□ 安牟須比命、天手力男命の系譜─山祇族の遠祖神 T 来信内容(2021.09.06受け) ※趣旨は適宜、記載
HPに記載の「中臣氏族の遠祖と武甕槌神」及び、古代氏族の研究C『大伴氏』、古代氏族の研究D『中臣氏』を見て、説明がほしいと思います。
○安牟須比命についてですが、 「大伴氏」では、香都知命、天雷命が同人。実態は火神迦具土(火産霊神)。その子に天石門別命(天手力男命)とある。 「中臣氏」では、安国玉主命が同人。その子に鳴雷命(天雷命)その子に天手力男命。天児屋根命の母、興台魂命の妻として許登能麻遅媛命がおり、その父は安国玉主命となっている。 「中臣氏族の遠祖と武甕槌神」では、火神迦具土、火雷神(鳴雷神、霹靂神、高オカミ神)、九頭竜神(天手力男命)と続くとあり、別名が天石戸別安国玉主命、すなわち中臣氏系譜に見える「玉主命」に当たる。さらに、火神迦具土が中臣氏の始祖にかかげる津速魂命に当たるとある。 以上のことから見て、 ●火神迦具土=安牟須比命=香都知命=津速魂命ということか? ●天雷命は安牟須比命と同人なのか? その子に当たるのか? 天手力男命の父は安牟須比命なのか? 天雷命なのか? どちらになるかで一世代変わる。 ※「中臣氏族の遠祖と武甕槌神」では「血速魂命は市千魂命に通じる」とあるが、血速魂命=市千魂命なのか?市千魂命は血速魂命の子なのか? によっても世代が1つ変わる。 ●玉主命は安牟須比命なのか? 天手力男命なのか? 許登能麻遅媛命はどちらの娘にあたることになるか? どの順で考えが変遷したかわかりませんが、今現在のお考えでは,どの神が同神で異神なのか教えていただきたい。 (山中隆広様より) |
(樹堂からのお答え) お問い合わせの内容がかなり興味深いものと思われますので、久しぶりにここ応答欄にお答えを掲上いたします。
さて、お答えですが、 @総じて言えば、神代の系譜(神統譜)にはなかなか難しい問題があり、親子神とされたり、同神あるいは兄弟などの近親神とされたり、同族でも伝承をもつ氏にもよって、系譜(神統譜)に違いが見られます。
こうした「同神異名、異神同名」の問題について、私としても問題意識をもち続け、できるだけ適確に把握しようと努めてきましたが、新史料の出現によっては、当初の考えからいろいろ変遷することがあります。併せて言うと、神統譜には具体的な人が神名を帯びる場合と、「抽象神(自然神)」の場合があり、その中間的な性格の「準抽象神」も見えて、これらの「抽象神グループ」にあっては、親子神か同神かの判別がつきにくいものがかなりあります(具体的な人代では判別は不可欠ですが、神統譜については判別困難が避けられないこともあります)。 当HP「古樹紀之房間」や古代氏族シリーズの諸記事にも、そうした個所が往々に混同して出てくることがあり、その辺の整理や説明の不手際について、まずお詫びいたします。併せて、HPのほうは、適時適切な修補・訂正の作業に欠ける面もあり、この辺も同様です。 A山祇族系統の古代氏族諸氏には、A大伴・久米氏族グループ、紀国造族グループ、及び B中臣氏族グループとがあり、両者が具体的に何時、どのように分岐したのかは不明です。 両集団ともに、焼畑農業などを営んだ関係からか火神祭祀(信仰。火神迦具土の関係)や月星祭祀(北極星信仰からは天御中主神の祭祀につながる)があったのですが、後になって、A集団は前者祭祀の傾向が強くなり、B集団は前者祭祀の傾向が強くなったように思われます。 Bともあれ、山祇族の神統譜についての現段階のお答えを、次ぎに掲げる「神統譜案」で試みました。ご質問に対しての一応のお答えになるかと思われます。 (2021.09.20 掲上)
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