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奥田安弘=姜成賢「2022年の韓国国際私法(全訳)」
中央ロー・ジャーナル21巻3号(共訳、2024年)


以下は、訳者の一人である奥田の解題です。「はしがき」に書けなかった裏話を紹介します。

本稿は、奥田がいつもどおり新着の洋雑誌をチェックした際に、Yan Li, New Private International Law Act of the Republic of Korea 2022 – Focusing on the Rules on International Jurisdiction to Adjudicate, IPRax 2024, Heft 3, 252–256を見つけたことに端を発します。この雑誌は、2023年4月から後楽園に一部移転した比較法研究所に所蔵され、奥田は退職していたので、現役教員にお願いして、駿河台キャンパスに取り寄せてもらいました。これによって、韓国国際私法が2002年に全部改正され、とくに国際裁判管轄規定が充実し、100か条近い法律が制定されたことを知りました。

しかし、内容的には、国際裁判管轄規定もEUの立法にならったものであり、その他に若干の国際条約を取り入れていますが、家族法の準拠法規定は、旧法に若干手直しをしたにすぎず、新規性に乏しいと思いました。現に2022年の韓国国際私法の紹介や翻訳は、日英仏によるものが若干見当たる程度でした。そのため、『韓国国籍法の逐条解説』(明石書店、2014年)のように、立法理由を詳しく調べ、本や論文を出版するほどではないと判断し、条文の翻訳に留めることにしました。

姜弁護士には、原文の「直訳」に徹してもらいました。奥田は、それを日本の法律用語や英仏の翻訳と調整しながら、姜弁護士との膨大なメールの交換によって、最終的な訳文の確定にまでもっていきました。他の共著と同様に、単に名前を貸したのではなく、むしろ主体的に作業を行いました。リポジトリへの掲載は、2025年6月頃の予定でしたが、事務作業が若干遅れているようです。

なお、校了後に下記に接しましたが、時すでに遅く追記にも書けなかったので、ここに紹介しておきます。
青木清「2022年韓国国際私法改正:新旧対照表」南山法学48巻1号(2024年)

(追記)
2025年7月31日に、本稿がリポジトリに掲載されたので、リンクを貼りました。中央ロー事務課の中央ロー・ジャーナル担当者(本年2月退職)によれば、刊行から6か月後にリポジトリ掲載とのことでしたので、6月末掲載予定と書きましたが、7月28日に私が事務課にメールを送ったところ、後任の担当者がリポジトリの担当部署(研究支援室)に連絡をとってくださり、リポジトリ掲載に至りました。

我々寄稿者にとって、リポジトリへの掲載は、以下の必要があります。
①Googleなどによって、PDFの内容まで検索が可能となります。リポジトリ掲載前は、中央ローのサイトに著者名とタイトルが掲載されるだけの状態でした。
②私(および姜弁護士)は、半年後にリポジトリに掲載されることを前提として、紙媒体の抜き刷りを1部しか発注しておりません。知り合いの研究者や弁護士などには、メールでリポジトリ掲載を知らせるつもりでした。

それならば、「比較法研究所の比較法雑誌に掲載すればよい」と言われるかもしれません。たしかに、中央ロー・ジャーナル21巻3号と同じく昨年12月末に刊行された比較法雑誌58巻3号は、すでに5月中旬にリポジトリに掲載されています。しかし、今回のような中央ローの修了生との共著では、比較法雑誌への掲載資格がないと言われてしまいました。

現役教授=現役所員であった頃は、かなり自由に学外者との共著を比較法雑誌に掲載したり、研究所叢書のシリーズとして本を出版したりしていました。しかし、名誉所員とは、名ばかりであり、単著はともかく、共著は、投稿資格を厳しく制限されます。『欧米諸国から見た日本法』は、現役所員であるマーク・デルナウア教授との共編著であったからこそ出版できたのであって、かつての『国際私法・国籍法・家族法資料集』の続編として、今回の韓国国際私法を収録した本を出版できるのかと言えば、その可能性はゼロです。

退職するということは、たとえ名誉教授や名誉所員と言っても、研究成果の公表場所が制限されるということです。私のように様々な分野の人と共同研究をする者にとっては、今後は、中央ロー・ジャーナルのお世話になります。



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