがないのが気になった。しかし、この課題曲が持つイメージは充分に伝わる解釈と演奏で、オーディエンスの側の好感度は非常に高かっただろうと思われる。ただ、その分、サウンドそのもののダイナミックレンジが非常に狭くなっていたのも事実で、この辺りが今後の課題であろうと思われる。自由曲は、技術的にはそんなに高いわけではないが、サウンドの構築が非常に難しい作品だ。作曲者がこの曲に込めたメッセージを、どう表現し、どんなサウンドの七変化で、場面転換を演出するか・・・・という部分での追及が足りなかったように思われる。しかし、こういうマイルドながらも主張のあるサウンドは、鹿児島では唯一なものなので、これに重量感とダイナミックレンジの広さが加われば、非常に面白い存在になると思われる。
鹿児島県立出水高等学校吹奏楽部 (指揮 : 崎山展弘) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲 : 春の喜びに (J.スウェアリンジェン)
鹿児島県立加治木高等学校吹奏楽部 (指揮 : 佐藤 茜) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : ピータールー(M.アーノルド)女性指揮者らしい、非常に暖かいサウンド、という印象を受けた。課題曲はタイトルのメッセージを非常によく表現していたし、自由曲も、アーノルドの世界観を、よく研究していた。ただ、サウンドがやや不安定で、いい響きになる時と、こもってしまう時の差が激しい。サウンドの再構築と安定化が、急務となるだろう。
鹿児島県立川辺高等学校吹奏楽部 (指揮 : 福森利孝) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : ラ・ヴァルス(M. ラヴェル/)課題曲の表現力は、さすがに去年九州大会を経験しただけのものを持っていた。ただ、サウンドがやや乾燥しがちだったのが残念。しかし、テンポ感を含めて、よく安定していた。自由曲は、M.ラヴェルの持つ情感を表現するには至らず、楽譜を老いかけて終わってしまった感じだった。より踏み込んだアナリーゼが施されないと、こういう曲を演奏するのは、非常に難しい。
鹿児島学園加治木女子高等学校吹奏楽部 (指揮 : 福崎秀人) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : 喜歌劇「美しきエレーヌ」序曲(オッフェン バック)
鹿児島県立鹿屋高等学校吹奏楽部 (指揮 : 宮里康弘) 鹿児島県大会金賞
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲 : 元禄(櫛田てつ之扶)
鹿児島県立国分高等学校吹奏楽部 (指揮 : 木原洋子) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : 「トスカ」第三幕より(G.プッチーニ)
鹿児島県立甲南高等学校吹奏楽部 (指揮 : 今村裕紀) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : ヒーローズ、ロスト・アンド・フォールン(D.R.ギリングハム)かつては県代表の常連だったが、ここ最近は少々停滞気味なんだそうだ。課題曲も自由曲もそつなくこなしているし、技術的にも非常にレベルは高いんだけど、サウンドのバランスが非常に悪いのが、気になった。バランスが悪いと音楽的なメッセージは半分も伝わらないわけで、地道なひとつひとつの音の積み重ね、ブレンド、放出、によって、がらりと変わる要素を持っているバンドだと思う。
鹿児島県立武岡台高等学校吹奏楽部 (指揮 : 大川内國雄) 鹿児島県大会金賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 : ディオニソスの祭(F.シュミット)
鹿児島県立川内高等学校吹奏楽部 (指揮 : 兼元俊一) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲 : 元禄(櫛田てつ之扶)
鹿児島県立川内商工高等学校吹奏楽部 (指揮 : 有馬絵理香) 鹿児島県大会金賞
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲:
喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション(F.レハール/鈴木英史)
