この上の図は、IBM社のホームページビルダーの素材から採りましたが、なかなか面白いものだと思われます。
 「」は系図(family tree、genealogy)を意味しますし、「」は鍛冶屋のシンボルであり、わが国上古代の支配階級を形成した「天孫族」のトーテムでもありました。ちなみに、天孫族とは、東北アジアから朝鮮半島を経て弥生時代中期頃に渡来してきた東夷の一種族であり、日本列島ではおおいに繁衍して、天皇家や息長氏族、物部氏族、出雲氏族、三上氏族など古代支配階級としての主要な氏族を出しています。製鉄・繊維などの多くの工業部門に優れた能力を発揮してきました。


 

   「新諸国物語」の思い出

  いま五、六〇歳代の人々なら、子供の頃、NHKの夕方のラジオドラマであった一連の「新諸国物語」の記憶を懐かしがる方も多いと思われます。
 台本作者はすべて北村寿夫で、1952年4月に始まった「白鳥の騎士」という物語を皮切りにして、以降、「笛吹童子」「紅孔雀」「オテナの塔」「七つの誓い」の5作品が第1期ですが、この後2年のブランクを経て、「天の鶯」「黄金孔雀城」(1960年)まで続きます。私といえば、最初と最後の物語が記憶が殆どなく、中の五作品を熱中して聞いた思い出があります。まだテレビが普及する前の時代です。

 今となってはストーリーをかなり覚えているのは、「紅孔雀」くらいです(それも中村錦之助主演で映画化された影響が大きいか)。ところが、北村寿夫作詞・福田蘭童作曲コンビの主題歌のほうは、「ヒャラリヒャラリコ ヒャリコシャラレロ 誰が吹くのか不思議な笛は」で始まる「笛吹童子」のほうは鮮明で、次の「紅孔雀」となると、「まだ見ぬ国に住むという 赤き翼の孔雀鳥 秘めし願いを聞くという 秘めし宝を知るという」という一番をまるまる覚えています。風小僧の歌というのもありました。いま、往時の主題歌はyou tubeで聴くことができます
  いま考えると、作者の北村寿夫さんは、物語のテーマや素材をどうして白鳥などの鳥類に拘ったのでしょうか。第二作の「笛吹童子」にさえ、白鳥城が出てきます。「白鳥の騎士」に出てくる白鳥の玉も併せ考えると、ますます天孫族の色彩が濃厚になり、不思議な感がします。



  天孫族系統と鳥との関係については、次の記事を見てください。

   鳥二題
         鷺の王   越の白鳥伝承と鳥追う人々          
     


   北森鴻氏の推理小説
    

  現代の推理小説作家に北森鴻きたもり・こう)氏がおられる。「北の森の大きな白鳥」というペンネームをもつこの作家は、'95年『狂乱廿四考』が第6回鮎川哲也賞を受賞して世に出、以降かなり多くの作品を発表してきて中堅としての地歩を固め、連作短編の名手という定評を得つつある。駒沢大学歴史学科卒業という経歴もあってか、骨董品や江戸末期〜明治期、民俗学の題材をもとにした小説も多い。

  昨年秋('01/10)刊行された『孔雀狂想曲』もそうした流れを汲むもので、『小説すばる』に二年余にわたり掲載された同名の「孔雀狂想曲」など8編の連作からなり、若き骨董店主・越名(コシナで古品に通じる)を主人公にする物語である。うち数編はどこかで読んだようなぼんやりした記憶のあるものであったが、ときどきは推理小説を読むのも悪くないなぁと思わせる、読み応えのある好品であった。この「孔雀」は鉱物の孔雀石のことなのだが、主人公の名・越名からは、併せて「越の白鳥伝承」を想起させる。
  『カドカワ・ミステリ』に連載中の「双蝶闇草子」のヒロインの名が早峯水鳥と、また鳥が登場する。倭建命の白鳥陵に私が擬している古市古墳群の津堂城山古墳には、前方部東側の内堀中に巨大な水鳥形埴輪三体を配した方墳状の特殊な施設が知られる、という事情もある。代表作の1つ、『花の下にて春死なむ』でも、連作の結節点の位置に料理店「香菜里屋」(カナリヤ)の主人がいる。
  この辺の見方は穿ちすぎかもしれないが、北森氏がなぜ、鳥に対する思い入れがあるのか不明である。

  ちなみに、その出世作『狂乱廿四考』も「双蝶闇草子」も、明治の画家河鍋暁斎(訓みはキョウサイで、狂斎とも書く)の幽霊画をもとに話しが展開するが、暁斎の作品も多く収蔵する世田谷の静嘉堂文庫には、同時代の系図研究家鈴木真年翁の関係資料も多く所蔵されている。その関係で、かって随分通いつめたものである。ここまで考えれば、巡り合わせだと考えすぎだろうか。                   
  (02.1.28記)

  2002年6月刊行の『狐闇』では、三角縁神獣鏡と仁徳天皇陵発掘まで取り上げられています。
  (02.7記)

  2005年8月刊行の『写楽・考−蓮丈那智フィールドファイルV』でも、日本神話や祭祀がうまく取り上げられるが、なかでも「湖底祀(みなそこのまつり)」では、鳥居と鳥などがとりあげられ、京都の木島神社の三本柱の鳥居(三柱鳥居)も出てくる。
  (05.10記)

  ご逝去の報道:ミステリー作家の北森鴻氏(きたもり・こう=本名:新道研治=しんどう・けんじ)が2010年1月25日午前3時、心不全のため山口市内の病院で死去した。48歳だった。山口県出身。

  心から哀悼の念をあらわします。
  (10.1.26記)                       

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