「新諸国物語」の思い出
いま六、七〇歳代の人々なら、子供の頃、NHKの夕方のラジオドラマであった一連の「新諸国物語」の記憶を懐かしがる方も多いと思われます。
台本作者はすべて北村寿夫で、1952年4月に始まった「白鳥の騎士」という物語を皮切りにして、以降、「笛吹童子」「紅孔雀」「オテナの塔」「七つの誓い」の5作品が第1期ですが、この後2年のブランクを経て、「天の鶯」「黄金孔雀城」(1960年)まで続きます。私といえば、最初と最後の物語が記憶が殆どなく、中ほどの五作品を熱中して聞いた思い出があります。まだテレビが普及する前の時代です。
今となってはストーリーをかなり覚えているのは、「紅孔雀」くらいです(それも中村錦之助主演で映画化された影響が大きいか)。ところが、北村寿夫作詞・福田蘭童作曲コンビの主題歌のほうは、「ヒャラリヒャラリコ ヒャリコシャラレロ 誰が吹くのか不思議な笛は」で始まる「笛吹童子」のほうは鮮明で、次の「紅孔雀」となると、「まだ見ぬ国に住むという 赤き翼の孔雀鳥 秘めし願いを聞くという 秘めし宝を知るという」という一番をまるまる覚えています。風小僧の歌というのもありました。(いま、往時の主題歌はyou tubeで聴くことができます)
いま考えると、作者の北村寿夫さんは、物語のテーマや素材をどうして白鳥などの鳥類に拘ったのでしょうか。第二作の「笛吹童子」にさえ、白鳥城が出てきます。「白鳥の騎士」に出てくる白鳥の玉も併せ考えると、ますます天孫族の色彩が濃厚になり、たいへん不思議な感がします。
|