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奥田安弘=高畑幸
「フィリピン法上の離婚禁止――法律学および社会学の視点からの考察」
中央ロー・ジャーナル22巻2号(2025年)


はじめに

Ⅰ 日本法上の離婚の特徴
Ⅱ フィリピン法上の離婚の歴史
Ⅲ 離婚の代替的手段
Ⅳ 離婚禁止の要因
Ⅴ フィリピンの婚姻関連統計
Ⅵ 離婚禁止を支える社会制度
Ⅶ 在日フィリピン人に対する影響
Ⅷ 離婚の合法化法案
おわりに


以下は、著者の一人である奥田の解題です。

本稿は、副題のとおり、奥田が法律学の視点から、高畑が社会学の視点から書いたものです。末尾の「追記」に書いたとおり、本稿は、奥田が読売新聞の安田信介記者から取材を受け、情報提供をしたことに端を発します。記事では、安田記者が現地で取材をした成果を書き、私が法律学の視点から情報提供をしましたが、本稿を書く際には、社会学およびフィリピンの地域研究の専門家の分析が必要であると考え、かつてJ・N・ノリエド『フィリピン家族法』を一緒に翻訳した高畑教授にお願いした次第です。

目次をみて分かるとおり、Ⅰ~Ⅳは法律学の視点からの分析、Ⅴ~Ⅷは社会学の視点からの分析となっています。ただし、後半の一部は、奥田も法律学の視点からの分析を書き加えています。またⅠ~Ⅳは、単なるフィリピン法の分析だけではありません。Ⅰは見出しから分かるとおり、「日本法上の離婚の特徴」を扱っていますが、特徴を書く以上は、他の諸国の法との比較が必要であり、それは、欧米諸国だけでなく、アジア諸国やイスラム諸国も含んでいます。したがって、本稿は、離婚法の全世界的な動向を探ったものといっても過言ではありません。

一見したところ、フィリピン法上の離婚禁止は、世界的に珍しい例だと思うかもしれませんが、歴史的にみれば、かつての欧米では、離婚禁止が当然とされ、むしろ明治時代の民法制定時から協議離婚さえ認めていた日本法のほうがよほど異端といえます。本稿がリポジトリに掲載されるのは、来年春頃になりますが、その成果を取り入れた『国際家族法〔第3版〕』は、同じ頃の出版になるかもしれません。



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