銀賞受賞校/甲陵高校/純心女子高校/岩川高校/加世田高校/錦江湾高校/鹿児島中央高校/樟南第二高校/種子島高校/野田女子高校/指宿商業高校/鹿児島東高校/樟南高校/鹿児島情報高校/国分中央高校/指宿高校/宮之城高校/鹿児島玉龍高校/鹿児島学芸高校/大口高校/出水商業高校/中種子高校/志布志高校/鹿児島実業高校/
銅賞受賞校/鹿児島西高校/大島北高校/屋久島高校/枕崎高校/徳之島高校/奄美高校/喜界高校/南種子高校/鹿児島工業高校/鹿児島南高校/沖永良部高校
2003年7月26日鹿児島市民文化ホール第一
鹿児島大学学友会吹奏楽団 (指揮 : 鮫嶋俊弥) 鹿児島県金賞代表/九州大会銀賞
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 :
ハイランド讃歌組曲より (フィリップ・スパーク)
2003年7月26日鹿児島市民文化ホール第一
J.S.B. 吹奏楽団 (指揮 : 東 久照) 鹿児島県金賞代表/九州大会金賞九州代表
課題曲 1: ウィナーズ─吹奏楽のための行進曲(諏訪雅彦)
自由曲 :
交響組曲「GR」より(天野正道)非常にサウンドに重量感がありながらも、細かいフレーズもあますところなく再現する技術力の高さは、伝統のものなのだろう。しかしその一方で、つまらないミスが多かったり、サウンドの立ち上がりが悪い箇所があったりと、隅々まできっちりと仕上げ切っていない部分が往々にして見受けられるのが非常に残念だし惜しい。コンクールは、プラス要素よりも、いかにマイナス要素を抑えるか、というのが重要なキーポイントとなって来るので、こうした細かいサウンドへの配慮が非常に大切なものとなって来る。しかし壮大な音楽観の表現力は、鹿児島では最高峰のものだろう。
宮之城吹奏楽団 (指揮 : 幸喜 隆) 鹿児島県金賞代表/九州大会金賞 
課題曲 4: マーチ「ベスト・フレンド」(松浦伸吾)
自由曲 :
放射と瞑想 Part2(天野正道)課題曲のマーチがやや重々しい感じがした。かつて全国大会で、課題曲のマーチを軽々と演じていた同団を聞いていただけに、少々拍子抜けしてしまったのも事実。自由曲では、本来の力を発揮していたが、演奏する側が、天野作品に少々慣れすぎているのでは・・・・・という印象を受けたのも事実。音楽的な生彩に欠けているのである。天野氏の作品は、非常に演奏に効果的なアレンジが施されているし、いい旋律を持った楽曲が多いとは思うが、演奏する側に音楽に対する新鮮度が失われてしまっているのではないか・・・・そんな事も感じてしまったわけだが、老婆心がある事を願いたい。
松陽高校OB吹奏楽団「緑」 (指揮 : 立石純也) 鹿児島県金賞代表/九州大会金賞 
課題曲 2: イギリス民謡による行進曲(高橋宏樹)
自由曲 :
マ・メール・ロワ(M. ラヴェル/)課題曲は少々重いというか、躍動感に欠けるマーチだった。もう少し前へ前へというマーチならではの音楽作りがあてもいいのでは・・・・。しかしそれは、このバンドがどちらかというと流麗なサウンドを信条にしているからなのかも知れない。そういう意味で、自由曲の選択はベストだった。全体的に盛り上がりに欠ける曲ではあるが、最初から最後まで漂い続けるハーモニーが終始崩れることなく紡がれていくのが、非常に心地よかった。もっともっとそのまま音の渦に巻き込まれていたい・・・・そんな感じだった。鹿児島にも、こうしたフランス物を情緒観豊かに再現するバンドが現れてきたのは非常に嬉しい。この艶のあるサウンドにさらに深みが加われば、もっともっと色彩感が増す事だろう。
九州大会〜9月7日(日)職場・一般の部〜熊本県立劇場
アンサンブル南星 (指揮 : 新山 崇) 鹿児島県大会金賞
課題曲 3: 行進曲「虹色の風」(松尾善雄)
自由曲 : 第三組曲(R. ジェイガー)
鹿児島で3強と言われていた上位3団体の一角に、ようやくメスを入れる団体が現れた。その点で、今回の金賞受賞は快挙と言える。課題曲ではややサウンドやアンサンブルの乱れやミスが目だったが、自由曲への集中度がすごかった。自由曲の選択も、このバンドのサウンドに非常にマッチしていたと思われる。鹿児島の吹奏楽一般の部の歴史が、確実に動き出した変わりだした金賞受賞、という事になるのだろう。自由曲終盤では、最高の感動をオーディエンスに与えたに違いない(音圧ではなく、音楽で、という意味で)。来年はさらに一歩も二歩も前に進んだサウンドと、選曲で、またまた聞く者をアッと言わせてもらいたい。
銀賞受賞団体/KBC吹奏楽団/鹿屋市民吹奏楽団/吹奏楽団尾立部屋
銅賞受賞団体/吹奏楽団G.E.M./創価学会鹿児島吹奏楽団