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法例改正要綱試案(親子の部)

昭和47年法制審議会国際私法部会


    一般的前提
一 立法形式の面においては、法例中の国際私法に関する規定を同法から分離して独立の法律とするものとし、その法律の題名は、一応「国際私法」とする。

二 渉外的な身分関係に関する事件の裁判管轄権及び外国裁判所の裁判の承認について規定を設ける場合、それらの規定は、右の法律に置くものとする。

三 属人法の決定基準として、国籍をとるか、住所をとるか、又はその他のものをとるかは、未決定である。

    第一 嫡出親子関係

一 子が嫡出であるか否かは、子の出生の当時における父母〔母とその夫〕の婚姻の効力を定める法律による。ただし、子の出生前に父母〔母とその夫〕の婚姻が解消したときは、婚姻が解消した当時における婚姻の効力を定める法律による。
 (別案) 子が嫡出であるか否かは、子の出生の当時における父〔母の夫〕の属人法による。
 ただし、子の出生前に父母〔母とその夫〕の婚姻が解消したときは、婚姻が解消した当時における父〔母の夫〕の属人法による。
二 準正は、その要件の完成当時における父母の婚姻の効力を定める法律による。
 (別案) 準正は、その要件の完成当時における父の属人法による。

三 嫡出親子間の法律関係は、子の属人法による。
 (別案) 嫡出親子間の法律関係は、父母の婚姻の効力を定める法律による。

四1 嫡出親子関係の存否に関する事件については、被告が常居所を有する国の裁判所が管轄権を有するものとする。
2 次に掲げる場合には、原告が常居所を有する国の裁判所も管轄権を有するものとする。
 (イ) 被告が〔その国から追放されたとき、〕行方不明であるとき、その他これに準ずる事由があるとき
 (ロ) 被告が応訴したとき
 (別案) 嫡出親子関係の存否に関する事件については、当事者のいずれか一方が常居所又は国籍を有する国の裁判所が管轄権を有するものとする。

五 嫡出親子関係の存否に関する外国裁判所の裁判の承認の要件は、次のとおりとする。
 (イ) 管轄権を有する国の裁判所のした裁判であること。
 (ロ) 敗訴の被告が公示送達によらないで訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達を受けたこと、又は応訴したこと。
 (ハ) 外国の裁判所の裁判がわが国の公序良俗に反しないこと。

    第二 非嫡出親子関係

六 出生による非嫡出親子関係の成立については、特別の規定を設けない。
 (注) 出生による非嫡出親子関係の成立は、扶養、相続その他の具体的法律関係に関連して問題となるものであるから、その具体的法律関係の準拠法(lex causae)によらせる趣旨である。
 (別案) 出生による非嫡出親子関係の成立は、子の出生当時における子の属人法 〔父若しくは母の属人法〕による。

七 認知の要件は、認知の当時における子の属人法による。
 (別案一) 認知の要件は、認知の当時における子の属人法又は父若しくは母の属人法による。
 (別案二) 認知の要件は、父又は母に関しては認知当時における父又は母の属人法により、子に関しては認知の当時における子の属人法による。

八 認知の方式は、認知の当時における子の属人法、父若しくは母の属人法又は行為地法による。
 (注) 胎児認知の場合に、七及び八の適用につき、その母の属人法を子の属人法とみなす規定を置くかどうかは、なお検討する。

九 認知による非嫡出親子間の法律関係は、子の属人法による。
 (注) 出生による非嫡出親子間の法律関係については、なお検討する。

十 非嫡出親子関係の存否に関する事件の管轄権及び外国裁判所の裁判の承認については、それぞれ四及び五に準ずる。

    第三 養親子関係

十一1 養子縁組の要件は、養親となる者の属人法による。ただし、養子となるために必要とされる同意及び公的機関の関与に関する要件は、その者の属人法による〔要件をも具備することを要する〕。
 2 養子縁組の方式は、養親となる者又は養子となる者の属人法又は行為地法による。
 3 養子縁組については、養親となる者又は養子となる者が常居所〔又は国籍〕を有する国の機関が管轄権を有する。
 4 3により管轄権を有する国の機関がした養子縁組は、わが国において承認される。
  〔ただし、わが国の国際私法の定める準拠法に従ってされたものであることを要する。〕
 (別案)
 1 養子縁組については、養親となる者又は養子となる者が常居所を有する国の機関が管轄権を有する。
 2 1により養子縁組がわが国の機関の管轄に属するときは、その要件は日本法による。
 ただし、養子となる者についての同意及び公的機関の関与に関する要件は、その者の属人法による〔要件をも具備することを要する〕。
 3 外国で適法に行われた養子縁組は、1に適合するときは、原則としてわが国において承認される。〔養子となる者についての同意及び公的機関の関与に関する要件は、その者の属人法に従ってされたものであることを要する。〕

十二 養子縁組についての管轄権がわが国に属する場合に、要件の準拠法たる外国法 において養子縁組が裁判所その他の機関の決定によって成立すべきものとされているときは、わが国の裁判所は、そのような裁判をすることができるものとする。
 (注) 十一において別案をとるときは、この問題は生じないであろう。

十三 養親子間の法律関係は、養子の属人法による。
 (別案) 養親子間の法律関係は、養親の属人法による。

十四 離縁の準拠法は、養子の属人法による。
 (別案一) 離縁の準拠法は、養親の属人法による。
 (別案二) 離縁の準拠法は、養親及び養子の属人法による。

十五 養子縁組の無効、取消し及び離縁に関する事件の管轄権及び外国裁判所の裁判の承認については、それぞれ四及び五に準ずる。


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